トレーラーヘッドで争われるFIA欧州格式選手権、ETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップの第8戦が10月5~6日にスペインのハラマで開催され、すでに2019年のタイトル獲得を決め、前人未到6度目のチャンピオンに輝いたヨッヘン・ハーン(ハーン・レーシング/イベコ)が、イベント2日前に急逝した亡き父に捧げる特別な勝利を飾った。
2週連続開催のバック・トゥ・バック戦ながら、すでにタイトル確定で消化試合の空気も漂うことが予想された最終戦スペインは、土曜スーパーポール・セッションでスリリングなタイムバトルを制したハーンがポールポジションを確保。いつもどおりの週末になる……と、ハーン以外の誰もが考えるような展開となった。
地元スペイン出身の英雄アントニオ・アルバセテ(トラックスポーツ・ルッツ・ベルナウ/マン)をわずか0.097秒差で下して最前列からスタートした王者ハーンは、その直前となる10月3日に、最愛の父であり恩師でもあるコンラッド・ハーンを71歳で亡くしていた。
父コンラッドもトラックレーシング・ドライバーとして活躍し、1990年代後半には複数の表彰台も獲得。その時を同じくして、現在のチームにつながるハーン・レーシングの母体を設立し、その後は2000年にデビューし瞬く間に“ルーキー・オブ・ザ・イヤー”を獲得した息子ヨッヘンの育成に尽力した。
そのヨッヘンはメルセデス・ベンツ、MANなどでハットトリックを含む数々のドライバーズタイトルを勝ち獲り、2017年にイベコとのパートナーシップでハーン・レーシングがETRCに本格復帰すると、翌2018年、2019年と連続でチャンピオンを獲得する、当代きってのトラックレーシング・ドライバーに成長を遂げた。
その愛息がシリーズ記録となる6度目のチャンピオンを獲得する場面をパドックで見届けたコンラッドは、連戦となる最終戦を前に急逝。ヨッヘンにとっては、その弔いの意味を込めたレースウイークともなっていた。