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海外レース他 ニュース

投稿日: 2020.03.12 22:43

インディカー2020年シーズンプレビュー:エアロスクリーン導入による変革のシーズン。11年目に挑む琢磨の活躍は?

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海外レース他 | インディカー2020年シーズンプレビュー:エアロスクリーン導入による変革のシーズン。11年目に挑む琢磨の活躍は?

 2020年のNTTインディカー・シリーズはコクピット部にドライバー保護デバイス“エアロスクリーン”を装着したマシンで争われる。

 F1で始まり、今では下位フォーミュラカーにまで普及しているドライバーの頭部を守る“ヘイロー”に強化ポリカーボネイト製のウインドウスクリーンを組み合わせたものがインディカーとレッドブル・アドバスド・テクノロジーズによって共同開発されたのだ。

 マシンは安全性向上と引き換えに約30kgの重量増。重心が高くなる上に空力も変化した。基本となるシャシーは同じままだが、マシンの特性は間違いなく変化する。参戦チーム、ドライバーは新スペックのマシンへの理解と対応をどれだけ早く行えるかが試される。

 このような状況では、エンジニアリング部門に厚みを持つビッグチームが優位になる。

ウインドウスクリーンに覆われたコクピット
ウインドウスクリーンに覆われたコクピット

エアロスクリーン導入で乗り込み方にも変化
エアロスクリーン導入で乗り込み方にも変化

■最強ラインアップに6台体制で挑むアンドレッティ

 チーム・ペンスキーはレギュラードライバー3台体制で変わらない。2017、2019年チャンピオンのジョセフ・ニューガーデン、2016年チャンピオンで2019年インディ500ウイナーのシモン・パジェノー、2014年チャンピオンで2018年インディ500ウィナーのウィル・パワーというラインアップは間違いなくシリーズ最強だ。

 今年も彼ら3人全員がチャンピオン争いに絡んでくるだろう。その上、オーストラリアのV8スーパーカー・シリーズ王者のスコット・マクローリンをこのオフシーズン中に2回テストし、第5戦GMRグランプリに出場させることを決定。サーキット・オブ・ジ・アメリカズでの合同テストにもマクローリンを参加させ、データ収集量を増やしていた。

カーナンバー1をつけて連覇に挑むジョセフ・ニューガーデン
カーナンバー1をつけて連覇に挑むジョセフ・ニューガーデン

 アンドレッティ・オートスポートは提携チームだったハーディング・スタインブレナー・レーシングをほぼ吸収。昨年ルーキーながら2勝を挙げたコルトン・ハータをチーム内に迎え入れ、シリーズ最多の5台を走らせる体制になった。

 その上、昨年までスポット参戦をしていたメイヤー・シャンク・レーシングとも提携し、ジャック・ハーベイを走らせるチームもファミリーに迎え、6台で集めたデータをフル活用して2012年以来となる王座、2017年以来となるインディ500優勝を目指す。

 今や彼らのエースとなっているのがアレクサンダー・ロッシ。元チャンピオンのライアン・ハンター-レイと急成長中のハータもチャンピオン争いを行う可能性がある。彼らの他にマルコ・アンドレッティ、ザック・ビーチが今年もステアリングを握る。

 アンドレッティ・オートスポートとともにホンダ・エンジンでチャンピオン争いをするのが、チップ・ガナッシ・レーシングだ。

 過去5回チャンピオンになっているスコット・ディクソンは今年もスピードと安定感を見せるとみて間違いない。昨シーズンのルーキー・オブ・ザ・イヤーのフェリックス・ローゼンクヴィストには初勝利が期待でき、シュミット・ピーターソン・モータースポーツから移籍した新加入の元F1ドライバー、マーカス・エリクソンも強力な体制を手に入れてパフォーマンスを上げてくるはずだ。

■参戦台数は増加。今年もルーキー当たり年に?

