WRC世界ラリー選手権への登竜門であると同時に、欧州選手権としてハイレベルなラリードライバーが集うERCヨーロッパ・ラリー選手権。その2019年シーズン第6戦チェコ・バウム・ラリー・ズリンが8月17~18日に開催され、地元の英雄でもあるベテラン・ターマック・スペシャリスト、ヤン・コペッキー(シュコダ・ファビアR5)が前人未到の地元8勝目を記録。その背後2位争いは、若手有望株による白熱のジュニアタイトル争いが展開された。
このチェコ共和国伝統のターマック・イベントは、例年地元シュコダが必勝体制で挑むラリーとして知られている。そのワークスチームの絶対的エースに君臨する2013年ERCチャンピオンのコペッキーが、新型ファビアで自らの庭を駆け回るかのごとく、まずはSS1でベストタイムを奪って幸先良く主導権を握っていく。
そのコペッキーに声援を送ろうとコースサイドには数千人のファンが連なり、壮観なステージでラリーリーダーに立ったコペッキーだが、最初にその地元スペシャリストに挑みかかったのは現ERC1(ジュニアU28)王者のニコライ・グリアシン(シュコダ・ファビアR5)だった。
そのタイトルプライズとして出場権が与えられるうち、2回目の権利を使用して参戦したグリアシンは、スポーツレーシング・テクノロジーズのマシンでワークス格のシュコダ・モータースポーツが走らせる新型ファビアR5に喰い下がり、SS3でコペッキーを出し抜き首位浮上に成功する。
しかし直後にまさかのパンクに見舞われ2分以上を失い、続くSS4、SS5で同じロシアの大先輩であるERCチャンピオン、アレクセイ・ルキヤナク(シトロエンC3 R5)に首位の座を明け渡してしまう。
ERCタイトルを提げて今季は心機一転、セインテロック・ジュニア・チームのシトロエンをドライブする“ロシアン・ロケット”ことルキヤナクは、シーズン序盤こそ慣れないマシンで最終日終盤にクラッシュを繰り返す悪循環が続いていたが、第5戦で2019年初優勝をマークして以降、マシン習熟も進み「落ち着いたラリーが展開できるはず」と、自身に期待を寄せていた。
今回も「まずはゴールランプにたどり着くのが自分の使命」と肝に銘じていたルキヤナクだったが、悪い流れが再びチャンピオンの足元をすくい、開幕戦カナリア諸島でのアクシデントと同様に、SS4後半で左フロントのパンクに見舞われると、続くSS5を走破したのちにサスペンションにもダメージが及んでいたことが判明し、そのままリタイアとなってしまう。
これでSS2以来、ゆうゆうとラリーリーダーの座に返り咲いたコペッキーだが、その後ターマックバトルの主役に躍り出たのは激しい2位争いをくり広げた、ERC1タイトルコンテンダーのクリス・イングラム(シュコダ・ファビアR5)と、フィリップ・マレシュ(シュコダ・ファビアR5)のふたりだった。