FIA国際自動車連盟は、新たに創設を目指す『電動GT選手権』の技術概要を4月21日付けで発表し、ピットストップ中の“高速充電”と現行GT3規定との“互換性要素”を含む、技術的詳細をアナウンスした。
この新たな電動GT車両は、現在のICE(内燃機関)を搭載するGT3規定モデルと同等のパフォーマンス・ウインドウを狙った上で、電動モーターの特性により加速が向上し、予選時のラップタイムでGT3を上回る性能と速さを目指すという。
レギュレーションの基本理念は、現在の市販ラインアップに電気自動車を展開する各メーカーやブランドに対し、モータースポーツを通じて電動モビリティの関連技術開発を行うプラットフォームの提供を目的としている。
その対象には電動パワートレーンの供給を受けるOEMブランドや、内燃エンジンでのレース経験がないEV専門の開発者や企業群も含まれている。
FIAがリリースしたステートメントによれば、すでにグローバルでGT3規定モデルを展開するマニュファクチャラーは、既存レースカーの「アーキテクチャーと特定の設計要素」を活用し、その骨格とベースシャシーを利用して「電動モデルに変換」できる、コンバート案の展開も見込まれているという。
この新規定に則したすべての車両は、最大出力430kW(約577PS)、最低重量は1490〜1530kgの範囲に収められる。
現在、WEC世界耐久選手権向けにプジョーのLMH(Le Mans Hypercar/ル・マン・ハイパーカー)開発にも携わるフランスのSaft(サフト)社は、独自のバッテリーレイアウトが構築可能なリチウムイオン・セルを供給。充放電のピーク値は700kWに設定され、レースでは同値での高速充電にも対応。ピットストップ時には最大で60%程度のチャージが計画されている。
この電動GT車両の技術規則は、2020年12月16日のWMSC(World Motor Sport Council/世界モータースポーツ評議会)で承認されていたものの、当時はその技術的詳細が未公開のままとなっていた。
生産車との関連性がこの規則の公式なアピールポイントにもなっており、各メーカーはさまざまなパワートレインのタイプから自由に選択することが可能に。後輪駆動と4輪駆動の両方のレイアウトが許可されており、デュアルまたはクアッドモーターのいずれの方式も認められる。
その上で、各ホイールのトルクを自動的かつ独立して調整し「最高の」ハンドリング特性を実現するベクタリング的な動的車両制御も、テクニカルルールにより許可されている。