VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーの2019年第11戦は、オーストラリアの隣国ニュージーランドのプケコヘ・パークに舞台を移して開催された。9月13~15日の週末、土曜200kmレースではレッドブル・レーシング・オーストラリア、シェーン-ヴァン・ギズバーゲン(ホールデン・コモドアZB)がひさびさの勝利を手にし今季3勝目を飾ったものの、日曜は今季圧巻の勝率を誇る王者スコット・マクローリン(フォード・マスタング)が、セーフティカー(SC)運用の議論が巻き起こる荒れたレースを制し、シリーズ新記録の年間17勝目をマークした。
今年デビューしてから、ここまでシリーズを席巻する強さを披露している新型フォード・マスタング・スーパーカーに対し、VASCシリーズの技術部門は第11戦を前に今季3度目の性能調整を発動。ライバル陣営のホールデン・コモドアZBに対し、フロントアンダーパネルの再延長と、リヤウイング・ガーニーフラップの追加申請を許可する決定を下した。
その影響が色濃く反映された土曜予選では、SVGことシェーン-ヴァン・ギズバーゲンが、予選セッションで好タイムを連発。地元ニュージーランド戦に燃える2016年王者はトリプルエイト・レースエンジニアリングのマシンでQ3最速を記録し、プケコへ・パークのコースレコードを更新するタイムを記録。全24台中22台が1秒圏内、トップ10がコンマ5秒差以内という緊迫の予選を制してみせた。
すると、SVGは勢いそのままにレース1でも主導権を握り、ルーティンピット後に装着したニュータイヤのセットでは、決勝ファステストの記録も塗り替えての完勝劇。ホールデン・コモドアZBの戦闘力向上を証明するとともに、マスタング勢に一矢報いる、ようやくのシーズン3勝目を飾った。
「すべてのキウィ(ニュージーランド出身者の愛称)たちに捧げるレースができた。この大観衆を前に、素晴らしいコースで勝利を飾れたことに、ものすごく興奮している」と勝利に喜びを爆発させたSVG。
「予選を終えて、マシンの動きから『決勝もいける』という手応えはあった。このラウンドの直前、マシンに性能調整の変更が行われたけれど、それが明らかに効果を表したようだ」と認めたSVGだったが、ツーリングカー・レースを愛するハコ車乗りらしい“苦言”を呈することも忘れなかった。
「確かにダウンフォースは増して、ラップタイムは向上してマスタングを打ち負かすことはできた。でもこの状態では、残念ながら『レースを戦うことはほぼ不可能になった』とも言える。とくに高速コーナーで前のマシンに追随するのが難しすぎるんだ」
「ダウンフォースは『増やすのではなく、減らす方向』でなければならない。すべてのマシンからダウンフォースを削減しなければ、シリーズは滅んでしまうだろう。なぜなら、この状態でマシン同士がバトルを繰り広げるのは至難の技だからだ。個人的にマシンが速いことはありがたいが、レースにとっては明らかに良くない」