カレンダー改訂を経て6月12~13日に開幕を迎えた2021年のETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップは、週末のハンガロリンクで1ヒート減の3レースが争われ、土曜オープニングは今季から新型MANを投入したSLトラックスポーツ30のサッシャ・レンツが逆転で勝利。そして日曜の予選と2ヒートは、地元の英雄ノルベルト・キス(レベス・レーシング/MAN)がポールポジションからの連勝を飾り、母国ファンの前で華麗な“ハットトリック”を決めている。
当初予定より約1カ月遅れ、開催地をイタリア・ミサノからハンガリーに変更しての幕開けとなった2021年ETRCは、首都ブダペスト近郊のテクニカルコースに全15台のトレーラーヘッドたちが集結した。
その走り出しから印象的なパフォーマンスを披露したのが、地元で絶大な人気を誇るキスのトラックで、レベス・レーシングの紅いMANは、公式練習から予選セッションのすべてで最速タイムを記録。フロントロウ2番手に並んだレンツに対し、1.033秒差の圧倒的優位を持ってレース1のポールポジションを射止めた。
2列目3番手にはシリーズ6冠を誇る“帝王”ヨッヘン・ハーン(チーム・ハーン・レーシング/IVECO)と、2017年王者のアダム・ラッコ(バギラー・レーシング/FREIGHTLINER)が4番手並び、その後方5番手にはシュテフィ・ハルム(チーム・シュバーベントラック/IVECO)が続く実力派揃いの上位グリッドとなった。
土曜午後14時を前に始まった今季最初のレースは、ポールシッターのキスが盤石のスタートを決め、レンツ以下の後続を徐々に引き離しに掛かる。しかし、数周を回ったところで彼のMANは突如ペースダウンし、レンツやハーンに次々とパスされる事態に。
直後、アンダーフレームから煙を上げたレベス・レーシングのMANは、ターボパイプの故障によりブースト圧が失われてそのままピットレーンに。ハンガリーのヒーローは、ファンの期待とは裏腹にここでレースを終えてしまう。
代わって首位に立ったレンツの背後では、ハーンとラッコが激しい攻防を繰り広げ、幾度もコンタクトを繰り返しながらのブレーキング競争を展開する。しかし蓄積されたダメージにより、ラッコのFREIGHTLINER(フレイトライナー)は右サイドのフェアリングが剥がれた状態となる。
このバランス変化が祟ったか、左コーナーのターン2に向けサイド・バイ・サイドを繰り広げた2台は、続く右コーナーからストレートでハーンが先行して勝負アリ。カウルが脱落したまま走り続けたラッコは3番目のポディウムを死守し、先頭のレンツは10秒近いマージンを稼ぎ出し開幕勝利を挙げている。
土曜午後のレース2キャンセルにより、明けた日曜は午前の予選から勝負が再開。前日は「失意のトラブル」で活躍の場を奪われたキスがここで奮起し、ふたたびレンツを2番手に押し退けて連続ポールを確保した。