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海外レース他 ニュース

投稿日: 2021.09.17 11:34
更新日: 2021.09.17 11:39

DTMベルガー代表がメディアの質問に回答「新DTMは非常に高い評価をもらっている」

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海外レース他 | DTMベルガー代表がメディアの質問に回答「新DTMは非常に高い評価をもらっている」

 2021年からGT3カーを使用し、大きく様変わりをみせたDTMドイツ・ツーリングカー選手権。シリーズを主宰するITR GmbH代表のゲルハルト・ベルガーが、シーズン後半戦に入ったレッドブルリンクで、ドイツ語圏の主要メディア関係者を招待し、2022年のカレンダーやDTMの現在と今後についての意見交換会を行った。ドイツ語圏の出身メディア関係者ばかりということで、ベルガーもふだんよりもかなり強いチロルなまりの方言で話し、時には白熱した議論が交わされる場面もあったものの、和気藹々とした雰囲気に包まれ意見交換が行われた。質疑応答からは、将来のDTMの具体像も見え隠れしている。

■コロナ禍から抜けつつある2022年に向けて

──例年にない早さで2022年のカレンダーが発表されたが、その意図は?
ゲルハルト・ベルガー(以下ベルガー):
昨年や今年の前半に比べて、やっと欧州内のコロナ禍は落ち着きつつあるので、チームやドライバーにとっては次年度の計画を立てる上でカレンダーの発表が早ければ早いほど、準備に早く着手できるということも主催者側としてはよく理解できるので、その部分を考慮したことは大きい。また、チケットを早い段階で用意することで、クリスマス商戦にも乗れると考えている。

──今季の前半はまだまったく先が見えない状況だっただけに、今までになく早い段階でカレンダーを組むことは難しかったのか?
ベルガー:
昨年はシーズン開幕時に新型コロナウイルスの感染が広がったことで、いったいどんな状況になっているのかまったく分からない状態でカレンダーを組む必要があったために、2022年は可能な限りシーズン開幕を遅くするように考慮した。結果的には当初予定していたロシアをキャンセル、そしてノリスリンクを延期にしなければならなかったが、結果的にはこの決断は正しかったと思う。欧州でのワクチン接種率の普及により感染者数が減少して安定しることもあり、今季は6月ごろから徐々に例年に近い運営ができるようになった。そのため、思い切って来年のカレンダーを早くに発表する事にした。

──すでに発表された来季のカレンダーは、今までよりもキャラクター豊かになったが。
ベルガー:
昨年ひさびさにスパ・フランコルシャンに戻り、その後サーキット側とも良い話し合いができたこともあり、2022年に再びシリーズに加えることになった。ポルティマオが組み込まれたのは、今後少しずつ国際化を試みたいと思っていたからだ。また、今年ホッケンハイムで行われたプレシーズンテストが降雪中止になるようなこともあったので、温暖で安定した気候のポルトガルならば、開幕前のテストと開幕戦をうまく組み合わられるのではとも考えている。ポルティマオのサーキットの代表取締役からの誘致のプレゼンテーションも非常に良かったことも、開催を決めた理由のひとつだ。
 またレッドブルリンクもひさびさに復活したが、サーキットやその周辺の地域経済、そしてITRにも収益が生まれるようにすることも大切なポイントであり、特にコロナ禍ですべてのサーキットやその地域、ITRも経済的に苦しい状態が続いたので、両者がタッグを組んで収益を見込めるようにしなければならない。結果的には両者がウイン・ウインの結果に繋がり、来年の開催に向けて良い話し合いができた。

──カレンダーの中で2戦がTBAとなっているが、おおよその目途は立っているのか?
ベルガー:
基本的にはイタリアになるだろう。イタリアの2〜3のサーキットが候補にあり、今年に続きモンツァは最有力候補だが、フェラーリと話し合いをしている最中で、彼らの意向や希望、そしてどこのサーキットで開催した場合に最も収益をもたらされるかを考慮しなければならない。私のいちばんの希望としてはモータースポーツ大国であるイギリスを組み込みたいところだが、現時点ではコロナ禍のイギリスとEU間の規制などで、まだ実現には早いと感じている。

