9月8~9日に開催されたSTCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権の第5戦は、シリーズ唯一の海外戦としてノルウェーに上陸。前戦でぼっ発した“違法エキゾースト問題”で揺れるPWRレーシングのセアト・クプラTCR勢は全車が“ノーマル形状”の排気管にスイッチして挑み、怒りの走りで予選ワン・ツー・スリーグリッドを独占。しかし豪雨となった2ヒートで勝利を挙げたのは、宿敵KMSのWorldRX世界ラリークロス王者、ヨハン・クリストファーソン(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR)だった。
8月中旬の第4戦、スウェーデン・カールスクーガで発生したPWRレーシング・セアト・ディーラーチームの失格騒動に対し、セアトの高性能車部門としてTCRマシンを供給するクプラ・レーシングが声明を出す事態に発展し、「我々が供給するサイレンサー形状のオプションは、全TCRカテゴリーに供給されるグローバル・スペックであり、性能向上の要素を持つものではない」とのコメントを発表。
それに対し、ライバル勢であるKMS(クリストファーソン・モータースポーツ)や、古豪WCR(ウエスト・コースト・レーシング)などは並走テストを提案するなど、不穏な空気が漂うなかでノルウェー・ラスコーゲンの週末は幕を明けた。
このイベントを前に、スカンジナビアン地域のセアトやアウディの供給元ともなっているPWRは、STCCに参戦するクプラTCR、アウディRS3 LMSの全エキゾーストを、ホモロゲーションペーパー記載のスペック1本に統一。
セアトを使用するPWRに加え、アウディを走らせるブリンク・モータースポーツ、ブロバリアン・デザインの両チームも、シングルスペックのエキゾーストでレースに臨むこととなった。
その戦闘力がどう変化するかに注目が集まった公式練習1回目こそ、トップタイムをKMSのクリストファーソンに譲ったものの、PWRの代表兼ドライバーであるダニエル・ハグロフを先頭に、ルーキーのフィリップ・モーリン、王者ロバート・ダールグレン、そして女性ドライバーのミカエラ・アーリン-コチュリンスキーが2~5番手タイムをマーク。
続く公式練習2回目、そして予選ではPWRクプラがワン・ツー・スリーを独占し、ハグロフがポールポジションを獲得。ダールグレン、モーリンが脇を固めて、セッションを支配する結果となった。
「カールスクーガ以降、この数週間は少し荒んだ気持ちで過ごしたよ」と語った、ポールシッターのハグロフ。
「セアトとクプラ・レーシングが『我々の解釈が正しかった』と正式に宣言して以来、すべての物事を正しく行ってきたとの確信を深めていた。我々はつねにSTCCのガイドラインに従っているし、このイベントでは万全を期してオプションのサイレンサーではなく標準形状のエキゾーストのみを使うよう指示したんだ」
「まさに今回、我々のマシンが素晴らしい走りをしていることを(違反だと指摘した)ライバルチームに感謝しなくてはならない。規定解釈が問題ではなかったと同時に、チームのパフォーマンスが正当なものだったと証明されたわけだからね」
しかし迎えたレース1当日は天候が一転。豪雨の中でのスタートとなり、前日までのドライ路面で盤石の走りを見せたPWR勢がわずかに失速。