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海外レース他 ニュース

投稿日: 2020.05.20 15:14
更新日: 2020.05.20 16:30

VLNニュル耐久シリーズ再開へ向け主催者が衛生・安全管理のプランを提出。ピット不使用の方向へ

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海外レース他 | VLNニュル耐久シリーズ再開へ向け主催者が衛生・安全管理のプランを提出。ピット不使用の方向へ

 依然として世界中に影響を及ぼしている新型コロナウイルス感染症。各自が感染拡大予防を念頭におきながら、コロナウイルスと“共存”する生活へとフェーズが移行しつつあるドイツでは、6週間以上にもわたるロックダウンが少しずつ緩和され、日常生活を取り戻しつつある。そんななか、ニュルブルクリンクで開催されているVLNニュルブルクリンク耐久シリーズの主催者が地区行政機関に対し、6月27日の開幕戦開催へ向けた衛生・安全管理のプランを提出し、その内容が注目を集めている。

 VLNは世界各国の自動車メーカーもテストに使用するニュルブルクリンクのグランプリコースと北コース(ノルドシュライフェ)を組み合わせたコースを舞台に争われるシリーズ戦。例年シーズン序盤は、ニュルブルクリンク24時間レースに向けたテスト等でエントリーがにぎわうが、2020年は24時間レースが9月に延期されており、6月のVLN開催を目指している。

 VLN事務局では、協議を重ねたうえで必要最低人数での参加や、衛生・安全管理面の徹底を厳守する旨はもちろんのこと、DMSBドイツモータースポーツ協会とDOSBドイツオリンピック連盟が推奨事項とする10のガイドラインを元にプランを作成し、地区行政機関へ提出したという。

 VLN VV GmbH&Co. KGのマネージングディレクターのクリスチャン・シュテファニは「この数週間、新型コロナウイルスの感染拡大防止策において、厳しい制限を受け入れる必要があり、これまでのところ予定されているレースを実施することができなかった。ファン、参加者、そして主催者が結束し、理解と譲歩策を承知したうえで再びレースの開催へ向けて協力しながら構築する必要がある」と、VLNに関わる全員の協力が不可欠なことを述べた。

 VLN主催者側が打ち出した新型コロナウイルスの感染拡大防止をしながらのVLN開催プランでは、グランプリコースすべての観客席とパドックの観客の立ち入りを禁止する一方、ノルドシュライフェにおいても駐車場と一般的なギャラリーポイントは、セキュリティスタッフによって閉鎖および監視されるというものだ。

 また、ニュルブルクリンク24時間レース前のVLNとあり、開幕戦から数多くのチームの参戦が予想されることから、各チームともにパドックに入場できる人数は最小限に制限され、車両ごとに作業に携われる人数もオフィシャルが決めた規定人数のみとなるほか、マスク着用が義務づけられる。書類提出には各チーム1名のみがオフィシャルへ出向くことが許可され、ドライバーズミーティング等はデジタルメディアを駆使して行われる。通常レース後に行われるメディアセンターでの記者会見は中止される。

 一方で、レースコントロールやオフィシャルの関係者もレースの安全対策に支障をきたさないギリギリの人数まで絞るほか、ノルドシュライフェに立つオフィシャルらもマスクの着用が義務となる。セキュリティや清掃員を増員して、安全や感染拡大防止の衛生面にも配慮する予定だという。

 また、最も“密”が問題視されるピットは、通常ならば最大6台の車両が入るとあり使用せず、58,000平方メートルのパドックをチームごとに個別のエリアを割り当てて、その場所で作業を行う。レーシングカーがフリープラクティスや予選・レース中に、コースから各チームの『オープンエアピット』へのピットインをする際のアクセスは、ピットロードを通り抜け、1コーナー寄り2番目のピット(32番ピット)から入り、パドックへ進入してチームテントへピットイン。ふたたびコースインをするには順路に従って1コーナー寄りピット(33番ピット)を抜けてGPコースへ入るという手順を踏むというものだ。なお、2002年に現在のピットビルが建設中の際にも、これに似た解決策でVLNを開催したこともあり、大きな混乱もなく行えるものと思われる。

 VLNは独自の安全・衛生管理対策案作成と並行して、すでに国立ボン大学病院の公衆衛生研究所に相談し、VLNが計画した対策の精査を依頼していた。同研究所のマルティン・エクスナー教授とユルゲン・ゲベル博士がニュルでの現地視察を行ったうえで、研究所は5月12日に専門家レポートを作成し「衛生面の安全対策の条件が厳守され、規定が満たされるのならば、公衆衛生医学の観点から保健当局との協議のうえで、開催に関しての基準は推奨できるだろう」との見解を出している。

 VLNの主催者側はアーヴァイラー地区行政に対して、地区管理者のユルゲン・ペーラー博士に、レース開催への認証に必要なすべての書類を先週提出した。「行政からの開催許可に期待している。それはレース主催者だけの問題ではなく、ニュルブルクリンク近辺の経済活動のほか、チーム、関連する多数の企業の財政状態に関わる」とVLNマネージングディレクターのシュテファニはコメントしているように、ドイツ国内のロックダウンからさまざまな業種が徐々に経済復興が行われるなかで、モータースポーツに関わる者のいち早い復興を必要としていることを強調する。

 予定している6月27日のVLN開幕戦が迫っているため、近日中に開催できるかどうか発表がなされる模様だ。ロックダウンからの緩和で、欧州各地のサーキットでは徐々にチームがテストを開始し、レースへの準備が再開されているものの、いくつかの国の国境通過にはまだ制限があるため、ドライバーやメカニックやエンジニア等が自由にテストに参加できないのも現実だ。6月16日からはドイツに面するオーストリア・フランス・スイス等複数国の出入国が緩和されるとあり、27日のレース参加に希望を持つチームやドライバーも多いのではないのだろうか。

新型コロナウイルスの影響にともなう対策案でのピットインのイメージ。ピットレーンを入り、1コーナー寄りのピットを通過しパドックに入る。
新型コロナウイルスの影響にともなう対策案でのピットインのイメージ。ピットレーンを入り、1コーナー寄りのピットを通過しパドックに入る。
ニュルブルクリンク24時間でのパドック。多くのチームがテントをもともと使用していた。
ニュルブルクリンク24時間でのパドック。多くのチームがテントをもともと使用していた。
ニュルブルクリンク24時間でのスバル/STIのピット。ニュルでは1ピット6台使用することから、密度が高かった。
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