──GT3での新DTMに関しては、我々メディアがチームやドライバーに聞く限りでは良い評価となっているが、実際にオーガナイザーであるあなたが受ける評価はどんなものなのか?
ベルガー:
マシンが変わっただけで、基本的にレースフォーマットはクラス1の時と変わりなく開催できており、ありがたいことに非常に高い評価をもらっている。しかし、先程にも述べたように、コロナ禍による影響が最も大きく、どうしようもなかったのだが、今年のDTMに参戦を考えていたチームからは『なぜもっと早くカレンダーを発表してくれなかったのだ』という意見も聞かれた。特にいまはコロナの影響を受けてスポンサーを見つけることが非常に難しいご時世とあり、そのような意見を真摯に受けて、2022年のカレンダーはかなり早めに発表し、チームやドライバーが来年の計画を練られるように考慮した。

DTMドイツ・ツーリングカー選手権レッドブルリンク戦の様子。ピットウォークも復活した。
DTMドイツ・ツーリングカー選手権レッドブルリンク戦の様子。ピットウォークも復活した。

■2021年のレースについて。BoPはなぜ公開しない?

──2022年はさらに参戦するメーカーが増えることを期待しているが。
ベルガー:
特にポルシェやアストンマーティンが加わってくれることを願っている。最終戦のノリスリンクへのゲスト参戦や来年の参戦を考えているという問い合わせがいくつか入っており、私自身もチームやドライバーらと直接話し合う機会があるので、今後の展開を期待している。

──DTMは以前から激しいバトルが見どころでもあり、プロ同士の激しいバトルを楽しみにしているファンも多くいる。しかし、ニュルブルクリンク戦では少々激し過ぎたのでは? と異議を唱えたドライバーやチームもいたが、それに関しての意見は?
ベルガー:
トッププロである限り、誰もが自分こそがトップになる、チャンピオンを獲ってやるという強い思いでレースに参戦しているはずで、リミットまで攻める。そうでなければプロとして出る意味はない。以前のDTMでも赤旗で中断せざるを得なかった激しいレースはいくつもあったし、ニュルだけが批判を集中的に浴びるような酷いレースだったとは思わない。フェアではないレースマナーにはペナルティが科されるべきであるし、それを判断するのは公平な立場でジャッジするレースコントロールだ。そのジャッジの結果に、我々主催者側がレースコントロールに口を挟むべきではないと考えている。ライバルを危険な目に遭わせるドライブは決して行ってはいけないが、勝つためには誰もがリミットまで攻めながらオーバーテイクを試みる中では、多少のリスクは念頭に置いており、それを避ける努力と機転を利かせるのもプロの力量のひとつではないだろうか。もちろん、防ぎようがない状況があることは承知している。

──クラス1の頃には存在しなかったBoP(性能調整)がGT3カーでは不可欠だ。ADAC GTマスターズやNLSニュルブルクリンク耐久シリーズ、ニュル24時間、SRO主催のレース等ではBoPを公開しているが、ITRではなぜBoPを公表しないのか?
ベルガー:
性能調整する数値は、あくまで自動車メーカーが提出するテクニカルデータの数値と主催者の技術委員会が見るべきであり、必ずしもメーカーは車両データをすべてオープンにすることを望んでいない。BoPに関するディスカッションはあくまで内輪で行うべきであり、レースを楽しみにしてサーキットに足を運んでくれるファンたちが、内輪揉めの状態をわざわざ知る必要はないと思う。そもそもGT3カーには大きな秘密など隠されてはいない。しかし、ドライバーやチームは負けた時に限って必ず『BoPが不公平だ、不適切だ』と文句を言うが、勝った時は何も言わないのが常だ。各ラウンドの前には、かなりの時間を要してBoPに対してディスカッションしているのは事実だが、果たしてファンはそんな内輪のゴタゴタを考慮しながらレースを観たいだろうか?
 レースウイークにたった3セットのニュータイヤしか使用できないDTMでは、BoPで揉めるよりも実際にはさらに多くの項目において戦略をかなり綿密に立てなければならい上、ドライバー交代のないレースではドライバー自身が自分のレースをマネージメントしながら走る必要があるだけに、必ずしもBoPだけが勝ち負けを左右しているわけではないことを自分たちがいちばん良く知っているはずだ。GT3カーはメーカーによって特色がはっきりと分かれるので、サーキットによっても得意不得意なレイアウトは明確にある。それを理解してのレースマネージメント力が必要ということだ。

