2021年4月に開幕を迎える独創的コンセプトの電動オフロード選手権『Extreme E(エクストリームE)』で、創設アナウンス時から目玉のひとつとして公開されてきた“フローティング・パドック”となる元貨客船、RMS St.Helena(セント・ヘレナ号)が2年間の大規模改修プロセスを経て就航。開幕の地サウジアラビアに向けて、2月18日にイギリス・リバプールの港を出港した。
南大西洋に浮かぶイギリス領、セント・ヘレナ島とロンドンを結ぶライフラインとして機能し、数年前に貨客船としての使命を終えていた元RMS(Royal Mail Ship/王立郵便船)は、シリーズラウンチの会場として姿を見せた2018年からエクストリームEシリーズの管理下に置かれ、あらゆる領域のオーバーホールと機械的改修、新機能の実装を含む数百万ユーロの大規模な改修プロセスを完了した。
地球環境保全活動とその啓蒙、さらに男女平等と独創的な放映形態を採用するこの新シリーズで、ロジスティックスのみならずチャンピオンシップ・ハブとして機能する同船が、インテリアの全面改装とフレッシュなカラーリングをまとって新たな任務に赴くときがきた。
このエクストリームEの仕掛け人であり、電動モータースポーツの先駆であるABBフォーミュラE選手権同様シリーズCEOを務めるアレハンドロ・アガグは、その出発式にて「こうして今日、セント・ヘレナ号が出航の日を迎えたことを心から誇りに思う」と挨拶の言葉を述べた。
「彼女の新しい航海はすべての始まりを意味し、このExtreme Eの初年度シーズンが正式に進行中であることを示すものだ。これは大規模なプロジェクトで2018年に我々がこの船を購入して以降、内装も含めて見違えるような姿に生まれ変わった」と続けたアガグ。
「この機会を利用して、セント・ヘレナで新しい旅の準備をするため一生懸命に働いてくれたすべての乗組員と、ここリバプールのキャメルレアード港のチームに感謝したい。彼らの努力なしに、我々がこの旅に参加するのは不可能だった」
スパーク・レーシング・テクノロジーズ(SRT)と、ウイリアムズ・アドバンスド・エンジアリング(WAE)が設計・製造を担ったワンメイク電動SUV『ODYSSEY 21(オデッセイ21)』プロトタイプを筆頭に、チームガレージを形成するエアシェルターテント、表彰台、スタート用ガンツリー、TV用放送機器などが積み込まれたセント・ヘレナには、プラスチック廃棄物をチャンピオンシップのトロフィーに変える特殊な3Dプリンターや、AFCエネルギー社と共同開発されたゼロエミッション車充電用の水素燃料電池など、環境保全に配慮した数々の機器も搭載された。