 シーズンのレース数は17で変わらない。危険なアクシデントが連続して起こった2.5マイル・オーバルのポコノはカレンダーから外れ、ショートオーバルのリッチモンドがカレンダー復帰を果たした。

 フルエントリー台数は昨シーズンに2台プラスされ、10チーム24台に増える。開幕戦は26台が出場の見込みなど、エントリー数は増加の傾向だ。

 インディカーは着々と成長をしている。エンジンはホンダが13台、シボレーが11台で、5月の第104回インディ500には規定のグリッド数=33を上回るエントリーが明らかになっている。ドラマチックなバンプアウト合戦が繰り広げられるだろう。

チーム・ゴウと共にインディカーに初挑戦するアレックス・パロウ
チーム・ゴウと共にインディカーに初挑戦するアレックス・パロウ

 昨年はルーキーの当たり年だったが、今年もインディ・ライツ・チャンピオンのオリバー・アスキュー(アロウ・マクラーレンSP)、インディ・ライツ2位のリナス・ビーケイ(エド・カーペンター・レーシング)、日本のスーパーフォーミュラからステップアップしたアレックス・パロウ(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・チーム・ゴウ)、元F1ドライバーのフェリペ・ナサール(カーリン)と期待の持てる若手が多く参戦する。

 昨年、まさかのインディ500予選落ちを喫した元F1チャンピオンのフェルナンド・アロンソは、3度目のインディ500挑戦を行う。

 彼を走らせるチームは、シュミット・ピーターソン・モータースポーツを吸収したマクラーレンSP。昨年のインディのみへの参戦プロジェクトだったマクラーレン・レーシングよりは良いと考えられる体制となる。

 世界三大レースの制覇=トリプルクラウンを目指すアロンソとしては、インディ500で強く、2017年に一緒に戦った実績もあるアンドレッティ・オートスポートからの出場を検討していたが、それは叶わなかった。

■フル参戦ドライバーでは最年長となった佐藤琢磨

 佐藤琢磨はインディカー11年目を戦う。今年も日本人ドライバーは彼ひとりだ。エントリーはレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングからで、2018年から3年連続となる。

 2017年にアンドレッティ・オートスポートからの出場でインディ500優勝を果たし、2018年にはレイホール・レターマン・ラニガンでポートランド戦優勝、2019年はバーバー・モータースポーツ・パークとゲートウェイのショートオバールで優勝と3シーズン続けて勝利をマーク。

「今年もチャンピオンシップコンテンダーとして戦うのが目標」と、意気込んでいる。目指すチャンピオンとなるためには少なくとも3勝はする必要がある。その上で、勝てないレースでも上位でのフィニッシュを重ねる。シーズンを通して安定感を高く保ち続ける力が求められる。

インディカー参戦11年目に挑む佐藤琢磨
インディカー参戦11年目に挑む佐藤琢磨

 しかし、2月にサーキット・オブ・ジ・アメリカズで行われた合同テストでは参加27人中の22番手。セブリングでのプライベートテストでも13台が走った中での12番手とオフの間のパフォーマンスは決して芳しくない。

 テストが2回だけしか行えず、しかも3日間のうちの1日半が雨と低気温に見舞われ、十分に走り込めなかった。

 レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングとしては計画より圧倒的に少ない実走データ量で開幕に臨まねばならなくなっている。

「昨年までの自分たちの走りとデータを見直し、弱点克服のために基礎的なセッティング研究を行っている」と琢磨は好タイムを出せなかった背景を説明した。

 このオフにレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングはチーム力の底上げを目標に風洞実験、7ポストリグ、シミュレーターを用いたテストを重ね、これまでとは違った新しいセッティングをトライしているのだ。

 それがまだデータ収集の段階で、コースコンディションを追いかけ、ラップタイムを削る作業に取り掛からなかったことが、後方の順位という結果に繋がった。多くの項目をテストした結果、マシンが速くなる感触は得られているようだ。

 開幕戦のセント・ピーターズバーグは、琢磨が得意とするコースで、ポールポジション獲得経験もある。第2戦バーミンガムは昨年ポール・トゥ・ウインを飾ったコースだ。テストでは目立てなかった琢磨だが、開幕からの2連戦で活躍するという期待度は高い。

 2019年シーズン終了後にインディカー・シリーズとインディアナポリス・モータースピードウェイはロジャー・ペンスキーがオーナーとなった。新体制となってそれぞれのレース、シリーズ、サーキットなど多くの面での改善や強化が進められていくことも期待される。

 コンペティティブなレースが期待される2020年のインディカー・シリーズ。いよいよ3月15日、セント・ピーターズバーグで幕を開ける。


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