19年ぶりにWRC世界ラリー選手権として開催されたサファリ・ラリー・ケニアで、トヨタWRC育成ドライバーの勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC)が総合2位に入り、WRCでの自身初の表彰台フィニッシュとなった。
今季の勝田は開幕から3戦連続で6位に入り、直近2戦ではキャリアベストの4位を獲得。それでも、自分の力を出し切れなかったと勝田は不満そうだった。
今回はヒュンダイ勢に不運が重なったとはいえ、世界王者のセバスチャン・オジエ(トヨタ・ヤリスWRC)と最後まで優勝を争っての2位表彰台。幸運にもラリー直後に話を聞く時間をもらえて、さすがに満足感もあるだろうと思って聞いてみたのだが、その反応は意外なものだった。
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──総合2位おめでとうございます。初表彰台はもちろんうれしかったですよね?
勝田貴元(以下、勝田):まわりの方々が喜んでくれているので、実感が湧いてきました。ただ、優勝が近いところにあったので、うれしさよりも、まだ足りないなという悔しい気持ちのほうが強かったです。
──なぜですか?
勝田:最終日の路面に合っているソフトタイヤのうち、使えるものが2本しか残っていなくて、4本のハードタイヤと組み合わせて使うしかなかったんです。結果的にほとんどのステージをフルハードで走りましたが、(セバスチャン)オジエ選手はソフトを6本残していました。
途中までは何とか食らいついていけましたが、最後はやはり厳しかったですね。自分としては最終日までタイヤをかなりセーブして走っていたつもりで、摩耗の状態のいいソフトを8本残していたんです。
──なぜ使わなかったのですか?
勝田:タイヤの山はたくさん残っていましたが、そのうち6本に切れ目が入っているなどのダメージがあり、ピレリから『リスクが大きいから使わないでほしい』と言われたんです。きっとオジエ選手はタイヤが切れやすいところを分かっていて、そこではスライドをさせない走りをしているような気がします。
そういう総合力の違いがタイヤの状態にも表れ、最終日にアタックできるかできないかの大きなポイントになりました。オジエ選手のそういったところをすごく尊敬していますし、自分にはまだ足りていない部分だと思います。
──それで最終日はタイム差が大きくついてしまったと。
勝田:自分がオジエ選手よりも不利なタイヤしか持っていなかったので、無理なことはやめようと考えました。
──表彰式では、そのオジエ選手と、元チームメイトのオット・タナク(ヒュンダイi20クーペWRC)に挟まれながら、背中にシャンパンの瓶を突っ込まれました。
勝田:すごく冷たかった(笑)。彼らと一緒に表彰台に立てたことはすごくうれしいです。オット(タナク)さんはいまでもすごく仲良くしてくれていますし、いまはオジエ選手が本当に良くしてくれています。
オジエ選手は順位を争っていたにもかかわらず、ラリー中も『あのコーナーはショートカットできるよ。あそこは岩があるから絶対にカットしちゃダメ』などと教えてくれていました。トヨタのドライバーは全員が情報をシェアしていて、もちろんライバル関係ではありますが、雰囲気はとてもいいです。