今年も伝統のラリー・モンテカルロで開幕したWRC世界ラリー選手権は、6月下旬に開催された第6戦ケニアの閉幕とともに2021年シーズンの前半戦を終え、7月15～18日に行われるエストニア・ラウンドからはシーズン後半戦を迎える。
そんなWRCではトヨタ、ヒュンダイ、Mスポーツ・フォードという3つのマニュファクチャラーがFIA世界選手権タイトルの獲得を目指し、シリーズ最高峰クラスに参戦中だ。今季はここまでの戦いでトヨタが6戦5勝という他を圧倒する成績を残す一方、マニュファクチャラー選手権2連覇中のヒュンダイは1勝のみと苦しい展開。また、純メーカーワークスチームではないMスポーツはさらに厳しい状況に置かれている。
このように、はっきりと明暗が分かれるかたちとなった今季前半戦における各陣営のラリーについて、豊富なWRC取材経験を持ちJ SPORTSでの解説やオートスポーツ本誌でもおなじみのモータースポーツジャーナリスト／フォトグラファー、古賀敬介氏に各社のチーム体制やマシンの出来、起用ドライバーなどに焦点を当てて総括してもらい、3陣営の戦いぶりを100点満点で採点してもらった。第2回目となる今回は、若手中心の布陣で今シーズンを戦う名門チーム、Mスポーツ・フォードWRT編だ。
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■Mスポーツ・フォードWRT
マニュファクチャラーランキング：3位／109ポイント
ドライバーランキング
ガス・グリーンスミス：7位／34ポイント
テーム・スニネン：13位／9ポイント
アドリアン・フルモー：9位／30ポイント
| Driver | Rd.1 | Rd.2 | Rd.3 | Rd.4 | Rd.5 | Rd.6 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| グリーンスミス | 8位 | 9位 | 7位 | 5位 | 26位 | 4位 |
| スニネン | R | 8位 | – | – | 31位 | – |
| フルモー | – | – | 5位 | 6位 | – | 5位 |
Mスポーツ・フォードをマニュファクチャラーとして見るか、セミワークスチームとして見るかで、彼らに対する採点は大きく変わる。WRCへのエントリーはマニュファクチャラーだが、その場合の点数は40点がいいところ。
一方、セミワークスチームとして捉えるならば、80点以上の活躍だ。実際のMスポーツは、自動車メーカーの直系チームではないし、プライベーターに近い体制であることを考えれば、少ないリソースで今年も大健闘しているといえる。
前半の6戦を戦い、Mスポーツ勢の最上位はガス・グリーンスミスがサファリで獲得した総合4位。もし、チームメイトのアドリアン・フルモーがコース外走行で10秒のペナルティを課せられなければ、4位はフルモーのものだった。Mスポーツにとってはあと1歩で表彰台という惜しい結果であるが、参戦体制を考えれば4位でも立派だ。彼らが、実力で優勝を手にするのは非常に難しい。
Mスポーツに足りていないもの、それは予算と勝てるドライバーである。勝てるドライバーを雇えず、若手のグリーンスミスとフルモーにステアリングを委ねなければならないのも、予算がないためで、反対に考えれば少ないバジェットで非常によくやっている。
メーカー直系チームではないこと、そしてブレグジット（イギリスのEU離脱）が招いた混乱により、イギリスに拠点を構えるMスポーツは厳しい経営状態を何とかやりくりしている。それでも、来季のラリー1規定マシンを開発し、なおかつ社員の雇用を可能な限り守りながらWRCに2台体制で挑んでいるのだ。彼らこそ真の『ラリー屋』である。
