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ル・マン/WECニュース

投稿日: 2012.06.17 00:00
更新日: 2018.02.16 09:42

「サトシはヒーロー」諦めない姿勢に大きな拍手


 第80回目ル・マン24時間耐久レースに、環境技術を投入する特別枠“ガレージ#56”から参戦したニッサン-デルタウイング。序盤は細かなトラブルが発生する状況だったが、8号車トヨタTS030がクラッシュし導入されたセーフティカー明けで、7号車トヨタと接触。ウォールにクラッシュし、リタイアに追い込まれた。

 ローラなどでデザイナーを務めていたベン・ボールディがデザインしたデルタウイングは、もともとインディカー用にデザインされたマシンで、2012年からスタートしたル・マン24時間に設けられた特別枠、“ガレージ#56”の最初の1台として採用され、極細のフロントタイヤに、シャシー下面を利用しダウンフォースを生むなど、空気抵抗を極限まで減らしたシャシーにニッサンの直噴ターボエンジンを搭載。大きな注目を集めていた。

 予選ではミハエル・クルムがアタックを務め、決勝ではLMP2マシンに混じって序盤戦を戦ったニッサン-デルタウイング。序盤から小さなトラブルが起きガレージに戻されるシーンも多かったが、少しずつトラブルも解消。本山哲が乗り込んだ際には、すっかりマシンも快調になっていた。

 しかし、スタートから5時間というところで8号車トヨタの大クラッシュが発生。セーフティカーが投入されることになるが、そのリスタート時、LM-GTEクラスに詰まったLMP1クラスのトップ争いのマシンが、その集団の中にいた本山を追い抜きにかかった。

 その時の状況について本山は「セーフティカー明けで自分のタイヤも冷えていて、ちょうどピットに入る周だったし、後ろからLMP1の速い集団が来るので、なるべく邪魔しないようにしていた」と語る。しかし、中嶋一貴が駆る2番手7号車トヨタが、首位1号車アウディを抜こうとした際にデルタウイングと接触。本山はウォールにクラッシュしてしまった。

「右リヤの駆動とフロントのタイロッドが壊れていた。緊急用に直すアイデアはいくつかあって、それをいろいろ試したんだけど。ピットも割と近かったし、なんとかピットに戻れないかと1時間くらい作業していたのかな」と本山。ル・マンではコースに止まったマシンは、ドライバーが自力で修復するしかない。本山はストップ地点のフェンスに駆けつけたスタッフから、さまざまなアドバイスを受け、工具を受け取りマシンをピットに戻そうと苦闘したが、結局リタイアが決まってしまった。

 クラッシュから一夜明け、サルト・サーキットのパドックでは、ニッサン-デルタウイングのプレスカンファレンスが行われたが、その場で本山は「今回のヒーロー」と紹介され、世界中のメディアから大きな拍手が送られた。

 チームメイトのマリーノ・フランキッティも、「サトシはなんとか繋いでくれようとした僕のヒーローだ」と語れば、スーパーGTのチームメイトであるミハエル・クルムは、本山が日本のトップドライバーであり、そんなドライバーが苦闘してくれたことで、「皆に“ネバー・ギブアップ”の気持ちを届けられたと思う」と持ち上げた。

 周囲から拍手で讃えられた本山は、「クルマをなんとか直したかったのと、ここまでのテストも含めていい経験になったし、大きなチャンスだった。チームにはうまく貢献できたんじゃないかと思っています」とコメント。「1999年に参戦した時もリペアを体験したけど、今回は10倍大変だった(笑)」と語り、海外メディアを笑わせていた。