更新日: 2018.03.14 20:39
新エアロ導入で競争激化のインディカー。開幕戦ゴール目前のクラッシュはなぜ起きたのか
新エアロキット導入でエンジン以外がワンメイクになったインディカー・シリーズ。マシンの差を減らして競争激化を狙ったインディカーの思惑は見事当たり、開幕戦セント・ピーターズバーグの予選でファイナルに進んだ6人は別々の6チームから出場するドライバーとなった。
ポールポジションをルーキーのロバート・ウィケンス(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)が獲得。予選3、4位にもジョーダン・キング(エド・カーペンター・レーシング)とマテウス・レイスト(AJ・フォイト・レーシング)が食い込んだ。チップ・ガナッシ・レーシングはトップ6に入れず。昨年度チャンピオンのジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)はセカンドステージ進出を逃し、予選13位だった。
「技術力を活かせるエリアが無さ過ぎる」と早くも不満を口にしているのは、開発力でライバルたちを常にリードしてきたチーム・ペンスキーの社長ティム・シンドリックだ。
技術競争もレースの重要な一部という指摘には頷けなくもないが、4年間で3回チャンピオンの彼らをもってしても苦戦をさせられている今の状況は歓迎する人の方が多いのではないか。
レースは確実におもしろくなっていた。昨年よりダウンフォース20パーセント減のマシン、事前テストのできないストリートコースでの開幕戦、まだ新エアロの特性に完全にマッチさせられていないファイアストンタイヤなどの要素も絡んでのことだろう。
ポールスタートだったウィケンスが本人も驚く安定したスピードとパフォーマンスを発揮し続けて優勝へと突き進んでいた。しかし、もうゴール目前でフルコースコーションが出され、3秒もあったリードはふいに。2番手につけていたアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)は、諦めかけていた勝利に再び闘志を燃やした。
残り4周のリスタートでもウィケンスは危なげなくトップをキープ。そのラップの後半にはロッシに明確な差をつけるほど走りにキレがあった。しかし、そこでまたイエロー。次のリスタートはゴールまで2周で切られた。
ここでウィケンスは加速が悪く、真後ろのロッシは絶妙のタイミングでアクセルを踏み込み、ウィケンスのリヤウイング下に潜り込むぐらい接近して最終コーナーを立ち上がった。
スリップストリーム利用からロッシがインへとラインを変え、ウィケンスはラインをホールドしてターン1へアプローチ。ふたりはブレーキング競争をしながら、並んだままコーナーに飛び込んでいった。
インサイドに入ってアドバンテージを得たかに見えたロッシだったが、ウィケンスはアウトからスピードを保ってコーナリング。狭められたイン側のスペースでロッシはリヤを滑らせ、右フロントが縁石に触れると更にスライドしてウィケンスにぶつかった。
レース後、ふたりはその時の状況を振り返った。
「普段はリスタートでプッシュトゥパス(P2P)は使えないが、あのラップではレースを再開させる決断が遅く、P2P使用が許可された。そのことを聞いたのはターン13と14の間だった」
「あれで僕はロバートに対して大ジャンプができた。彼はP2Pボタンを押すのがかなり遅れ、僕にとっては完璧な状態になった」とロッシ。
「ターン1に向かった。チャンスはここ以外にないと思ったから、スリップから抜け出した。相手は防御の動きを取った。そうする権利が彼にはある。しかし、こちらの動きに反応しての行動で、彼はコーナーの奥の奥で僕をタイヤかすの中に追いやった。とても不幸な結末になり、残念に思う」
「僕は優勝することができ、彼は2位フィニッシュできていたはずなのに……。ドライバーズミーティングで、相手の動きに反応したライン変更はブロッキングと見なすと明言されていた。最終コーナーの出口か、ストレートを半分行ったあたりででも彼がインサイドを守る走りをしていて、それでも僕がインに突っ込んでいったのなら、僕が自身のマシンを危険エリアに進入させたってことになるけどね」
「彼はブレーキングゾーンでもラインをこちらに寄せてきた。それで僕は更にタイヤかすの中へと追いやられた。僕はブレーキをロックさせておらず、あのコーナーをクリアできるはずだった」
映像ではロッシのリヤはロックしているように映っていたが……。