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F1 ニュース

投稿日: 2023.05.24 21:15
更新日: 2023.05.25 06:33

最強レッドブルからアストンマーティンにPU供給の複雑な経緯。HRC主導でのホンダF1再参戦の狙い

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F1 | 最強レッドブルからアストンマーティンにPU供給の複雑な経緯。HRC主導でのホンダF1再参戦の狙い

 ホンダが2026年からのF1参戦を正式に表明した。2023年シーズンはフェラーリやメルセデスを上回り、現在選手権2位と絶好調のアストンマーティン・アラムコ・コグニザント・フォーミュラ・ワン・チームに、パワーユニット(PU)をワークス供給するかたちでの活動となる。

 だがこのニュースを聞いて、モヤモヤした思いのファンも少なくないと想像する。なぜならホンダは2020年にF1の活動終了を表明しているのに、現在に至るまでレッドブル・グループにPUを供給し続けている。だったら2026年以降もその関係を続けるのかと思いきや、アストンマーティンと組むことを決めた。第三者の目には右往左往、右顧左眄の連続に見える。そのあたりの事情から、振り返ってみよう。

■2020年の活動終了後にF1の状況が変化。2026年の新PU規定で方針転換

 ホンダがF1活動終了を表明したのは2020年の秋だった。2050年までのカーボンニュートラル実現という全社的目標に向けて、F1の人的物的資源をそちらに振り向けるという理由からだった。一方でF1にかける莫大な予算が、本社の収益構造に負担となっていたことも事実である。

 ともに頂点を極めるはずだったレッドブルにしてみれば、梯子を外された思いだったはずだ。彼らはやむなく、パワーユニットの自社開発に乗り出すことを決めた。とはいえ自動車メーカーでもないF1チームが、そう簡単に高性能PUを作り出せるはずもない。2025年まで開発がほぼ凍結されたこともあり、ホンダはリソースを削減しつつ、レッドブル・グループへのPU製造、供給を続けることになった。

 その間にレッドブルは2026年に向けたPU開発を続け、フォードとのパートナーシップも締結した。フォードが担うのは主にバッテリー関連で、PUの中核領域はあくまでレッドブルの自前の技術ということだ。

 この流れからいけば、ホンダは2025年いっぱいでF1から去るはずだった。2020年の発表時も「活動停止」や「撤退」ではなく、「活動終了」という表現を使っていた。『もはやホンダはF1に戻ることはない』という意思表明からだった。

 ところがその間にF1を取り巻く状況が大きく変化し、それがホンダの方針転換につながった。「最も大きい変化が、2026年からの新PU規約でした」と、三部敏宏社長は語る。

「ICE(エンジン本体)とERS(エネルギー回生システム)による出力比が、ほぼ50:50になり、電動化比率が大幅に上がる。さらにカーボンニュートラル燃料の使用が義務付けられる。F1がホンダの目指す方向性と合致する、サステナブルな存在となったということです」

 一方で経済、経営的なふたつの状況変化も決して無視できない。ひとつがコストキャップ(年間予算制限)である。これまでF1チームだけが対象だったコストキャップが、新PU開発に関してはPUメーカーに対しても課される。具体的には、2025年までは9500万ドル(約128億円)、2026年以降は1億3000万ドル(約175億円)の予算上限が設定される。

 ホンダPUの具体的な開発費は公にされていないが、年間数百億円単位と言われる。三部社長が175億円というコストキャップについて、「かなり少ない数字」とコメントしていることからも、PU開発費が劇的に減り、ホンダの負担が非常に少なくなったことは間違いないだろう。

会見冒頭で2026年からのF1参戦を明らかにしたホンダ三部敏宏社長
会見冒頭で2026年からのF1参戦を明らかにしたホンダ三部敏宏社長

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