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海外レース他 ニュース

投稿日: 2020.08.29 19:13
更新日: 2020.08.29 19:21

FIA-F2第7戦ベルギーで予選1-3獲得。松下信治が「消えていた自信」を取り戻した一戦

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海外レース他 | FIA-F2第7戦ベルギーで予選1-3獲得。松下信治が「消えていた自信」を取り戻した一戦

 ベルギー、スパ・フランコルシャンで行われているFIA-F2第7戦。予選で角田裕毅(カーリン)、松下信治(MPモータースポーツ)が1番手と3番手を獲得し、今週末のレースでも日本人の活躍が期待される。そんなふたりはここまで行われてきた6戦で確実に進化と成長を見せてきた。

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 開幕戦フリー走行で、いきなりトップタイム。第2戦でポールポジション獲得、さらに2位表彰台。第5戦レース2で初優勝。今季F2に上がった角田裕毅は、持ち前の速さをしっかり結果に反映させつつある。そのあいだには、トラブルや自らのミスで何度も口惜しい思いもしてきた。しかし、それらのマイナス要素もすべて糧にして成長してきた印象だ。

 年間ランキングも第3戦終了時点では暫定12位だったのが、シルバーストンの連戦で順位を上げてきた。そして第6戦で連続4位入賞を果たしたことで、ついにスーパーライセンス取得に必要な選手権4位につけた。

 それでも角田本人は「僕の目標はあくまで、チャンピオンになることです。シャルル・ルクレールにしてもジョージ・ラッセルにしても、F1で活躍しているドライバーはみんなF2初年度で結果を出してますから」と、頼もしいことを言う。これからどんな進化を遂げて行くのか、楽しみにフォローしたい。

 そしてもうひとりの日本人F2ドライバー松下信治は、角田とはある意味真逆のキャリアを歩んでいる。なにしろ1年でF2を卒業しようとしている角田に対し、松下は今年で5年目だ。

 GP2参戦初年度で優勝するなど、松下は最初からたしかな速さを見せていた。だが、コンスタントに勝ち続けるところまでには至らず、2018年には一度日本に帰国。スーパーフォーミュラに参戦した。しかし、F1への思いを断ち切れず、昨季F2に復帰。今年はジュニアフォーミュラ時代から続いてきたホンダのサポートを返上すると、自力でスポンサーを集めて、F1への登竜門への再挑戦を決めた。

 今年所属することになったのはMPモータースポーツ。このチームは実績からすれば中の下あたりの位置づけだが、それでも松下本人からすれば、自らが引っ張ってチーム力を底上げするという強い自信も持っていた。チームもベテランの松下に、期待するところは大きかった。

 ところが開幕早々から、予想外の苦戦に見舞われる。特に予選は驚くほど遅くなっていた。昨年のFIA-F3で選手権16位と、さしたる実績のないチームメイトのフェリペ・ドルゴビッチ相手に一度も予選で勝てない。それどころか1秒近い大差をつけられることも珍しくなかった。

 第6戦バルセロナも松下は予選18番手。4番手のチームメイトから、0.874秒も遅かった。超接近戦を繰り広げるF2で、同じクルマを走らせる僚友とのこれだけの差には、驚きを通り越して唖然とするほかない。「僕の運転が、いまのF2に合ってないから」と、松下本人は言う。

「車体やタイヤ重量が重くなった今年のクルマが、アグレッシブに攻める僕の運転に耐えられない」

 松下は、それほど器用なドライバーではない。何をすべきか、どう変えるべきか充分理解していても、つい速かったころの自分のイメージに従ってしまう。

「チームメイトのドライビングスタイルに合わせようとすると自分本来の良さは消えるし、簡単に合わせることもできない。どっちつかずの状態になってました。予選になるとどうしても、奥までブレーキングを行こうと思ってしまう」

 予選で下位に沈み、ノーポイントのレースが続くうちに「自分に対する自信もすっかり消えていった」という。こうして第6戦も18番グリッドからのスタートとなった。普通に考えれば、10位入賞もおぼつかない位置だ。しかしハードを履いた松下は、ライバルたちが早々にピットインして行くなか、着実に順位を上げて行った。

 8周目には早くも10番手、10周目6番手、22周目には5番手。さすがにタイヤに限界が近づいた25周目、セーフティカー(SC)が導入された。松下は迷わずピットに向かい、3番手を確保する。SC明けにはペースに優るニキータ・マゼピンが猛然と迫るが、落ち着いて抑え切った。

 30周目、松下はポイントリーダーのカラム・アイロットに高速のターン3で並ぶと、ターン4への進入でパス。さらに角田をもターン1で難なく抜いて、ついに首位に立った。じつに17台抜きを達成して、松下は2019年モンツァ以来となるF2優勝を果たした。

 「予想してた自分の位置とは、真逆にいる。それが本当に厳しかった。トップ10とか、そのレベルではなかったですからね。でも、レースペースの良さは支えになってたし、投げ出さなくて良かったです」

 角田と松下が上位を争い合うレースを、今後も繰り返し見たいと心底から思う。

FIA-F2第6戦スペインで、逆転勝利を果たした松下信治(カーリン)
FIA-F2第6戦スペインで、逆転勝利を果たした松下信治(カーリン)

FIA-F2第7戦ベルギーでポールポジションを獲得した角田裕毅(カーリン)
FIA-F2第7戦ベルギーでポールポジションを獲得した角田裕毅(カーリン)

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