インディ:ショートオーバル初レースで見えた新エアロ適応力。琢磨のRLLRは苦戦中
インディカー・シリーズ第2戦が開催されたフェニックス郊外のISMスピードウェイは、1964年創業の1周の全長1.022マイルのオーバルコースだが、ターン1側の最大バンクが11度、ターン3側は9度と緩やかで、バックストレッチに“ドッグレッグ”があってオーバーテイクは前から少なかった。
コース全長に対するコーナリング時間が長い部類のコースは、バンクが緩やかなのでサイド・バイ・サイドで走り続けるのはほぼ不可能。パスが難しいのはこのコースが生まれ持った性格だ。
それでもインディカーはオーバーテイクを増やすべく努力し、全員が同じエアロキットを使用することとなった今シーズン、ダウンフォース量が大幅削減された状況下で”タイヤドラゴン”という新しい機器を導入、走行ラインを広げることにトライした。
レースで使うのと同じファイアストンタイヤのコンパウンドを大型トラクターで路面に擦り付け、グリップが高いラインをアウト側へ広げて2ワイドで走れる可能性を高めようという試みだ。しかし、残念ながらタイヤドラゴンの恩恵は不明……というか、ほとんど効果は見られなかった。
予選最速はデイル・コイン・レーシング・のセバスチャン・ブルデーだった。彼は開幕戦ウイナーだが、それは幸運を味方につけてのもの。自らセント・ピーターズバーグでのマシンを”トップ5カー”と評価していた。
それがフェニックスでは堂々と胸を張れるスピードを予選で見せつけた。ドライバーを含めたチームのエンジニアリング力で彼らがシリーズ最強のチーム・ペンスキーを上回ったのは痛快だった。ペンスキー勢はシモン・パジェノーが予選2番手、ウィル・パワーが予選3番手、ジョセフ・ニューガーデンが予選7番手だった。
レースでのブルデーは1回目のピットストップでブレーキングをミス。ピットクルーにぶつかってペナルティの対象となり、優勝のチャンスを失った。しかし、彼らがショートオーバルでも速かったのは事実で、彼らのエンジニアリングスタッフはこれまでのところ非常にいい仕事をしていると評価できる。
今シーズンに向けてエンジニア体制を一新したシュミット・ピーターソン・モータースポーツも予選で5、6番手という上位につけた。彼らは開幕戦セント・ピーターズバーグの予選でロバート・ウィケンスがPPを獲得し、決勝ではジェイムズ・ヒンチクリフともどもトップグループを戦っていた。
新エアロのセッティングのポイントを掴んでいるチームのひとつで、フェニックスでは予選、レースともに安定した速さを見せ、その上で状況を見ながら作戦を変えていく柔軟性の高さも発揮していた。
チップ・ガナッシ・レーシングは、今回のレースで何かを掴んだかもしれない。4回チャンピオンになっているスコット・ディクソンは毎年スロースターターがだが、2016年にフェニックスでは優勝を記録している。
しかし、今年の合同テストでの順位は8番手で、その約2カ月後の予選では17番手という苦戦ぶり。決勝でも中団を走り続ける厳しい戦いを余儀なくされていたが、終盤戦でマシンが良くなり、作戦の巧さも加味されて望外の4位フィニッシュを達成した。
今年からディクソンのチームメイトとなっているインディカー2年目の若手エド・ジョーンズは、早め早めのピットタイミングが展開にピタリ嵌まって2位フィニッシュ目前だったが、残念なクラッシュでレースを終えた。トップを争えるスピードはなかったが、トップグループに加わるだけの力は備えている。そういう戦いぶりだった。