一貴「本山さんには申し訳ない」接触の状況を語る

　第80回ル・マン24時間耐久レースの決勝レースで、6時間過ぎのセーフティカー明けに接触した7号車トヨタTS030ハイブリッドと0号車ニッサン-デルタウイング。世界中が注目した日本メーカー車同士、そして日本人同士の接触となってしまったが、7号車をドライブしていた中嶋一貴に、接触の状況を聞いた。

　8号車トヨタTS030ハイブリッドと、81号車フェラーリ458の接触によりセーフティカーが導入されたのが、ル・マン24時間の5時間過ぎ。その時点でトップに立ったのが7号車トヨタで、サーキット内は歓声に包まれたが、セーフティカー中に7号車はニコラス・ラピエールから一貴に交代。一貴はSC中に最初のドライブを務めることとなった。

　1時間以上に及ぶセーフティカーランが解除となったのが21時14分。一貴は前を行く1号車アウディR18 e-トロン・クワトロ、さらにその前を走るラップダウンの4号車アウディR18ウルトラに追従する形でレース再開に臨んだ。

　ポルシェコーナーに差しかかる状況で、前にはさらにGTEクラスのマシンがおり、コース上は渋滞に。「セーフティカー明けで自分のタイヤも冷えていて、ちょうどピットに入る周だったし、後ろからLMP1の速い集団が来るので、なるべく邪魔しないようにしていた」と言う本山哲駆るニッサン-デルタウイングは、長い右コーナーでイン側を走行。一方、GTEクラスのマシンをかわした4号車、1号車、7号車はアウト側からニッサン-デルタウイングをかわしていく。

　しかし、1号車よりもアウト側からアプローチした一貴は、続く左コーナーでアウト側にマシンを振った際に本山と接触。本山はコースオフ、ニッサン-デルタウイングはリタイアを喫してしまった。

　この時の状況について一貴は、「リスタートはすごく良くて、アウディが引っかかっていたこともあり、ちょっとエキサイトしていたところもありました。ただ、あの状況の中では正直前しか見えていなかったし、後ろが接触したとも思わなかった」と語る。映像と一貴のコメントから推測するに、アウト側からアプローチした一貴にとって、1号車の死角に0号車がおり、またニッサン-デルタウイングは車高が低く、左ハンドルで高いフロントフェンダーをもつトヨタTS030ハイブリッドからはかなり見えにくかった可能性が高い。

「判断以前の問題で、そこにいるのも分からなかった。ただ、全面的に悪いのは僕。勝負にいくというより、前が渋滞だったので、空いているところを探そうとしたら右（左コーナーのアウト側）だったという状況です。今後に向けていい教訓になったと思います」と一貴。

「本当に本山さんには申し訳無いと思っています」と語る一貴は、一夜明けた17日にはニッサンのホスピタリティを訪れ、ニッサン陣営に謝罪した。注目の日本メーカー車同士、そして日本人同士のアクシデントとなってしまったが、一貴にとっては今後のWEC世界耐久選手権、そしてル・マンに向けた糧となることだろう。

　5時間目まではアウディ勢を追いつめ、サーキットを沸かせたトヨタTS030ハイブリッド。ル・マン初挑戦の一貴自身は「接触もあったし、タイヤの問題もあった。自分なりにあまりいい仕事がレース中はできなかったのが残念ですし、リカバーする機会もなかったのは残念。でも、あの時点までは本当にいいレースができたし、速さをみせることもできた。今後のWECに向けてすごく楽しみです」と語る。

　一貴の7号車は接触の後、別にメカニカルトラブルが発生しリタイアを喫したが、今後のWECの6時間レースで、TS030ハイブリッドがどんな走りを披露してくれるのか。非常に楽しみなところだ。