2020年シーズンよりFIA-F2に昇格した角田裕毅。今年はカーリンからの参戦が決まっているが、新型コロナウイルスの影響により、マシンに乗れない期間が長く続いた。
ようやく決まった開幕戦を前に、シルバーストンでF1ドライバーとともにF3マシンを走らせるなどのトレーニングを積んだ角田だが、F1ドライバーの走りから何を学んだのだろうか。また、レッドブルの重鎮であるヘルムート・マルコとはどのような会話を交わしたのだろうか。
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──3月のバーレーンテスト以来、F2マシンには乗っていないんですよね?
角田裕毅(以下、角田):はい。規約でもそう決まっていて、まったく乗れませんでした。
──その間はずっとイギリスでしたよね。トレーニングの毎日でしたか?
角田:ええ。ロックダウンになって、トレーナーとも会えなくなった。それでネットを通じて一緒にトレーニングをしていました。
──ジムにも、当然通えなかった?
角田:そうなんです。幸いトレーナーが自宅に重りとかをどっさり置いて行ってくれたので、月、水、金、日は筋力トレーニングをみっちりやりました。残りの日は自転車で、持久力系を鍛えました。
──自粛中は、F3マシンでテストしていたのですね。
角田:はい、2回ほど。ランド・ノリスやカルロス・サインツJr.(ともにマクラーレン)と一緒に、シルバーストンで走りました。1回目がノリス、チームメイトのダルバラ、僕。2回目は1日で、ノリス、サインツJr.、僕でした。ふたりとはコンマ1秒の中で競い合えて、ここでもノリスには勝てました。でも吸収するものもすごく多かったです。2日間を通して、僕が最速でした。
──F1ドライバーはやっぱり凄いなと思ったところは?
角田:そうですねえ。特にサインツJr.ですけど、F3マシンにずいぶん乗っていなかったのに、すぐに速さを出してきた。最後はニュータイヤで、僕は1000分の1秒差で負けたんですけど、きっちりまとめてくるところはさすがだなと思いました。
──ドライビング自体で、次元が違うなと感じたりしましたか?
角田:たとえば小さなコーナー、シルバーストンでいえば3、4コーナーとかで、高い速度で入って行きながら、コーナリング中にスピードを殺さずにちゃんと立ち上がれるクルマの向きにできている。そこはすごく勉強になりました。
──そのF3を除くと、4カ月ぐらいレーシングカーに乗っていない。そんな経験は初めてだと思うのですが、この週末すぐに感覚が戻るだろうかという不安はありますか?
角田:それはないですね。カーリンがF3テストを合計3日間やってくれたことが大きいし、トレーニングもしっかり積み重ねてきて、それも自信になっています。まずはフリー走行から、思い切り走りたいと思っています。
──とはいえF2マシンでの走行距離は、絶対的に少ないですよね。
角田:不安というか、未知の部分があるとすれば、レースペースですかね。どれぐらいになるかまだわからないし、ピットストップなども新しい体験ですし、40周のレースも初めてで、何が起きるかわからない。エンジニアと、最大限の準備をして臨むつもりです。
──F2との一番の違いは?
角田:ブレーキと、クルマの向きの変わり方ですかね。ブレーキはカーボンですごくよく止まるし、温め方もすごく変わる。F3は走り始めにバランスを前に3クリックくらい振って、フロントをできるだけ温めるんですね。それがF2だと、アウトラップは逆にリヤに3クリック振って、リヤのカーボンを温めないと、ブレーキがちゃんと作動しない。それをやってから、前に3クリック戻して、フロントを温めるという手順です。
ドライビングでも、踏力を加えれば加えるほど止まる。18インチになってホイールが重くなった分、踏力も必要になる。そこは大きな違いですね。
エンジンパワーも、ターボが効いてくる感じが少しラグがあって、急にパワーが来る。アクセルをガンと踏んで、ラグをできるだけ減らす工夫が必要でした。その辺はフリー走行で、慣れ切りたい部分です。