ポートランド・インターナショナル・レースウェイで開催されたインディカー・シリーズ第16戦。2日に行われた決勝レースは、20番手からスタートした佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)が2017年のインディ500以来となる今シーズン初勝利を挙げた。
佐藤琢磨が今シーズン初勝利を記録した。2007年以来の開催となるポートランドでのレース、彼は20番手という後方グリッドからのスタートだったが、燃費作戦を活用し、レース終盤にはスピードも十分なものを保って優勝へと逃げ切った。
昨年のインディ500以来となるキャリア3勝目。レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングへの復帰初年度の勝利、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングが本格的な2カー体制に戻した最初のシーズンの優勝には大きな価値がある。
チームメイトのグラハム・レイホールより先に勝ったという点も重要なポイントだ。また、今シーズンはすでにアンドレッティ・オートスポート、チップ・ガナッシ・レーシング、シュミット・ピーターソン・モータースポーツ、デイル・コイン・レーシングが勝利を挙げていただけに、唯一未勝利だったホンダ・チームのレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングも勝ち星を記録できたことは大きな意味を持つ。
「みんなと同じことをやっていては上位までは進出できない」と琢磨はチームのストラテジー・ミーティングで2ストップ作戦を提案したという。最初は反対したチームだったが、琢磨が情熱によって説得し、それが実った。
第16戦の決勝は波乱の幕開けとなる。スタート直後のターン2先で多重クラッシュ発生。
マルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・ハータ・オートスポート)が裏返しになってストップ。フルコースコーションが出された。これを琢磨は利用し、少しだけ減った燃料を満タンにするピットストップを行った。後方のポジションを走っていたからこそ可能な作戦だ。
これが大きなアドバンテージになったのは間違いない。琢磨はピットしていない上位陣より1回目のピットストップを遅らせることができ、2回目のピットタイミングを前にトップに躍り出た。
そして、ピットに向かう周回数が近づいたところでルーキーのサンティーノ・フェルッチ(デイル・コイン・レーシング)がストップ。コーションが出ると読んだ大半のチームがここでピットに向かった。琢磨も当然その中のひとりで、トップからピットインし、ここでピットしなかった唯一のマシン、マックス・チルトン(カーリン)の後ろの2番手でレースのリスタートを迎えることになった。
チルトン以外はもうピットインせずにゴールまで走り切れる、あるいは走り切らなければチャンスはない状況。琢磨はリスタートで2番手を保ち、105周のレースの84周を終えたところでチルトンがピットに向かうとトップに復活。
彼の後ろにはライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)とセバスチャン・ブルデー(デイル・コイン・レーシング)がつけ、チャンスを狙っていた。ただ、誰もが多かれ少なかれ燃費セーブを行わねばならない状況で、ゴール前の数周にバトルがヒートアップすることが期待された。
スタートから燃費セーブを強く意識していた琢磨は、すぐ後ろを走るハンター-レイが自分より6周早く1回目のピットストップを行ったことをチームから知らされていたため、燃費の状況は自分の方が明らかに有利とわかっていた。最後のピットストップもハンター-レイは琢磨より4周早くすませている。
リスタートの時点で燃費の目標を達成していた琢磨は、プッシュ・トゥ・パスをストレートで5秒ほど使い、ハンター-レイの接近を許さなかった。