吉報、届かず。「ラリー・ジャパン」の復活宣言はまたしても先送りとなった。
昨年、WRCのカレンダー入りはまず確実と言われていたにもかかわらず、発表された2019年の年間カレンダーに日本の国名はなかった。
そこで、WRC日本ラウンド招致準備委員会は20年のカレンダー入りを目指し、入念な準備を進めてきた。昨年11月にはキャンディデート(立候補)イベントとして全日本ラリー選手権の新城ラリーを当てはめ、FIAやWRCプロモーターの視察を受けて一定の評価を得た。
さらに、ロビー活動も強化し、FIAの下部組織であるWRC委員会との関係も深化。ヨーロッパのモータースポーツ界は、最終的には人とのつながりが重要な意味を持つからだ。
実務面も含めたさまざまな活動の結果、WRC委員会でのカレンダー決定のプロセスや枠組みが大きく見直された。具体的には、全14戦をベースに、現在は10のイベントがあるヨーロッパ内のラリーを最大8戦に抑え、残りの6戦分をヨーロッパ以外に開放するという枠組みが明確になったのだ。
改めて2019年のカレンダーを見てみると、ヨーロッパ以外のラリーはメキシコ、アルゼンチン、チリ、オーストラリアのみ(トルコはヨーロッパ扱い)。そのうち2戦が南米という、かなり偏った構成である。
アジア、中東、アフリカのイベントは現状なく、世界選手権を名乗るにはバランスが絶対的に悪い。それについてはプロモーターやFIAも認識しており、欧州外のイベントを増やしていこうという動きは、実は以前からあった。
しかし、すべてのワークスチームが欧州にファクトリーを構えているため、欧州外イベントの増加はロジスティクス費用の上昇に直結する。また、それ以上に、既存の欧州イベントのオーガナイザーやASN(統括モータースポーツ団体)がカレンダー落ちを回避すべく、政治力を駆使してディフェンスを固めた。
その結果、日本が入るスペースはなくなり、当選確実と言われた状況からまさかの落選を喫したのである。
しかし、2020年に向けては欧州以外のイベントに6スロットが確保されたことで、アジア代表である日本が座れる椅子が増えた。というよりも、ほぼ確実に座れるようになったというべきかもしれない。
プロモーターおよびWRC委員会は、アジア地域でのWRC開催の必要性を実感しており、金銭面や実務面で確実性の高い日本に対する信頼は非常に大きい。将来的には、再度開催のチャンスを探っている中国もカレンダーに加わる可能性が高いが、まずは準備が着実に進んでいる日本がカレンダー入りにもっとも近い位置にいる。
また、南米の近い位置でアルゼンチンとチリが“リンクドラリー”として連続開催されたように、日本と中国が将来的にロジスティクス面でリンクされる可能性もある。いずれにせよ、現時点において日本は当選確実と言える状況のようだ。
ひさびさの復活を目指すサファリラリー(ケニア)にも、アフリカ枠として優先席が用意されている。今年7月のキャンディデートイベントの結果次第だが、サファリも来季のカレンダー入り有力候補だ。
唯一、カレンダー落ちの危機に瀕しているのはオーストラリアで、復活を目論むニュージーランドとパシフィック地域の開催を競う形となる。コフスハーバーという、いささか辺ぴな場所で開催されてきたオーストラリアは、例年観客動員数が少なく、より人口が多いシドニー近郊での開催をプロモーターから進言されてきた。しかし、なかなか実現せず、イベントとしての評価を下げつつある。
対して、ニュージーランドはそのステージに大きな特徴があり、かつて「ベストドライバーズラリー」と言われたほど唯一無二の存在だ。予算不足もあってなかなかWRCを誘致できない状況が続いていたが、それも改善傾向にあり、復活の機運が高まっている。早ければ、2020年にはオーストラリアのかわりにカレンダー入りを果たすのではないかと考えられている。