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F1 ニュース

投稿日: 2022.10.06 00:20
更新日: 2022.10.06 06:32

【中野信治のF1分析/第17戦&日本GP展望】際立ったペレスの走り。鈴鹿F1凱旋の角田裕毅へのたったひとつの願い

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F1 | 【中野信治のF1分析/第17戦&日本GP展望】際立ったペレスの走り。鈴鹿F1凱旋の角田裕毅へのたったひとつの願い

2022年シーズンのF1は新規定によるマシンの導入で勢力図もレース展開も昨年から大きく変更。その世界最高峰のトップバトルの詳細、そして日本期待の角田裕毅の2年目の活躍を元F1ドライバーでホンダの若手育成を担当する中野信治氏が独自の視点で振り返ります。今回は第17戦シンガポールGPの雨の市街地戦を振り返りつつ、いよいよ3年ぶりの開催となるF1日本GPについて、中野さんが注目している3つの見どころについてお伝えします。

  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 F1第17戦シンガポールGPは予選、決勝ともに雨上がりのすごく難しいコンディションになりました。最後まで行き残ることが大変なくらいの難しい状況だったと思います。その状況下で、今回は本当に光っていたのがセルジオ・ペレス(レッドブル)でしたよね。

 チーム代表のクリスチャン・ホーナーがペレスのベストレースと言っていましたが、私もこれまで見ていたペレスのレースで一番のレース展開だったと思いますね。集中力が最後まで高く、ゾーンに入っていました。

 もともとタイヤにやさしいドライビングをするのがペレスのウリですが、今回のレースではその良さが出ましたし、今回のレッドブルのマシンがタイヤのデグラデーション(性能劣化)という部分に関しては、やはりタイヤにやさしいのかなと。

 フェラーリとレッブルのデグラデーションに関しては今シーズン、ずっと注目されて来ましたけど、今回は雨でその部分がマスクされて(影響を与えることがなく)しまったのですけど、結局最後、蓋を開けてみてドライタイヤが使える場面になったら、ペレスを追い上げていたシャルル・ルクレール(フェラーリ)のペースが最後の最後に落ちてしまったのは、やはりタイヤのデグラデーションの影響なのかなと思いますね。

2022年F1第17戦シンガポールGP セルジオ・ペレス(レッドブル)とシャルル・ルクレール(フェラーリ)
2022年F1第17戦シンガポールGP セルジオ・ペレス(レッドブル)とシャルル・ルクレール(フェラーリ)

 もちろん、ペレスのタイヤの使い方のうまさ、ゾーンに入って乗れている素晴らしい走り、それプラス、クルマのポテンシャルの部分でも今回はレッドブルが若干、フェラーリを上回っていたかな、と見受けられましたよね。

 今回のシンガポールGPがいつものレース以上に難しくなったのは、雨からドライに乾いていく過程で、路面温度が高い割には乾くのが遅くかったことが挙げられます。サーキットとは違って市街地ということもあって、アスファルトが異なる場所もあったので区間によって乾きやすい区間/乾きにくい区間がサーキットの時よりも分かれていましたよね。さらにナイトレースということもあり、フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)も無線で言っていましたが、乾いている路面と乾いていない路面の区別が分かりづらいこともレースを難しくしました。

 そういうコンディションのなかでペースを上げながら、ミスなく、マシンをコントロールしていくということが、いかに難しいことか。今回、多くのドライバーがミスを犯していたことからも分かったと思います。

 シンガポールGP明けの火曜日、日本に帰国した(角田)裕毅(アルファタウリ)ともDAZNの番組収録のときに話をしたのですけど、やはり、「路面の変化状況が非常に分かりづらかった」と。自分自身のミス(ピットアウト後のアウトラップでクラッシュ)についても「路面が乾いているのか乾いていないのか分からなかった」と話していましたね。

 やはり、今年のF1はタイヤウォーマーの温度設定が下げられて、裕毅がピットアウトしたときは路面がちょっと濡れている状態でドライタイヤに変えたわけですが、もう、タイヤもウォームアップしないし、メチャクチャ難しい状況なわけです。

 そういう意味では今回、ピットタイミングも非常に重要なポイントになりましたし、結構、早めにチャレンジしてドライタイヤに変えたドライバーはことごとく失敗していました。今回は早めにインターミディエイトからドライに変えるアドバンテージとか、フルコースイエローのアドバンテージを狙ってのピットストップが、路面がまだ濡れている状態ではアウトラップでタイヤを温めるのに時間が掛かることになり、結局、プラスのアドバンテージになるものがプラスにならないという状況になっていましたよね。

 そのあたりのチーム、ドライバーの読みだったり、予選の時も含めてセクタータイムを見てストラテジストも細かい計算をしていたと思うのですけど、その計算とドライバーの感覚でピットタイミングを決めていたと思いますが、結局、レースで一番いいタイミングでピットに入っていたのはレッドブルだったのかなと思いますね。

 一方、このシンガポールでチャンピオン獲得の可能性があったマックス・フェルスタッペン(レッドブル)ですが、予選Q3の最後のアタック、セクター1、セクター2と全体ベストタイムをマークしながら、セクター3でまさかの燃料不足という理由でアタックを止めました。ちょっと……正直、不思議でしたね。

 レースでもスタートでアンチストールに入って全然加速しなくてスタートでミスをしてしまい、それを取り戻そうとオープニングラップで躍起になって順位を上げようとしていたところ、危なく接触しかけてネガティブな方向になってしまいました。いつもなら簡単に追い上げている状況ですが、市街地サーキットの特性や路面が濡れていたこともあってオーバーテイクが非常に難しいので、ミスをしやすい要因はそろっていましたよね。

 一時5番手に上がったときも、セーフティカー明けのレース再開時にランド・ノリス(マクラーレン)をオーバーテイク仕掛けて、タイヤが明らかに冷えている状況でロックさせてしまい、順位を大きく下げてしまいました。フェルスタッペンでもミスをするんだなという部分と、セーフティカー明けはオーバーテイクのチャンスでもあって、追い上げていくにはミスもしやすいというバックヤードの条件も揃っていたので、ある意味、仕方ないところはあるなと私は見ていました。

●いよいよF1日本GP。中野信治さんが鈴鹿で楽しみにしている3つのポイント


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