バーチャルでも“人間中心”を追求/マツダRX-VISION GT3コンセプトのデザインストーリー
5月22日にプレイステーション4用ソフト『グランツーリスモSPORT』に追加された『MAZDA RX-VISION GT3 CONCEPT(マツダRX-VISION GT3コンセプト)』。すでにゲーム内でドライブした人も多いと思うが、収録に合わせてマツダはRX-VISION GT3コンセプトのプレスリリースを発表し、マシンが完成するまでのデザインストーリーやメッセージを公開している。
RX-VISION GT3コンセプトは、グランツーリスモSPORTに登場するバーチャルレーシングカーで、2015年の東京モーターショーで公開された『マツダRX-VISION』をベースに、マツダのデザイナー陣とグランツーリスモシリーズを手掛けるポリフォニー・デジタルのデジタルモデラー陣の共創から生み出されたマシンだ。
RX-VISION GT3コンセプトのデザインプロジェクトは2019年の秋からスタートし、同年11月にモナコで行われた『FIAグランツーリスモ・チャンピオンシップ』ワールドファイナルの会場で同車のイメージスケッチが初めて公開された。その後、ポリフォニー・デジタルとマツダデザインの間で頻繁に意見交換を行いながらデザインのブラッシュアップとモデリング作業が進められたという。
ゲーム内に登場したRX-VISION GT3コンセプトはFIA-GT3の車両規則やレーシングカーに必要な性能要件が反映され、GT3規格の車両規定に準じてキャビンやドアの形状はオリジナルを維持しながら、前後タイヤ/トレッドの拡大に伴いワイドフェンダー化が施された。
その他のエアロパーツとして、空力性能向上とエンジンルーム内の冷却を両立する大型のエンジンフードアウトレット、冷却性能やフロントダウンフォースをコントロールするフロントロワスポイラー、リヤのダウンフォースを高め後輪のトラクションを確保するリヤスポイラーとアンダーディフューザーなどを装備。
ワイドフェンダー化による前面投影面積の増加は空力性能を向上させるために最小限に抑えられ、エクステリアデザインは車高を下げ、低く構えるようなプロポーションが追求された。また、インテリアの不要部品の取り外しや重量物の材質置換などによって軽量化や低重心化が施され、前後重量配分は48:52という理想的な数値が実現されている。
リアルなレーシングカーと遜色のないまでに作り込まれたコックピットは、マツダ車のインテリアデザインに共通する“人間中心”のフィロソフィーがバーチャルでも追求された。具体的にはステアリングホイールに操作性を高めた専用デザインが採用されたほか、シート形状をはじめとしたドライビングポジションやペダル配置、運転中の視界確保という点が最も重要視されたという。
このようなデザインエピソードがありつつ、RX-VISION GT3コンセプトの開発は量産車両と同様に各部のデザインスケッチワークからスタートし、3Dデジタルモデリングを経て細部の最終デザインが決定された後、ポリフォニー・デジタルのデジタルモデラー陣によってグランツーリスモSPORT内に誕生した。
チーフデザイナーとしてこのマシンに携わったマツダデザイン本部の岩尾典史氏は、「私たちは、最も美しいコンセプトカーと評されたマツダRX-VISIONをベースに、世界一美しく速いGT3レーシングカーを目指してデザインしました」とRX-VISION GT3コンセプトのデザインについて語った。
「特に外観は無駄を排除し、機能的な美しさを追求しています。魂を込めてデザイン開発するのは、量産車やコンセプトカーだけでなくこのバーチャルレーシングカーもおなじです」
「初期段階から貫いたのは、すべてのマツダ車に共通する“人間中心”という開発思想です。我々デザイン本部には担当役員はじめクルマ好きが多く、グランツーリスモシリーズやモータースポーツに精通している仲間も多数いるため、レース中のクルマの挙動や操作系については彼らのアドバイスも参考にしながら、実際にコースを走らせる姿をイメージしてデザイン作業を進めました」
「造形としての美しさとレースカーとしての機能や性能、そしてレギュレーションを全て満足させることは、まさに針に糸を通すような作業でしたが、私たちの志に共感いただき、幾度となく修正作業にご協力いただいたポリフォニー・デジタルのメンバーの皆様に心より感謝いたします」
「我々のひとつの“ありたい姿”をバーチャルの世界に具現化したこのRX-VISION GT3コンセプトは、グランツーリスモSPORTのなかでイキイキと走るマシンに仕上がりました。是非、世界中のみなさまに楽しんでいただきたいと願っております」