例年と同様1月下旬に伝統のラリー・モンテカルロで開幕を迎えたWRC世界ラリー選手権は2月24~27日、早くも2022年シーズンの第2ラウンドであるラリー・スウェーデンが開催される。周知のとおり今季のWRCは車両規定が一新され、競技車両にプラグイン・ハイブリッドシステムが導入されている。それにともないスポーティングレギュレーションも大きく変更された。
そこで本稿では第2戦からでも2022年のラリー観戦を楽しめるよう、あらためて2021年シーズンからの変更点や参戦車両の紹介、各種情報の整理を行っていきたいと思う。今後の観戦に役立ててもらえれば幸いだ。
まず、はじめに四半世紀続いたWRカー規定に代わる“ラリー1”新レギュレーションが採用されたWRCの2022年シーズンカレンダーを確認してみよう。今季は2021年シーズンから1ラウンド増加し、現時点で開催地未発表の1戦を含む全13戦が予定されている。
前述のとおり開幕戦モンテカルロはすでに消化済みであるため、残すは12戦。その最後には11月10日から13日にかけて日本で開催される『フォーラムエイト・ラリージャパン2022』が控えている。豊田スタジアムを拠点に行われるラリージャパン2022では、愛知県と岐阜県の2県6市町にSS(スペシャルステージ)が設定され、同エリア内で競技が行われる予定だ。
■WRC 2022年シーズンスケジュール
Round | Date | Country | Surface |
---|---|---|---|
Rd.1 | 1月20~23日 | モンテカルロ | ターマック |
Rd.2 | 2月24~27日 | スウェーデン | スノー |
Rd.3 | 4月21~24日 | クロアチア | ターマック |
Rd.4 | 5月19~22日 | ポルトガル | グラベル |
Rd.5 | 6月2~5日 | イタリア | グラベル |
Rd.6 | 6月23~26日 | ケニア | グラベル |
Rd.7 | 7月14~17日 | エストニア | グラベル |
Rd.8 | 8月4~7日 | フィンランド | グラベル |
Rd.9 | 8月18~21日 | ベルギー | ターマック |
Rd.10 | 9月8~11日 | ギリシャ | グラベル |
Rd.11 | 9月29日~10月2日 | ニュージーランド | グラベル |
Rd.12 | 10月20~23日 | スペイン | ターマック |
Rd.13 | 11月10~13日 | 日本 | ターマック |
【2月18日、イープル・ラリー・ベルギーの開催が決定したため、カレンダーを更新しました】
今季、競技車両のハイブリッド化が図られたのはWRCの最高峰クラスだ。このカテゴリーでは前年王者のトヨタをはじめ、ヒュンダイ、Mスポーツ・フォードという3つのチームが覇を競っており、各チームは2022年シーズンに向けて“ラリー1”と呼ばれる新型車両の開発を進めてきた。
新しい車両規定を採用するにあたっては必ずしもベースモデルを変更する必要はないが、奇しくも全チームがこのタイミングでベース車両をスイッチしている。トヨタはヤリスからGRヤリス、ヒュンダイはi20クーペから新型i20 Nへ。そしてフォードの支援を受けるMスポーツは、長年使用してきたフィエスタからコンパクトSUVのプーマに切り替えた。
車両についてはこれまでどおり市販車のボディシェルを使用することもできるが、チューブラーフレームを用いて車両を組むことが可能になった。また、スケーリングによってマニュファクチャラー(メーカー)がさまざまなタイプの車種をラリー1のベース車に選ぶことができるようになっている。これらは多くの自動車メーカーを選手権に呼ぶ込むための施策のひとつだ。
さらに、新規定には車両開発の低コスト化や持続可能性の確保を狙い、フロントのカナードやリヤディフューザーなど過激だったエアロダイナミクスの簡素化やアクティブセンターデフの廃止、ギアボックスの6速油圧パドルシフトから5速シーケンシャルシフトへの変更などが盛り込まれた。このほか、サスペンションストローク量の制限(270mm)、2021年に開発が凍結された直列4気筒直噴ターボエンジンでのP1レーシングが供給する100%持続可能燃料の使用が義務付けられている。
トヨタGRヤリス・ラリー1 | トヨタ・ヤリスWRC | |
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全長 | 4225mm | 4085mm |
全幅 | 1875mm | 1875mm |
ホイールベース | 2630mm | 2511mm |
最低重量 | 1260kg | 1190kg |
エンジン | ||
形式 | 直列4気筒直噴ターボ+ハイブリッド | 直列4気筒直噴ターボ |
排気量 | 1600cc | 1600cc |
最高出力 | 500PS以上 | 380PS以上 |
最大トルク | 500Nm以上 | 425Nm以上 |
ボア×ストローク | 83.8mm x 72.5mm | 83.8mm x 72.5mm |
エアリストリクター | φ36.0mm | φ36.0mm |
トランスミッション | ||
形式 | 機械式5速シーケンシャルシフト | 油圧式6速パドルシフト |
駆動方式 | 4WD | 4WD |
デファレンシャル | 機械式デファレンシャルx2 | 機械式x2、アクティブ・センター・デフ |
クラッチ | 焼結ツインプレート・クラッチ | 焼結ツインプレート・クラッチ |
サスペンション | ||
形式(フロント/リヤ) | マクファーソン・ストラット | マクファーソン・ストラット |
ダンパーストローク量 | 270mm | 非公開 |
ステアリング | 油圧式ラック&ピニオン | 油圧式ラック&ピニオン |
ブレーキ仕様(グラベル) | φ300mm | φ300mm(空冷および水冷) |
ブレーキ仕様(ターマック) | φ370mm | φ370mm(空冷および水冷) |
ホイール | OZ Racing | OZ Racing |
ヒュンダイi20 Nラリー1 | ヒュンダイi20クーペWRC | |
---|---|---|
全長 | 4130mm | 4100mm |
全幅 | 1875mm | 1875mm |
ホイールベース | 2630mm | 2570mm |
車両重量 | 1260kg | 1190kg |
エンジン | ||
形式 | 直列4気筒直噴ターボ | 直列4気筒直噴ターボ |
排気量 | 1600cc | 1600cc |
最高出力 | 385PS/6500rpm | 385PS/6500rpm |
最大トルク | 450Nm/5500rpm | 450Nm/5500rpm |
ボア×ストローク | 83.0mm×73.8mm | 83.0mm×73.8mm |
エアリストリクター | φ36.0mm | φ36.0mm |
ハイブリッドユニット | ||
最高出力 | 100kw(約134PS) | ― |
最大トルク | 180Nm | ― |
重量 | 87kg | ― |
トランスミッション | ||
形式 | 5速機械式シーケンシャル | 6速油圧式シーケンシャル (電子制御セミAT/パドルシフト) |
駆動方式 | 4WD | 4WD |
デファレンシャル | 機械式(フロント/リヤ) | 機械式(フロント/リヤ)、アクティブ(センター) |
サスペンション | ||
形式(フロント/リヤ) | マクファーソン・ストラット | マクファーソン・ストラット |
ブレーキ仕様(グラベル) | φ300mmベンチレーテッドディスク/空冷4ポッドキャリパー | φ300mmベンチレーテッドディスク/4ポッドキャリパー |
ブレーキ仕様(ターマック) | φ370mmベンチレーテッドディスク/空冷4ポッドキャリパー | 前:φ370mmベンチレーテッドディスク/4ポッドキャリパー 後:φ355mmベンチレーテッドディスク/4ポッドキャリパー |
ホイール | OZ Racing | OZ Racing |