長いシーズンオフを経て、NLSニュルブルクリンク耐久シリーズがいよいよ開幕を迎えた。開幕戦の1週間前に行われた公式テストでは、1日目が終了した夜から雪が降り始め、翌日のテストは積雪と低気温のために急きょキャンセルとなったことから開幕戦の開催も心配されていた。しかしレースウイークの木曜日には気温が上昇し雪も溶け、主催者側や参加チーム関係者も無事に開催される運びとなりほっと胸をなでおろすこととなった。
その開幕戦で『BMW M4 GT3』を駆り総合優勝を飾ったドリス・ファントールは、昨季2022年まではアウディスポーツに所属しWRTやフェニックス・レーシングで活躍したのち、今シーズンよりBMW陣営に移籍した実力派ドライバーだ。
この24歳のベルギー人は、3時間レースとして行われたNLS開幕戦では、ローヴェ・レーシングからともに参戦する予定のBMWワークスドライバーらが同じ週末にセブリングで開催されていたIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権へ参戦するため、ニュルブルクリンク24時間に向けたテストをする目的でエントリーした98号車と99号車計2台の『BMW M4 GT3』を、マキシム・マルタンとふたりでまわすという過酷な週末を過ごした。そんななか初戦を見事に総合優勝で飾り、ノルドシュライフェで幸先のよいスタートと切ったファントールにBMWワークスドライバーとしての初NLS後に話を聞いた。
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――2023年はBMWのワークスドライバーとしての新たな挑戦が始まりましたが、気分はいかがですか?
ドリス・ファントール(DV):「BMWでの居心地はとても良い。BMWドライバーとなってすでに4つのレースに出ているけど、そのうち今日のNLSも含めてドバイ24時間レース、キャラミ9時間レースの3戦で優勝できている。だから、いまのところは順調に戦績を出せていると思う」
「アウディからきた身としては、まったく別組織の中に入りその中で働かせもらう一員として新たに学ぶべきことは多い。ローヴェ・レーシングとはこのNLS開幕戦が初めてのレースだったが、こじんまりしたファミリー感溢れるチームで、新入りの僕を暖かく迎えてくれてホッとした。開幕戦は戦略がうまくいったこともあり、優勝できてとてもうれしかったよ」
「ただ、トップスピードがまったく足りていないなど、まだ多くの課題と改善点がある。5月の本番とも言える24時間レースに向けてしなければいけないことは山積みだが、BMWのドライバーとしてその日を迎えるのが今からとても楽しみで仕方ないんだ」
「24時間の中では予想できない信じられないことが本当に数々起こり、チェッカーフラッグを受けるということがどれだけ難しいレースか、皆が承知のところだが、今日走ってみた感触では良い方向に向かっているのではないかと思う」
――昨年はフェニックス・レーシングのアウディR8 LMS GT3エボIIを駆るあなたと、実兄でポルシェワークスドライバーであるローレンス・ファントール駆るマンタイ・レーシングの“Grello”ポルシェの激しい兄弟バトルがとても強く印象に残りました。そして、強いメルセデス勢を抑えて念願の初総合優勝を成し遂げましたね。
DV:「ニュルでチャンピオンになるということは、プロのドライバーとして非常に栄誉があり特別な気持ちになるものだ。2022年はやっとその夢が叶った。またこの地でポディウムの頂点に立ちたいと強く願っており、そのためにもすべての努力を惜しまないし、可能なことはすべて試してみるつもりだ」
「僕をこのノルドシュライフェで戦うBMWワークスドライバーの一員として走らせて貰えること、そして強い意志を持って挑むことは僕とって本当に特別な意味を持っているんだ」