荒聖治「大好きなGT-Rで世界選手権を戦えることを誇りに思う」

　今季、新たに世界選手権となるFIA GT1にスイスレーシングからニッサンGT-Rを駆って参戦する荒聖治は、「大好きなGT-Rで世界選手権を戦えることを誇りに思う」と意気込みを語った。

「今年、GT500クラスに乗れなくなった時点で、自分に何ができるか、どんな可能性があるかを考えていたんですけど、その選択肢のひとつがFIA GTでした。その後は、チームに話を通すために、日産に力を借りたり、チームに履歴書を送ったり、オーディションを受けに行ったり。本当に、初心に戻って、そういうことをしました」と荒は今季の活動を模索していた状況を語る。

「オーディションに行くということになったのは、今年の2月の終わりか、3月に入ってからのことでしたね。『乗せてもらえるチャンスがあるから、行ってくれ』という話が来て。その時、僕は仕事中だったんですけど、その夜の飛行機に飛び乗って、スペインのアラゴンというサーキットに行ったんです。現場にはその時、全部で4人オーディションを受けに来ているドライバーがいたんですけど、僕はトップバッターでした。（スーパーGTと）同じGT-Rとは言っても、FIA GTのクルマには乗ったことがありませんでしたし、コースも初めて。でも、その状況の中で、最大のパフォーマンスを出さなければいけないと思っていましたし、そのための準備をしていたんです。このあたりは、過去に海外でレースをしてきた経験が役立ったと思いますね」

　荒はスーパーGTとはまったく異なる性格のFIA GT仕様に乗って、どんな印象を抱いたのだろうか？　昨年のスーパーGT第7戦でも、自らアクシデントの後マシンを修復しピットに戻ったほどのクルマ好きで知られる荒だけに、気になるところ。

「実際のクルマの印象は、まず“カッコいい”ということでした。僕は、市販車も含めてGT-Rが大好きなんですが、GT-R好きの僕にとってはたまらない形です（笑）。ドライビングした感触は、日本のGTとレギュレーションが違うので、GT500のマシンと比べるともう少しハコ車っぽいというか、ツーリングカーだなという印象でした。でも、600馬力近くあるので、パワー感があってコントロールするのが楽しいクルマですよ。カーボンブレーキが搭載されていますけど、その特性はLMPカーと同じですし、乗っていて違和感はありませんでした。この辺も、過去の経験が役立ちましたね」と荒は感想を語る。

　いよいよ今週末には開幕が迫るFIA GT1世界選手権。荒は「最終的に乗れると確定したのは、もちろん契約書にサインをした4月5日です。でも、先月末には“乗って欲しい"ということでコンタクトをいただきましたし、それを聞いた時には『良かったな』と思いました。FIA GTは、今年から世界選手権ですし、身が引き締まる思いです。自分の経験が生かせるフィールドに間違いないと思いますし、今回のチャンスを与えてくれた日産、ニスモ、そしてスイス・レーシングにも感謝しています。初心に戻って色々と自分で動いたり、チームとコミュニケーションを取ったりしたことも、刺激になりました」と気分一新、世界戦に備える。

　そんな荒のFIA GT参戦には、ひとりの心強い“協力者”がいたと荒は明かす。「かつてスイス・レーシングでドイツF3に出場していたということで、J-P（デ・オリベイラ）が色々と人間関係の面で上手く行くようにと、幾度もチームと連絡を取ってサポートしてくれました。去年まで一緒に組んでGT500に出ていましたが、僕がチームを離れた今でも、J-Pは最高のチームメイトです」

「今後事前テストはなく、開幕戦を迎えることになります。14日に性能調整のテストがあるんですけど、それを終えたらすぐレース。そういう意味では不安もありますが、その場ですぐ自分のパフォーマンスを出してレースすることを期待されていると思うので、あとは頑張るだけですね。事前にすべてが用意されてのスタートではありませんが、上手くやれるんじゃないかと思っていますし、気持ちは前向き。現地に入ってからあらためてシート合わせをしたり、レギュレーションについてのミーティングがあったりして、その後すぐにレースウイークエンドに臨むという感じでバタバタではありますが、ちゃんとできる自信はあります。大好きなGT-Rで走れますし、この世界選手権に日本人として出場できるのは僕だけ。それを誇りに思っていますし、感謝しています。遠い国でのレースになりますが、日本の皆さんにも、ぜひ応援していただきたいですね」