2023年F1第2戦サウジアラビアGPはセルジオ・ペレスがポール・トゥ・ウインを果たし、前戦に続きレッドブルがワンツー。さらに3位にはフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)が入り、表彰台には開幕戦と同じメンバーが顔を連ねました。日本期待の角田裕毅(アルファタウリ)、そしてF1直下のFIA F2で今季初勝利を飾った岩佐歩夢(ダムス)の戦いの模様とともに、元F1ドライバーでホンダの若手育成を担当する中野信治氏が独自の視点でレースを振り返ります。
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ジェッダ・コーニッシュ・サーキットは高速レイアウトの市街地コースということで、各車がダウンフォース量を落として挑む一戦ですが、そのサウジアラビアでもレッドブルは他を圧倒しました。低ダウンフォース仕様にしてもクルマが非常に安定しており、レッドブルのマシン『RB19』はダウンフォース量に関係なくタイムを出せるクルマという印象です。
サウジアラビアGPでのレッドブルはストレートスピードが速いだけでなく、外から見ていてもクルマストレスをかけずにコーナリングしているようにも見えました。
ブレーキの踏力もそこまで強くなく、軽めのブレーキングでしっかりと減速できている。それにともないピッチング(編注:加減速時の荷重移動により車両の重心位置が変化し、減速時は車体が前傾、加速時は車体が後傾する現象のこと)もあまり出ない。それにはクルマの完成度の高さもありますが、ドライバーふたりの“クルマの弱点を打ち消すドライビング”も強さの要因だと思います。
サウジアラビアGPではレッドブルがワンツー。ただ、2年連続チャンピオンのマックス・フェルスタッペンが予選でのマシントラブルにより15番手からのスタートとなったこともあり、ペレスがポール・トゥ・ウインを飾りました。
F1ではファステストラップを記録すると1ポイントが手に入るため、ペレスがファステストを記録すれば、ドライバーズランキングでフェルスタッペンを逆転する可能性もあり、レース終盤はこのふたりのファステストラップ更新合戦も面白かったですね。結果としてはファイナルラップに1分31秒906を記録したフェルスタッペンがファステストをもぎ取り、ドライバーズランキングトップを死守しました。
ペレスとしては(予選でも)フェルスタッペンにマシントラブルが発生しているのに、毎周ファステストを更新し合うほどプッシュする必要があるのかと思ったかもしれません。開幕から2戦目にしてチーム内のガチガチの戦いの火蓋が切って落とされたので、今後のふたりの関係・メンタリズムにも変化があるでしょう。チームが今後ふたりをどのようにコントロールし、ときにどちらを優先するのかにも注目したいです。
開幕戦に続き、今回のレースもフェルナンド・アロンソが話題の中心にいました。フロントロウスタートから一時はトップに浮上し、2戦連続となる3位表彰台を獲得しましたが、スタートの際に左側にタイヤ1本分くらい、スターティングボックスからはみ出していたことで5秒のタイムペナルティが科されたました。
スターティングボックスの線はドライバーの視点からはとても見えにくく、わずかにズレることは大いにあり得ると思います。なので、グリッドに着く際にはかなり手前からスターティングボックスの枠線を意識しておかないと、正確なポジションに停めることはできません。ドライバーとしてはかなり緊張する場面のひとつでもあります。
でも、サウジアラビアGPのアロンソはグリッドに止まる直前に右側に視線を振ったり、スタートに備えて準備を進めながらの停止だったので「あ、しまった!」という感じだったかもしれませんね。本人のコメントのとおりアロンソのミスだと思います(笑)。ミスではあるのですけど、スターティングボックスがとても見えにくいという事実は、他のドライバーもコメントしていたとおりです。
私の現役時代のF1マシンもスターティングボックスが見やすいクルマではありませんでしたが、そこまで気にすることはありませんでした。現在のF1は安全性が強化されてヘッドセット周りが高くなったりしてドライバーから見える範囲が狭くなっているので、その影響はあると思います。でも、久しぶりのフロントロウスタートでアロンソも興奮していたのかもしれませんね(笑)。その辺もアロンソらしいなと思いました。