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投稿日: 2009.07.16 00:00
更新日: 2018.02.15 14:09

全日本F3を盛り上げるACHIEVEMENT by KCMGってどんなチーム?


 近ごろ、全日本F3選手権で注目を集めているチームがある。ACHIEVEMENT by KCMGだ。第9戦で優勝を飾ったばかりのアレキサンドレ・インペラーリ、そして黒田吉隆を擁しNクラスを戦うチームだが、コース上だけでなくピット、パドックで大いに目立っている。ピットなど、まるでF1チームを思わせるようだ。このチームはいったいどんなチームなのだろうか!?

 全日本F3選手権2年目のインペラトーリが所属していることでおおむね察しはつくだろうが、ACHIEVEMENT by KCMGとは昨年もNクラスを戦っていたPTRSがそもそもの母体であり、チーム体制の変更にともない、名称が改められている。ちなみにKCMGとはクゥン・チン・モーター・グループの略称。これはチーム代表のポール・イップ氏の香港名がイップ・クゥン・チンであるため。本拠は中国・香港に構えるチームということを、これでまず理解してもらえるだろう。

 もともとアジアを中心に活動していたPTRSが全日本F3に出場するきっかけは、現在チームマネージャーを務める土居隆司氏が率いるDTMに、「ダラーラF307を購入したい」と要請したことに端を発する。イップ氏は当初アジアF3の出場を目論んでいたようだが、折しも昨年から型落ちシャシーによるナショナルクラス(当時)が全日本F3にも設けられることになった。

 かつてフォーミュラトヨタやF3を戦っていたDTMも、近年は海外レースに挑むドライバーのマネージメントなどに専念し、直接のレース活動は行っていなかったものの、「そろそろレース活動を再開したかったし、このクラスなら上位争いもできるはず」といった土居氏の考えに、イップ氏も共感。そこで昨年からDTMのコーディネイトにより、PTRSが日本でのレース活動を行うようになったというわけだ。

 初年度の成績はインペラトーリがランキング2位で、もうひとりのザヒール・アリも4位に。ふたりとも優勝を飾っており、それはそれで納得のいく成果ではあったものの、2年目ともなると必然的に欲も出て、今度は確実にチャンピオンを目指そうということに。イップ氏、土居氏に「より高いレベルで戦うために、支えてくれるパートナーがあれば」という共通の意識が生まれつつある中、土居氏はかつてフォーミュラトヨタ時代のライバルで、エッソレーシングチームやCASTなどを率いていた織田一彦氏に協力を申し出る。

 ここで時間軸は2年ほどさかのぼる。土居氏と織田氏が再会したきっかけは、ある企業の代表がF1に関心を示したことによる。観戦するだけではなく、日本GPでチームのサポートができないか。企業と織田氏からの依頼に対し、ウイリアムズへの橋渡しをしたのが土居氏だったのは言うまでもない。かくしてその企業、すなわちACHIEVEMENTのロゴが、中嶋一貴やニコ・ロズベルグのドライブするマシンに貼られることになった。

 このことがきっかけとなって、織田氏の中にもレースへの情熱が再燃。「かつてはライバルだったけど、信頼できるいい仲間であった土居さんと、いい仕事をしたいね」と。その意識はイップ氏にも共通していたことから、三氏同意の上で新体制が固められることに。監督に織田氏が就任、そしてパートナーとしてACHIEVMENTが加わったのである。ちなみに同社が人材育成を主旨としていることも、「ドライバーを育成し、道を切り拓いてあげたい」という三氏の意識は共通。まさに理想的な関係が構築されたことになる。

 さて、F1を思わせる豪華なピットアレンジであるが、これこそKCMG by ACHIEVEMENTのレースに対するコンセプトを明確に現している。「レースにはエンターテイメントの要素も含まれていますから、やはり見た目も重視しなくてはなりません。最近はピットウォークにお子さんの参加も増えて、それはすごく嬉しいことですし、特にそういう小さい子供たちがレースに関心を持ってもらうのに、何が重要かというとインパクトだと思うんですよ。『わぁ、すごい、カッコいい』という。そこで、まずピットエクィップを飾り立てようと。これにはドライバーも、そういったちゃんとしたピットのチームで走れる、という誇りも生まれますし。実は近い試みは、我々がフォーミュラトヨタをやっていた頃からで、もともと私が工具を直に置いたり、テントが汚かったりするのが嫌だとか、そういうのから始まって。確かF3チームで床タイルを貼ったのは、うちが初めてだったと思います」と土居氏。

 たしかにインパクトは十分だ。黒で統一されたパーテイション、その奥にはプロモーションビデオを映すディスプレイ。何より目を引くのは、マシンの上部に備えられるオーバーヘッドだ!
「ピットエクィップに関しては私だけでなく、イップ氏もすごくこだわっているんですよ。お互いにアイディアを出し合ってね。彼はもっとやりたいと言っているんですが、設営も大変だから、F3ではこのぐらいで、っていさめているぐらいで(笑)。ほとんど彼が中国で作ってきたものなんで、実際にはそんなお金かかっていないんですよ。さすがにオーバーヘッドだけはちょっとしたけど。ただ、モノはすごく吟味しています。例えば床タイルなんか、程よく滑ってくれないと、ギヤ入れて出て行く時に全部めくれ上がっちゃうようなものもあるんですけど、うちのはそうじゃないし……。あとPVですが、これはACHIEVEMENTの社員が自作してくれたもので、どうしてもF3は露出機会が少ないのでね。でも、自分たちで撮れば、小さなスポンサーのロゴでも映せますから、みんな喜んでくれるんですよ」と土居氏。

 PVのこともそうだが、ACHIEVEMENT全社が一丸になってサポートしてくれることが、何よりチームの士気を高めてくれる、とも土居氏は語る。「富士の時には研修として全社員が訪れてくれて、喜んでくれましたし、逆に我々を盛り上げてもくれたんです。このアツさがすごくありがたい。社員の皆さんだけでなく、観客の皆さんにももっと喜んでもらおうと思っていますので、これからも期待していてください!」と土居氏は声を大にしていた。


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