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F1 ニュース

投稿日: 2022.10.27 07:00
更新日: 2022.10.26 18:55

【浅木泰昭HRC四輪開発部長インタビュー後編】HRCの存在意義はレースでの研究「レース屋だからこそ社会に貢献できることもある」

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F1 | 【浅木泰昭HRC四輪開発部長インタビュー後編】HRCの存在意義はレースでの研究「レース屋だからこそ社会に貢献できることもある」

 量産部門ではEV(電気自動車)へと大きく舵を切ったホンダだが、そんな状況だからこそ「内燃機関屋としてまだまだやることはある」、そして「レース屋だからこそ社会に貢献できることもある」と、HRC(ホンダ・レーシング・コーポレーション)四輪レース開発部部長の浅木泰昭は力説する。

 果たしてその流れで、パワーユニット規約の大きく変わる2026年以降に、ホンダのF1への復帰も選択肢としてあり得るのだろうか。多くの要因が絡んでくるだけに、もちろん予測は不可能だ。しかしHRCの四輪開発部門は、どんな状況になっても対応できるだけの準備をしている。浅木の言葉からは、そんな自負が感じられた。

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──2025年までのレッドブル・パワートレインズとのパートナーシップ協力延長は、実際にはかなり早い段階で決まっていたのではないですか?

浅木泰昭HRC四輪開発部長(以下、浅木部長):おそらくですけど、2021年の結果を受けて変わったのではないかと思います。それまではどんなに頑張っても、年に数戦勝つかどうかでした。そんなときの活動終了発表でした。そこで新骨格のパワーユニット投入を決断し、八郷さん(当時の八郷隆弘社長)が許可してくれました。本当にワンチャンスでした。そのワンチャンスを活かし、1年の猶予のなかでドライバーズタイトルを獲得できました。HRD Sakuraの技術者たちの努力が、みんなの気持ちを変えたのだと思います。

──ICE(内燃機関エンジン)の話に戻りますが、高速燃焼技術も開発が相当進んだということで、そろそろ限界に行き着いたのではありませんか?

浅木部長:いえ、まだまだです。例えば2026年以降のF1は100%、カーボンニュートラル燃料になりますが、それに合わせたエンジン、燃焼というのは非常に難易度が高いです。困難な課題ではありますが、F1に限らず、二輪のレースにしても国内レースにしても、カーボンニュートラル方向に行かないと生き延びていけません。

 一方で量産の方はEV(電気自動車)に行くと言っています。しかし、本当に将来のクルマがすべてEVになるかといえば難しい部分もあると考えています。そのあたりも踏まえ、内燃機関屋としてまだまだやることはあると思っています。そう考えたとき、EV研究に全面的にシフトすると言っている量産の研究所ではなく、レースを行っているHRCで研究を続ける方が合理的かもしれません。それがHRCの存在意義だと、私はそのように思っています。ただレースをやるだけではなく、レース屋だからこそ社会に貢献できることもあります。

2022年F1第19戦アメリカGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
2022年F1第19戦アメリカGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
2022年F1第19戦アメリカGP セルジオ・ペレス(レッドブル)
2022年F1第19戦アメリカGP セルジオ・ペレス(レッドブル)

──内燃機関は将来的にもなくならないのでしょうか?

浅木部長:いろいろな考え方があると思います。なにしろ10年先は読めない時代です。そんな時代ですので、生き残る可能性も踏まえて研究を続けないとまずいと思っています。そして、サーキットは実証実験の場になりますので、レース会社がその研究を行うことは妥当ではないかなと思います。

──実際に国内レース界ではその動きが加速しています。

浅木部長:そうですね。そのなかでホンダはカーボンニュートラルの先行技術があるわけです。2021年にはすでにカーボンニュートラル由来のものをF1に投入していました。技術的には相当準備が必要だったのですが、その蓄積から、化石燃料とまったく見劣りしないパワーを出せるエンジンが開発できています。あの時点でそういったことをやっていたのは、おそらくホンダだけだったかもしれません。二輪でも国内レースでも、いずれ必要になるという思いでした。

──先の状況は読めないということでしたが、実際、ホンダがF1活動終了を発表した2年前の世の中は電動一辺倒でした。ホンダもそちらに大きく舵を切りました。今の状況はいかがなのでしょうか?

浅木部長:いえ、今でも本田技研工業はその方向です。ですが、元エンジン研究者の私としてはそれ以外も続けたほうがいいと、そう思っただけです。

──最終的には電気一色になるのか、実際にはどうなのでしょうか?

浅木部長:カーボンニュートラル燃料にも難しい問題は数多くあります。大量生産や価格の問題などです。一方でEVにもいろいろな問題があります。ですので、どこにどのような革新的な技術が出てくるかで10年後は変わってくると思います。その部分は読めません。

2022年F1第19戦アメリカGP ピエール・ガスリー(アルファタウリ)
2022年F1第19戦アメリカGP ピエール・ガスリー(アルファタウリ)
2022年F1第19戦アメリカGP 角田裕毅(アルファタウリ)
2022年F1第19戦アメリカGP 角田裕毅(アルファタウリ)
2022年F1第18戦日本GP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)のタイトル獲得を喜ぶ吉野誠チーフメカニックと浅木泰昭HRC四輪開発部長
2022年F1第18戦日本GP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)のタイトル獲得を喜ぶ吉野誠チーフメカニックと浅木泰昭HRC四輪開発部長


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