NTTインディカー・シリーズは早くも最終戦。西海岸のロングビーチで全16戦のフィナーレを迎える。昨年はコロナの影響でキャンセルされ、2年ぶりの開催となる。
ロングビーチは佐藤琢磨にとっても思い出の場所。2013年に日本人として初めてインディカーで勝利を挙げた場所でもある。それからすでに8年も経ったのが感慨深いが、今季の総決算として少しでも良い結果を導き出したいところだ。
だが、このロングビーチでも、今年の負のスパイラルから抜け出すことはできなかった。予選までの不調を決勝のレース展開で挽回するという流れは変わらず、予選で手に入れたグリッド順は16番手だった。予選グループでは8番手となり、今シーズンはついにQ1を突破できないという結果となってしまったのだ。
「アンドレッティ・オートスポーツやチップ・ガナッシとかのセッティングを参考にしたり、あらゆる手を尽くしてますけど、真似のセッティングはあくまで真似してでしかないです」
「完全に理解をしてないと意味はないですよね。それだけチームが苦しんでることだと思います」と琢磨が言うように、16番手はレイホール・レターマン・ラニガンのチームの中で最上位。グラハム・レイホールは19番手、オリバー・アスキューは最後尾28番手だ。
ここまで来たら、もう後はいつものようにレースで挽回するより他にない。グリーンフラッグと共に、スタートが切られ、今シーズン最後のレースが始まると、早速最終コーナーのヘアピンでパト・オワード(アロウ・マクラーレンSP)がエド・ジョーンズ(デイル・コイン)にプッシュされるという波乱で始まった。
その間隙を突いて琢磨は11番手まで浮上、そしてイエローコーションとなった。グリーンフラッグで再開となると、すぐに10番手にポジションを上げてきた。
デジャヴなのか? 先々週のポートランドでも、先週のラグナセカでも、見てきたような光景だ。琢磨はブラックタイヤの利と燃料をうまく使ってステイアウトする時間を長く保ち、26周目までに3番手を維持した。
3度目のイエローコーションでピットに入り17番手から再度追い上げモードに。56周目にピットに入る直前にも4番手まで再浮上する。
2度目のピットの後は10番手となり、チームメイトのグラハムがピットに入ると65周目に9番手に上がる。
ほぼ全車がピットに入ると順位が膠着し、琢磨はその集団から抜け出ることはできなくなった。後ろからペンスキーのウィル・パワーがプッシュ・トゥ・パスを使って追い上げてくるが、自らもうプッシュ・トゥ・パスで応戦して順位を守った。
85周目のチェッカーを、そのまま9位で受け今季7回のトップ10チェッカーで、2021年のレースを終えた琢磨。
マシンがピットボックスに戻って来るとマシンを降り、ヘルメットを被ったままメカニックのひとりひとりと抱き合って、今シーズンの苦労をねぎらい、最後にはエンジニアのエド・ジョーンズと抱き合った。
「今年は苦しいシーズンでした。インディに来てから、表彰台もポールポジションもないなんて、いつ以来なんだろう? なかなかスピードが見つからない時でもチームはサポートしてくれたし、レースは諦めずに走り続けるしかなかったですね」
「今日も今年らしいレースだったと言うか、9位でも決して満足ではないですけど、ちゃんと走り切れたのは良かったと思います……」
琢磨はこのレースで7ポジションのアップをし、インディカーが定める「TAGホイヤー Don’t Crack Under Pressure」アワードでタイトルを獲得した。これはシーズンを通して最もレース中にポジションを上げたドライバーに贈られるものである。
タフなシーズンを終えた琢磨の顔は走り切ったようにも、安堵したようにも見えた。
このレースは琢磨にとって、インディカー参戦199戦目。2022年の開幕戦で出場200戦目を迎えることになるが、今日現在、琢磨から来季の発表はなかった。