DTMニュルブルクリンク戦には7車種が登場した。
DTMニュルブルクリンク戦には7車種が登場した。

■DTMのEV化と、目指すサステナビリティ

──あなたがITRの代表に就任してから、F1関係者が人事に多く加わった。また、ドライバーラインアップでも、ティモ・グロック、昨年はロバート・クビサが参戦し、今季はアレックス・アルボンやゲスト参戦のクリスチャン・クリエン、今年は叶わなかったがジェンソン・バトンという名が挙がった。また、あなたはF1を訪れた際にはDTMのマスクをしていたり、セバスチャン・ベッテルやニコ・ヒュルケンベルク、マックス・フェルスタッペン等、多くのドライバーにDTMへの参戦を誘っているが、その意図は?
ベルガー:
いま輝いているF1ドライバーにも、いつか必ずマシンを降りなければならない時がくる。しかし、年齢的にはレーシングドライバーを隠居するような歳ではない。稼いだお金で優雅に暮らす者、チームオーナーになる者、テレビコメンテーターになる者……。F1を降りた後の生活は人それぞれだ。だが、セカンドキャリアを考える上で、条件が合えば走り続けたいと思うドライバーは、実際にフォーミュラEやル・マンに挑戦する。従ってツーリングカーもその選択肢に入れても良いのではないかと思っている。F1ドライバーにとって『ハコ車』をドライブし、勝つことは必ずしも容易ではない。それもまたファンがレースを楽しむポイントのひとつになっているのではないだろうか。

──それではDTMの今後のドライバーラインアップは元F1ドライバーが中心になっていくのか?
ベルガー:
若手とベテラン、元F1ドライバーのミックスは、双方に刺激を与える良いミックスだと思っている。決して“F1定年退職者”ばかりのレースにするつもりはないよ(笑)。現に昨年までクラス1をドライブしていたトップドライバーが強い走りみせるかたわら、ケルビン&シェルドンのファン・デル・リンデ兄弟、リアム・ローソン、アルボン等、若手の活躍はとても目覚ましく、若手はこのシーズンだけでもかなりの成長をみせている。ローソンはF2と並行をしながらの参戦だが、DTMで走ったことはF2でも活かされているし、その反対も同様だ。私の予想では3~4年後には彼はF1へステップアップするのではないかと期待している。

──現在シェフラーによって開発中のEVでのDTMカーだが、予定どおり2023年に始動となるのか?
ベルガー:
2023年始動予定でITR側でも準備しているが、開発の進行状況により2024年にずれ込む可能性はある。ただ基本的には2023年を目指している。たとえEVカーになったとしても大切なのは、ファンを失望させてはいけないということだ。マシンがEVになろうと、本来のモータースポーツファンが期待する迫力あるレース作りをしなければならない。すでにフォーミュラEがあり、将来はGT3もEVになるだろう。そして、2023年に始動予定のDTMと、他にもさまざまなEVシリーズが誕生するだろう。ファンはとにかく一度それらを実際に見てみて、その中でお気に入りを探してくれればいいと思う。
 このまま自動車業界がさらにEV化へ進み、それと並行してほぼ同時進行でモータースポーツもEVやハイブリッドへ進まざるを得ないとすれば、2025~2027年ごろはモータースポーツ界にとっては大きな分岐点になるだろうと考えている。
 また、いま世界中で話題に上がっている“サステナビリティ”やEV化にともなう“ハイテクノロジー化”という部分でも、いったいDTMはどうするんだ? ということはファンにとっては興味のひとつになるだろう。それらの点においても理解と支持を得られるように、現在ITRではEVツーリングカーの開発を進めているところだ。

DTMドイツ・ツーリングカー選手権を運営するITR e.Vのゲルハルト・ベルガー代表
DTMドイツ・ツーリングカー選手権を運営するITR e.Vのゲルハルト・ベルガー代表
レッドブルリンクでテストを行うDTMエレクトリック
レッドブルリンクでテストを行うDTMエレクトリック


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