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海外レース他 ニュース

投稿日: 2021.09.02 08:00
更新日: 2021.09.01 21:10

パロウがランキングトップ陥落。残り3戦となった2021年インディカー、タイトル争いの行方

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海外レース他 | パロウがランキングトップ陥落。残り3戦となった2021年インディカー、タイトル争いの行方

 2021年のインディカー・シリーズは、アレックス・パロウがインディカーでのキャリア2年目、チップ・ガナッシ・レーシング(CGR)加入初年度にタイトルを獲得する可能性が高まっていたが、シリーズ終盤を迎えて風向きが変わった。

 第12戦インディアナポリス(ロードコース)でエンジントラブルに遭った彼は、第13戦ゲートウェイ(オーバル)ではリナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング)が起点の多重クラッシュの犠牲者となり、2戦連続のリタイアを喫してしまったからだ。

 ポイントトップの座はゲートウェイで2位のパト・オワード(アロウ・マクラレーンSP)の手に渡った。ただ、オワードのリードは10ポイント。パロウに逆転の目は充分にある。

 ゲートウェイで優勝したのはジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)で、彼にも逆転タイトルの可能性が出てきた。彼はチャンピオン争いから脱落しかけていたのだが、残り3戦でトップとのポイント差が22ならチャンスはある。

今季2勝目を挙げたジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)
今季2勝目を挙げたジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)

 タイトル争いの流れは、ゲートウェイで弾みをつけたニューガーデンとオワードへシフトしたようにも見えているが、どちらも抜け出た存在ではない。こういう状況で強みを発揮するのがタイトル争いでの豊富な経験。それを持っているのがスコット・ディクソン(CGR)だ。

 今季はまだ1勝で、ゲートウェイではパロウと同じくヴィーケイにヒットされてリタイア。だが、過去に6度も戴冠している彼はポイントスタンディングでしぶとく4位につけており、自分にも大きなチャンスがあることは分かっている。同5位のマーカス・エリクソン(CGR)、同6位のコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート with カーブ・アガジャニアン)も計算上では可能性を残す。

 エリクソンは今季、インディ500以降に2勝。安定感を増してきており、勝ち星も重ねている。シーズン3勝目一番乗りとなれば、初タイトルに向けて一気に加速することになるかもしれない。また、現実的にはチャンピオン候補外だが、ハータには残り3レースでシーズン3勝目、4勝目をマークするポテンシャルがある。

 今季終盤戦は西海岸での3連戦。ポートランド、ラグナセカ、ロングビーチだ。常設ロードコース2戦+ストリート1戦で、最終戦のダブルポイント制は採用されない。面白いことに、ランキング上位4人のなかに、この3つのコースで突出した成績を残している者はいない。ポートランドとラグナセカでは誰も勝ったことがなく、ロングビーチもディクソンが2015年に1回勝っているだけだ。

 それにしても、パロウは悪い流れに陥ってしまった。それだけは確かかもしれない。彼は規定数のエンジンをすでに使い切っており、エンジンのトラブルが起こるたびに6グリッド降格のペナルティを受けなくてはならない。ロード&ストリートでの6グリッド降格は結構なハンデだ。さらに、彼にはこれらのコースでのレース経験がない。デビューイヤーだった昨年、これらの3戦はすべてキャンセルされてしまったからだ。

 5戦を残してランキングトップだったときは「勝たなくてもいい。表彰台に上り続ければチャンピオン」と話していたが、ゲートウェイでは「勝ちにいく」とコメントが変わっていた。彼にはまだポールポジション獲得経験がない。チャンピオンになるためには、どこかで決定的なスピードを見せつけて勝つこと、勝利に対する強いこだわりを持つことが必要とも見えている。

 オワードはゲートウェイの前に、ロードアメリカ(常設ロード)、ミド・オハイオ(同)、ナッシュビル(ストリート)で苦戦を強いられていた。西海岸3連戦でのパフォーマンスがどうなるかは読みづらい。ただ、「ポートランドでのテストでセッティング向上のヒントをつかんだ」とも話しており、8月のインディアナポリスのロード戦ではまずまずの走りを見せていた。

 彼とチームの克服すべき課題は、コースによって良い悪いがハッキリと出るのをなくすこと。若いドライバーにはタイトル争いという重圧が影響を及ぼす可能性もある。彼のチームにも初タイトル獲得という重責が圧し掛かるため、クルーやストラテジストなどチーム側が浮き足立つ事態も考えられなくはない。

パト・オワード(アロウ・マクラーレンSP)
パト・オワード(アロウ・マクラーレンSP)

 こうして見ていくと、ニューガーデンはいいタイミングで勝ったと言えそうだ。誰もが決め手を欠く状況では、チーム・ペンスキーの実力と実績がタイトル争いで大きな後ろ盾になる。シーズンが終盤に入り、4台体制がようやく機能し始めてきてもいる。ただ、チームがレベルアップするとチームメイトたちも速くなり、彼らを打ち負かしたうえで勝たなければいけない。そこがペンスキーで走る難しさだ。ニューガーデンもエンジンの規定使用数を超えている。ここはマイナス要因だ。

 アタマひとつ抜け出た存在がおらず、残り3戦でポイント上位4人に優勝がないということもありえる。とくにウィル・パワー(チーム・ペンスキー)とハータはシーズン2勝目を飾りそうな雰囲気だ。ロマン・グロージャン(デイル・コイン・レーシング with RWR)、ジャック・ハーベイ(メイヤー・シャンク・レーシング)、スコット・マクロクリン(チーム・ペンスキー)といった、初勝利が近いドライバーもいる。さらには、今季未勝利の佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)もポートランドとロングビーチでの優勝経験があり、その再現を狙っている。

 そんな状況だけに、ディクソンとニューガーデンのどのレースでも大きく沈む心配の少ない安定感、そして彼らの後ろにいる強力なチーム体制が大きな武器になってくるのだ。ディクソンが獲れば、AJフォイトに並ぶ歴代タイの7度目のタイトル。ニューガーデンが獲れば、3度目のチャンピオンとなる。

※この記事は本誌『オートスポーツ』No.1559(2021年9月3日発売号)からの転載です。

スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)
スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)
auto sport No.1559の詳細はこちら
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