更新日: 2024.12.10 02:11
「勝てるレースだった」。ニッサン勢4台にペナルティも、『GEN3 EVO』初戦で見せた勝利の可能性/フォーミュラE
12月7日(土)にブラジルで行われた2024/2025年ABB FIAフォーミュラE世界選手権の開幕戦『サンパウロE-Prix』に2番グリッドからスタートしたニッサン・フォーミュラEチームのオリバー・ローランドは、最終的にはペナルティによる後退や赤旗中断によってチャンスを失って14位に終わったものの、レースでは好ペースを武器に優勝を争い、ニッサンの新型マシン『GEN3 EVO』の速さを印象付けた。
開幕を迎えたシーズン11は、予選やアタックモード時などで使用可能な四輪駆動を採用した新型マシン『GEN3 EVO』の導入初年度であり、開幕戦『サンパウロE-Prix』は2年ぶりのハードウェアアップデートの成果が試される一戦となった。
そのなかで、自社開発のパワートレインを使用するニッサン・フォーミュラEチームや、ニッサンのカスタマーチームであるネオム・マクラーレン・フォーミュラEチームのマシンは、シーズン10までよりもライバルに対する好ペースを見せて新パッケージの強さを発揮。
ニッサンのエースであるローランドは、予選で2番グリッドを獲得し、迎えた決勝ではホールショットを奪って主導権を握った。その後もアタックモードの兼ね合いで順位が前後するなかでも好位置をキープし、2度目のアタックモードに首位のまま入った際には逃げ切り優勝の可能性も見えた。
しかしローランドに、規定エネルギー量を超えた走行があったとして『オーバーパワー』の裁定が下り、ドライブスルーペナルティが課せられることに。終盤でのポジションダウンは大きな痛手となり、ローランドは同一周回の最後尾となる14位でチェッカーを受けた。
このペナルティが課せられたのはローランドだけでなく、レースの序盤には僚友ノルマン・ナト(ニッサン・フォーミュラEチーム)や、カスタマーチームで走るサム・バードとテイラー・バーナード(ともにネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム)に対しても同じ裁定が下されていた。
ニッサン勢に共通したこの『オーバーパワー』について明確な原因は明らかにされていないが、パワートレインの利用やレース戦略のオペレーションにおいて、早急な解決が望まれる状況になっている。
開幕戦サンパウロE-Prixでの戦いについて、ニッサン・フォーミュラEのゼネラルマネージャーであり、チームのマネージングダイレクターを務めるトマソヴォルペは次のように述べている。
「ペナルティにより後退してしまうなど、反省点が多いレースだった。ポイントを獲得できなかったのは非常に残念で、今回の結果は我々のパフォーマンスをまったく反映していない」
「予選と決勝レースの前半で速いペースに乗り、ローランドは勝利の可能性を示唆した。今回は自分たちの失敗を受け入れ、車両やレース管理において改善すべき要素に取り組み、同じ失敗は2度と繰り返さないようにしたい」
一方のマクラーレンは、早いうちのペナルティ消化が展開に味方し、終盤には表彰台圏内を争うことに。とくにルーキーのバーナードは、アタックモードでの好ペースを活用して3位表彰台を手にしてみせた。
チーム代表であるイアン・ジェームズも「(彼らは)称賛に値する走りを見せた」と活躍を喜ぶ一方、『オーバーパワー』のペナルティについて苦心を言葉にする。
「テイラー(・バーナード)は史上最年少で表彰台に立って3位、サム(・バード)は4位でフィニッシュし、チームに多くのポイントをもたらした。ドライバーたちは成熟した冷静さで混乱を乗り切り、称賛に値する走りを見せた」
「とはいえ、チームとして期待するオペレーションのレベルには達していない週末を経験したことは確かだ。学んだことを確実に活かし、次のメキシコで同じ問題に遭遇しないように懸命に取り組むつもりだ」
2年ぶりのハードウェアアップデートの結果、近年優勢だったジャガーやポルシェらと肩を並べた走りを見せたニッサン勢。シーズン10ではニッサンが2勝、マクラーレンが1勝という結果だったが、シーズン11ではさらなる活躍に期待がかかる。両チームのドライバーコメントは以下の通りだ。
■ニッサン・フォーミュラEチーム
●オリバー・ローランド 予選2番手/決勝13位
「練習と予選は好調で、前列からスタートできたのはとても良かった。決勝もレースの前半は完璧で、ターン1でリードを奪い、エネルギーをうまく管理した」
「勝てるレースだったが、途中赤旗が出てしまったことと、自分のミスにより残念ながらポイント圏外に落ちてしまった」
「マシンは速く、首位を奪い、エネルギー効率は良かったが、ミスが多すぎたと思う。次のラウンドで改善することを目指す」
●ノルマン・ナト 予選6番手/決勝14位
「予選では、(オリバー・)ローランドも自分も良い結果を出すことができた。6番手は良いスタート地点だったが、残念ながらレースは思い通りには進まなかった」
「今回のレースでは表彰台に立てる可能性もあったが、いくつかミスをしてしまったことで叶わなかったので、次のレースに向けて対処したいと思う」
「しかし、潜在能力はあり、ニッサンとともにレースに戻れたのは良かった。チームと非常に良く連携できたと思うので、メキシコE-Prixで改善することに集中したい」
■ネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム
●サム・バード 予選16番手/決勝4位
「サンパウロでのレースは、チームにとってジェットコースターのような1日だった」
「テイラー(・バーナード)がフォーミュラEで初めて表彰台を獲得し、チームとして良い結果を手にしたのは喜ばしいことだ。彼の活躍を心から嬉しく思う。彼はオフシーズンにとても一生懸命に取り組んでおり、表彰台にふさわしい努力を続けてきた」
「自分は4位でフィニッシュし、賢く戦った。シーズンはまだ始まったばかりだが、早い段階でポイントを獲得するのはいつでもうれしいことだ」
●テイラー・バーナード 予選17番手/決勝3位
「今日のレースは本当にクレイジーだった。サム(・バード)と自分は一時は後方にいたが、チームで3位と4位でフィニッシュできたのは素晴らしいことだ」
「とくに、チャンピオンシップでフルタイムドライバーとして戦う初めてのレースだったので、なおさらだ。初めての表彰台を獲得できたことに、言葉が出ないよ」
「自分たちがフィニッシュライン越えるためのサポートをしてくれたチームに心から感謝している。シーズンのスタートとしては好調で、今後もこのような結果が続くことを期待したい」