TCRシリーズの世界統一戦として設定され、イタリアのアドリア・インターナショナル・レースウェイを舞台に初開催された“TCRヨーロピアン・トロフィー”は、レース1をドイツ王者のジョシュ・ファイルズ(ホンダ・シビック・タイプR)が、レース2を新型ヒュンダイi30 N TCRで参戦したガブリエル・タルキーニが制したものの、合計獲得ポイントにより初代王者はTCRベネルクスを主戦場とするオーレリアン・コンテのプジョー308 TCRのものとなった。
TCRインターナショナル・シリーズを頂点に、ベネルクスやミドル・イーストなどのリージョン・シリーズ、そしてドイツ、イタリア等の国内シリーズからも強豪が集結した“世界一決定戦”ともいうべき1戦は、インターナショナルのレギュラー勢であるクラフト-バンブー・ルクオイルやレパード・レーシング、M1RAが不在のなか、各国のトップコンテンダーが躍進。
その中心的存在として活躍を演じたのはTCRドイツで連覇を果たし、初開催ウインターリーグである中東シリーズでも初代王者に輝いたファイルズのシビックだった。
初日のテストセッションではファイルズが、続くプラクティス1では同じくターゲット・コンペティションからエントリーするジャコモ・アルト(ホンダ・シビック・タイプR)がトップタイムをマーク。
アルトもまた、ファイルズと中東シリーズのタイトル争いを展開した期待のティーンエイジャーであり、今季のインターナショナルではジャンニ・モルビデリのチームメイトとして、ウェスト・コースト・レーシング(WCR)のフォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCRをドライブした実績を持つドライバーでもある。
そんな2台のシビックの前に立ちふさがったのが、インターナショナルの前戦・中国ラウンドからテスト参戦を開始した、ヒュンダイ・モータースポーツの優勝請負人、タルキーニのヒュンダイi30 N TCR。
まだ正式ホモローゲーション前の賞典外エントリーとなるのはインターナショナルと同様ながら、最終プラクティスはタルキーニが最速を記録すると、予選でもそのままの速さでファイルズ、アルトを従えポールポジションを獲得してみせた。
しかしここで黙って引き下がるわけにはいかないファイルズは、今季2冠の意地を見せるべく、スタートの攻防でポールシッターのタルキーニに競り勝ち1コーナーを制圧。
先行されたタルキーニは、挽回を期してファイルズのシビックへのアタックを繰り返し、何度もファイルズのリヤバンパーをプッシュする激走を見せるが、王者のディフェンスを見せたファイルズが最後まで先頭を譲り渡すことなく、トップチェッカー。
「今日のマシンは本当に素晴らしい仕上がりだった。あの大ベテランは速い上に老獪で、タフな相手だったよ(笑)。僕は何度もバンパーを小突かれたけど、なんとか守りぬくことができてよかった」と、そのまま見事レース1勝利を決めて見せた。
20周のレース終盤、ファイルズを援護すべくタルキーニの背後に迫ったアルトが3位表彰台。4位にはTCRベネルクスでタイトル争いを展開するDGスポーツ・コンペティションのオーレリアン・コンテ(プジョー308 TCR)が入り、5位はSTCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権に参戦したLMSレーシングのアウディRS3LMSをドライブするアンティ・ブリ、6位にベネルクスでコンテの対抗馬としてタイトルを争うチームWRTのマキシム・ポティ(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR)のトップ6となった。