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投稿日: 2012.02.29 00:00
更新日: 2018.02.16 07:10

あの『栄光への5000キロ』がスクリーンで楽しめる


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 今もなお、多くのファンから今も愛されている俳優・石原裕次郎。「映画は大きなスクリーンで観てほしい」という裕次郎さんの生前の願いを叶えるべく、幻の2作品『黒部の太陽』、そして日本のモータースポーツ映画の傑作とも言える『栄光への5000キロ』の完全版が、劇場公開以来44年の時を経て、全国のスクリーンに蘇ることとなった。


幻のラリー映画 石原裕次郎と「栄光への5000キロ」
かつて日本のラリーストたちに夢を見させた映画があった
まだ映画が情報発信の最先端であり
夢を紡ぐ工場として光り輝いていた時代の話である
To the Glory──

 1969(昭和44)年7月15日、日本の映画界は一本の映画の封切りが大きな話題となっていた。その映画が「栄光への5000キロ」だ。石原プロモーションが、前年の「黒部の太陽」に続いて公開した大作は、当時の制作費で4億円、現在の貨幣価値から換算すると、ざっと13億円の超大作だった。
 モータースポーツファンにとり話題の的となったのが、石原裕次郎、浅岡ルリ子というトップスター出演もさることながら、日産の協力のもと、当時の日本映画では珍しい本格的なレース&ラリーシーンがふんだんに登場した点だ。

 映画はモンテカルロラリーのシーンから始まる。このシーン、実際に69年2月下旬〜3月上旬に現地で撮影されており、雪深いフレンチアルプスでのラリーは、当時のモンテカルロラリーの雰囲気を濃厚に伝えている。

 モンテカルロラリーでは、日産フェアレディ2000をはじめ、欧州メーカーの多彩なラリーカーを見ることができる。なかでも主人公の五代高之(石原裕次郎)がラリーに出場したラリーカーが珍しい。フィアット124をベースにカロッツェリア・ヴィニャーレがクーぺボディに架装したフィアット124ヴィニャーレだった。モンテカルロから帰国した五代は、日産から日本グランプリに出場することとなる。五代がステアリングを握るレースカーがまた貴重だ。日本グランプリを模した「フジ・スピードカップレース」(69年5月開催)に出場した日産R381-IIなのだ。このマシンには、5リッターV12GRXエンジンが搭載されている(R382は6リッター)。マシンもエンジンもR381とR382の過渡期モデルだ。

 その五代とともにこのR381-IIをテストするのが北野元、高橋国光の日産両エースドライバー、そしてR381-IIを走らせるコースが日産村山テストコース。現在は大規模ショッピングモールとなっているだけに、そのころを知る貴重なシーンだ。GPレースシーンも、富士の30度バンクを走行するシーンを見ることができたりと、バンク知らずの世代にとっては追体験できる映画でもある。

 これだけでも十分見ごたえするが、後半はいよいよサファリラリー。随所に510ブルーバードのラリーカーがサバンナを走りまわり、五代の乗るブルーバードがトップでフィニッシュする……。「栄光への5000キロ」は、日本の映画ファンの反響を得ただけでなく、映画の封切りに合わせて「日本サファリ」というラリーイベントも開催された。

 SCCN主催の「日本サファリ」は、69年7月4〜6日東京〜神戸〜金沢〜東京の1800キロで競われた。この「日本サファリ」、当時として破格の賞金30万円+ブルーバードが優勝賞品。そのため、当時のトップドライバーはこぞって参戦していた。エントリーのなかにはすでに三菱ワークスの木全巖、アマチュアで頭角を現していた篠塚建次郎の名前も見られた。エントリー台数は134台、このころは参加制限がなかったため全車が東京プリンスをスタート。しかしラリーは悪天候に見舞われ、フィニッシュしたのは67台だった。

 このイベントで優勝したのは稲葉一義/野口隆弥組(日産ブルーバードSSS)。このコ・ドライバーの野口氏がその後、日産パルサーGTI-Rのラリー開発担当となるのも巡り合わせか。

 この「栄光への5000キロ」、唐突なエンディングを迎える。これは上映時間が長いための配給会社の要請だとか。そのため故・石原氏が後年再編集するつもりと聞いた。しかし石原氏の急逝によりそれもかなわず、いまだDVD等に映像化されないということだ。

 90年代に入ると、一部でこの続編を制作する話が持ち上がっていた。五代の子供がラリードライバーとしてWRCに参戦する、というストーリーだった。実際その準備にチームが結成され、国内ラリーに参戦し結果を残していたが、チーム監督側の都合で話は流れてしまった。すでに自動車メーカー、大手食品メーカーのスポンサーの内諾も得られていたとか。

 現在「栄光への5000キロ」の撮影に使われた日産ブルーバード1600SSSは、北海道・小樽の石原裕次郎記念館に展示され当時の姿を見ることができる。また映画もダイジェストシーンが放映されているので、小樽へ行く機会があれば、同記念館に足を運んでみてはどうだろうか。

■公演全体概要
タイトル:「裕次郎の夢~全国縦断チャリティ」プレミア上映会
主催:石原プロモーション/チャンネル銀河
後援:J:COM、JCN、イッツコム


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