開催地の紆余曲折を経て、2021年シーズンフィナーレを飾るWTCR世界ツーリングカー・カップ第8戦が、11月27~28日にロシアのソチ・オートドロームで開催され、悪天候に翻弄された週末はホンダ勢が急遽の体調不良やクラッシュにより撤退するなど波乱続出。レース自体も荒れた展開となるなか、直前のBoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)改訂で競争力を増した今季の欧州選手権王者ミケル・アズコナ、元世界王者ロブ・ハフ(クプラ・レオン・コンペティションTCR/ゼングー・モータースポーツ・サービスKFT)のクプラ艦隊が連勝。しかしレース1を6位でフィニッシュしたディフェンディングチャンピオンのヤン・エルラシェール(リンク&コー03 TCR/シアン・レーシング・リンク&コー)が防衛を決め、2年連続の王者に輝いている。
前戦イタリアの週末を前に現役引退を表明した“鉄人”ガブリエル・タルキーニ(ヒュンダイ・エラントラN TCR/BRCヒュンダイN・ルクオイル・スクアドラ・コルセ)のラストレース、そして地元ロシア発のマニュファクチャラー『ラーダ』ブランドで長年ツーリングカー・シリーズを戦っているラーダ・スポーツ・ロスネフチのワイルドカード参戦など話題が盛り沢山となった2021年WTCR最終戦は、幾度ものカレンダー変更を経たシーズンを象徴する混沌とした展開となった。
最初のセッションとなったFP1では、前回のイタリア同様に参戦全モデル中で最軽量の第2世代アウディRS3 LMSをドライブするジル・マグナス(アウディRS3 LMS/コムトゥユー・チーム・アウディスポーツ)最速で幕を開けたが、続くウエットのFP2では王者エルラシェールが逆襲し、タイトル防衛への意欲を見せる。
これでリンク&コー03 TCRが「遅くはない」ことを証明したシアン・レーシングは、予選で“チャンピオンの叔父”でもあるイバン・ミューラー(リンク&コー03 TCR/シアン・レーシング・リンク&コー)がポールポジションを獲得。フロントロウ2番手には40kgもの重量削減を受けたアズコナのクプラ・レオン・コンペティションTCRが続いた。
その一方、同じく20kgの削減措置を受けたFK8型ホンダ・シビック・タイプR TCRだが、ティアゴ・モンテイロが練習走行を前に健康状態悪化を理由に走行をキャンセル。チームは「ティアゴは練習前に気分が悪くなり、サーキットメディカルセンターを訪れた後、細菌性胸部感染症の治療を受けるために病院に移送されました。彼は元気です」とのリリースを出し、オールインクルーシブ・ミュニッヒ・モータースポーツとしては軽量化なったアドバンテージを活かすことなく1台を失うこととなった。
日曜現地12時15分開始のレース1を前に、ソチの天候は回復を見せることなく荒れ続け、大雨によるヘビーウエットコンディションと化したトラック上は、グリップばかりか視界まで奪う厳しい条件に。