BBS&フェラーリ。F1の黄金期を想起させる最強コンビネーションがスーパーGTで組成
Photo:Takashi Ogasawara
優れたもの同士を組み合わせたとしてもそのバランスが崩れると結果が伴わないことは多々ある。さまざまなパーツが融合されるクルマを使いコンマ数秒差を競うモータースポーツではその成否が残酷なほど分かりやすく証明されてしまう。しかし、その逆の現象が起こり得るのもモータースポーツ。BBSとフェラーリのタッグは、早くも成果を出している
■駿馬たらしめる必須の1ピース
フェラーリに、BBSホイールはよく似合う。特にミハエル・シューマッハー操る真紅のマシンがタイトルを総なめにした2000年代初頭のF1を知る世代は、その思いが強い。今シーズン、BBSホイールを装着したフェラーリを自ら操る片山義章も「ドンピシャ、世代ですね」と笑う。
「フェラーリにBBS、やっぱり似合いますね。気持ちが上がります(笑)。もちろんドライバーとしてはパーツ単体での高い性能を求めますが、この点でも満足しています。初めて装着した際に『タイヤも変更した?』と思えるほどに違いが出ましたので。具体的に言うと、予選でも決勝でも、タイヤのピークが落ちてきた際にホイールが粘ってサポートしてくれるイメージです」
チーム・ルマンの6号車UNI‐ROBO BLUEGRASS FERRARIは今季開幕戦からBBSホイールを装着していたわけではなく、第3戦鈴鹿から使用を開始。そしていきなり3位表彰台を獲得するが、採用までの道のりはそのレース結果ほどスムーズではなかった。
時間的な制約はもちろん、テストを重ね採用されたであろう純正ホイールを凌駕する性能が必須となるため、作業は困難を極めたのだ。
BBSジャパン開発本部の村上貴志氏は当時を振り返り、こう語る。
「本当は試作品を作り、テストを踏まえた上での開発がベストなのですが、話が本決まりとなったのが年始ということで、そこまではできませんでした。今回はたまたまいいものが出来上がったと思っています」
村上氏は謙遜するが、スーパーGT用としては新規となる6本クロススポークを採用しつつ、車両のディメンション的にインセットが前後で極端に異なるホイールを試作品なしにバランスさせることは、そう簡単ではない。
BBSジャパン設計部の横川貴行氏が補足する。
「シミュレーションツールも進化させていますので、そこでは何パターンか試しています。とはいえ、我々が持つ経験値やデータを落とし込むことは必須です。また、BBSホイールの特徴のひとつである靱性については、人間の感覚も重視しています。この点はデジタルとアナログをうまく融合させていますね」
F1やNASCARでの供給を筆頭に、世界各国のあらゆるモータースポーツで戦ってきた際のBBSの知見が、今作でもおおいに活かされたようだ。
片山のパートナー、ロベルト・メリ・ムンタンに過去のBBS使用の有無について聞くと「ホイールに関しては覚えてないな(笑)」と率直な回答。
「でも、このBBSはフェラーリ296 GT3にマッチしているね。ミッドシップの特徴をうまく捉えていて前後バランスがいいし、ヨコハマタイヤともフィットしたから初レースの鈴鹿でも結果が出せた。ものすごくポジティブに感じているよ」
元F1ドライバーにホイールへの関心を持たせるほど、BBSの新作は、結果と、乗り手のホイール観に変化をもたらしたようだ。
BBS Japan:https://bbs-japan.co.jp
2024年8月29日発売 autosport No.1600より転載