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F1 ニュース

投稿日: 2022.07.08 19:01
更新日: 2022.07.11 16:23

F1第11戦木曜会見:「一番の問題はクルマの中で熱くなること」同士討ちを喫した角田、新たなスポーツ心理療法士とタッグ

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F1 | F1第11戦木曜会見:「一番の問題はクルマの中で熱くなること」同士討ちを喫した角田、新たなスポーツ心理療法士とタッグ

 今季これまでドライバーズ会見は、グランプリ週末の金曜日に行われていた。メディア対応を含めた週末のプログラムを金曜からの3日間に凝縮して、ドライバーたちの負担が減らすというのが、当初の意図だったからだ。しかし前戦イギリスGPから、木曜日に前倒しされることになった。

 実際にはドライバーたちは木曜からサーキットに来て、ミーティングや単独インタビューやプロモーション活動など、山ほどの行事をこなす必要があった。定例会見を金曜日に移す恩恵は、ほとんどなかったということだ。

 しかも今年からの金曜会見は20人全員の出席が義務付けられ、終了後は待ち構えているTV局の囲み取材で同じ質問に延々と答え続けなければならない。そのため会見が木曜日に戻っただけでなく、出席者も5人ずつ2グループの10人、残りの10人は会見場の外で囲み取材のみを受けるという形式に変更された。

 会見第1部には、ダニエル・リカルド(マクラーレン)、ジョージ・ラッセル(メルセデス)ら5人が出席。リカルドはマクラーレン2年目の今季も、浮上のきっかけを掴めずにいる。イギリスGPも予選14番手、レースも13位完走と、まったくいいところがなかった。

 その理由を問われたリカルドは、「正直言って、まだその真相を探っているところだ」と、本人も五里霧中の状態。そのコメントを聴く限り、症状はかなり深刻なようだ。

リカルド:かなり暗いレースだった。とても、とても、とても遅くて、ずっとペースが上がらなかった。簡単にいえば、あの週末はグリップ不足だった。周りのクルマと同じグリップが得られているとは、とても思えなかった。1周の間に、それが何度も繰り返された。あるコーナーだけが悪くて、他のコーナーは大丈夫というんじゃなくて、どこもかしこもグリップが不足している感じだったんだ。不可解なレースだったよ

ダニエル・リカルド(マクラーレン)
2022年F1第11戦オーストリアGP木曜会見 ダニエル・リカルド(マクラーレン)

 一方のラッセルは、メルセデスマシンのアップデートに手応えを感じながらも、悔しいリタイアとなった。周冠宇(アルファロメオ)の大クラッシュ直後にコクピットから降りて駆けつけたために、レース復帰を許されなかったのだ。

Q:赤旗中断後の再スタートができなかった点で、トト・ウォルフ代表やチームと話し合ったと思います。彼らはあなたが飛び降りた理由を、理解していたのでしょうか?
ラッセル:もちろんだよ。ごく自然な反応だった。あんな恐ろしい出来事を目の当たりにしたんだからね。そしてあの時は、僕のマシンも終わりだと思ってた。でも結果的には、ただのパンクだった。だから余計に、悔しさがこみ上げてきたよ。もう一度やり直せば、きっといい結果を残せたはずだからね。

Q:車から降りたときの、心境を話してください。具体的に、何を見たのでしょう?
ラッセル:周が車から出られずに閉じ込められているのを見たとき、ある種の恐怖を覚えたよ。ドライバーなら誰でも、閉所恐怖症とは言わないまでも、自分のヘルメットの周りがヘイローやヘッドレストで囲まれ、頭の上にタイヤの壁があって出口をふさがれ、逆さまにぶら下がった状況には恐怖を感じるに違いない。そしてあれを見て、状況改善の必要性も感じた。バリアとキャッチフェンスの間に隙間があって、彼は明らかにそこに捕らわれていたからね。あれは早急に、解決すべき問題だよ

ジョージ・ラッセル(メルセデス)
2022年F1第10戦イギリスGP 周冠宇(アルファロメオ)との接触後、マシンを降りたジョージ・ラッセル(メルセデス)は大クラッシュを喫した周のもとに駆け寄った

 第二部に出席した角田裕毅(アルファタウリ)には、いつも以上に多くの質問が飛んだ。ほとんどがピエール・ガスリーとの同士討ちに関するものだったが、受け応える角田の表情は明らかに暗かった。

Q:チームメイト同士の接触は、特にポイントが目前に迫っているときには、決して理想的なことではありません。レース後のブリーフィングでは、どんな話し合いが?
角田:接触は、完全に僕のミスでした。チームには、すぐに謝りましたよ。特にピエールには。もちろんチームはがっかりしていました。シルバーストーンは難しいレースになると予想していて、それでもふたりがポイント圏内を走っている最中でしたからね。それに加えて、僕のデブリがマックスのクルマに入ってしまった。つまり僕にとっては、本当に悪い1日でした

2022年F1第10戦イギリスGP ピエール・ガスリーと角田裕毅(アルファタウリ)
2022年F1第10戦イギリスGP ピエール・ガスリーと角田裕毅(アルファタウリ)

 角田の様子が、よほど意気消沈しているように見えたのだろう。隣のエステバン・オコン(アルピーヌ)が肩をポンとたたきながら、「We love you, all(僕らはみんな、君が大好きだよ)」と、笑顔で励ました。

Q:ヘルムート・マルコによれば、あなたとアルファタウリのために新たにスポーツ心理療法士を雇い、彼が言うところのあなたの気性の激しさをマシンのなかでコントロールできる措置を取ったと言っています。あなたにとっても、歓迎すべきことですか?
角田:そうだね。心理療法士とは、すでにF2で一緒に仕事をしてきました。彼の存在は、僕がF1にステップアップできた理由のひとつと言ってもいいくらいで、F2で安定した結果を出すことに、大きく貢献してくれました。新しい心理療法士とは、実は4戦前から一緒にやっています。まだ僕のことを十分わかってもらっていないし、進むべき方向を理解し合う必要があります

 とはいえ僕の一番の問題は、依然としてクルマのなかで熱くなってしまうことです。少しはマシになったとはいえ、もっと改善しなければと思ってます。だから、新しいトレーナーがうまく機能してくれて、今後に向けていい仕事ができることを期待しています

 すると端に座っていたフェルスタッペンも、角田への援護射撃のような発言をしてくれた。

フェルスタッペン:僕は特に心理学者と組んではいないけれど、もっとうまくやれることはないかといつも振り返っているよ。僕自身、無線で怒ることはよくある。それが自分のパフォーマンスに影響するとは、思っていないけどね。何より、自分自身が周囲の状況に腹を立てなくなる日が来たら、もうこのスポーツではやっていけないと思う。自分の結果を気にして、どんなパフォーマンスを発揮できるか気にしているからこそ、いろんなことに腹を立てるわけだから。もちろん週末を通しての仕事の進め方は、できる限り冷静でいるように心がけているけどね

 新たにスポーツ心理療法士と組むことで、角田の走りにどんな変化が現れるか。大いに期待し、注目したいところだ。

2022年F1第11戦オーストリアGP 木曜会見
2022年F1第11戦オーストリアGP木曜会見 左からマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、ケビン・マグヌッセン(ハース)、エステバン・オコン(アルピーヌ)、角田裕毅(アルファタウリ)、カルロス・サインツ(フェラーリ)

※内容に一部誤りがありましたので、訂正いたしました。


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