長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、全20人のドライバーのグランプリウイークエンドの戦いを詳細にチェック、独自の視点でそれぞれを10段階で評価する。今回はイタリアGPでの戦いぶりを振り返る。
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■評価 10/10:準備不足の状態で完璧なパフォーマンスを発揮したデ・フリース
ニック・デ・フリース(ウイリアムズ):予選13番手/決勝9位
ルーキーのニック・デ・フリース(ウイリアムズ)が話題をさらった週末だった。イタリアでアレクサンダー・アルボンの病欠により思わぬチャンスが訪れ、夢のようなデビューを飾ったデ・フリース。5月のスペインGPにおいてウイリアムズからFP1走行を経験した後、フランスではメルセデスから、イタリアではアストンマーティンからFP1に参加した。とはいえ、ウイリアムズに関する最新情報は知らず、ピレリC4タイヤでの経験もなく、もちろんF1レースで走ったこともない。そんな彼がFP3で36分走っただけで、予選に臨まなければならなかった。さらにチームは、アルボンよりかなり小柄で体重は18kg軽いデ・フリースにマシンを合わせる必要があった。これほど不利な状況でありながら、デ・フリースは予選でチームメイトに勝ってQ2に進出、決勝でも非常に堅実なパフォーマンスを見せたのだ。長時間にわたって周冠宇を抑えきるために、一切ミスは許されなかったが、同時にすぐ前を走るピエール・ガスリーにプレッシャーをかけ続けた。彼のパフォーマンスにおいて欠点を見つけることは不可能だ。
■評価 9/10:堅実な走りで後方からフェラーリに勝ったフェルスタッペン
マックス・フェルスタッペン(レッドブル):予選2番手/決勝1位
シャルル・ルクレール(フェラーリ):予選1番手/決勝2位
カルロス・サインツ(フェラーリ):予選3番手/決勝4位
ルイス・ハミルトン(メルセデス):予選5番手/決勝5位
マックス・フェルスタッペン(レッドブル)は堅実な週末を送り、勝利をつかんだ。完璧な週末だったわけではなく、予選ではシャルル・ルクレールに敗れ、ペナルティにより7番グリッドからスタートした後、対ルクレールで考えると、圧倒的なパフォーマンスを見せつけたわけでもなかった。だが、堅実に走り、タイヤを守り、スクーデリアの戦略的ギャンブルを成功させることなく優勝、タイトル争いにおけるリードをさらに拡大した。
シャルル・ルクレール(フェラーリ)は週末を通してすべて正しい仕事をした。ポールポジションを獲得し、スタートでジョージ・ラッセルを抑え、序盤にタイヤ交換で呼ばれるまでフェルスタッペンの前を走っていた。フェルスタッペンよりピットストップを1回多い戦略で走らざるを得ず、その分の後れを埋め合わせるだけのペースはなく、トラフィックにも悩まされた。
カルロス・サインツ(フェラーリ)はパワーユニット交換によるペナルティでグリッド後方からスタートすることが決まっていたため、タイヤを長持ちさせられるようなレースセットアップを探ることに集中した。そのマシンでポールポジション争いに加われたのだから、予選での彼がどれだけ優れていたかが分かる。
1周目にアクシデントを避けて慎重に走った後に追い上げを開始、13周目には4番手に上がっていた。ラッセルとのギャップを縮めつつ、タイヤをセーブして、ピットストップを30周目まで遅らせた。第2スティントを7番手からスタート、わずか6周で4番手に戻ると、予定どおりラッセルをつかまえにかかったが、セーフティカー・ピリオドが長引いたため、3位をつかむことはできなかった。
ルイス・ハミルトン(メルセデス)も、パワーユニット交換のために後方スタートが最初から決まっていた。だが彼も、決勝用セットアップのマシンで、予選でチームメイトに勝っている。スタート時、事故を避けるために慎重になったハミルトンは、最後尾まで落ち、最初の7周は思うようなポジションアップができずにいたが、タイヤがスイートスポットに入るとペースが向上、31周目には5番手に上がり、ソフトタイヤへの交換後は、12番手から4周で6番手に浮上し、ペレスのピットストップによって5位を手に入れた。