暑さとダスト(砂埃)が選手たちを襲った。5月19日から22日にかけて開催されたWRC世界ラリー選手権第4戦ポルトガルは、“WRC新時代”を象徴するラリー1カーによる最初のグラベル(未舗装路)イベントとなった。
TOYOTA GAZOO Racing WRTのカッレ・ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1)の3連勝で幕を閉じた同イベントだが、その会期中は日中の気温が30度を超える日もあり、ドライバー/コドライバーたちから暑さや車内に入り込んでくるダストに関するコメントも聞かれた。このことについて、今戦で総合4位となった勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)は新しい車両規定がこの問題に「大きく影響している」と述べた。
「これはデザインとかクルマの作り方、車両規定からくる“ひとつの問題”と言うとおかしいですが、それが大きく影響している部分で、車内温度が昨年のクルマ(WRカー)と比べ物にならないくらい上がっています」と説明した勝田。
「この状況は昨年末にテストをし始めたときから感じていて、真冬のテストなのにめちゃくちゃ暑くて(笑)、『このまま行ったら夏場はヤバイ』という話は少なくとも僕たちのチーム内ではずっと話し合っていたのですが、やはり(対策として)できることには限りがあります」
■ダストの流入が増えた原因はクルマの作り方の差
エアコンを使用せずに車内温度を下げるには、コクピット内の空気を入れ替えるために外部からエアを取り込むことが重要だが、それによるネガティブな部分のひとつに計算し尽くされた空力のバランスを乱すことが挙げられる。また、グラベルラリーにおいてはダストの流入も問題となる。
ダストの問題では今季から導入されている新レギュレーション、ラリー1規定によるクルマの作り方の変化が影響を大きくしているという。
「昨年のクルマまでは基となるのベースの車両があって、そこからラリーカーを組み立てるという感じだったのですが、今のクルマは(スペースフレーム構造となり)カーボンパーツで作られているため、細かい部品の隙間隙間からダストが入り込んでしまいます。そういったところが多くのドライバーを襲ったダスト問題を作っていたのかなと感じています」
夏場の戦いに向けた暑さへの対策について問われた勝田は、トレーニングなどをやっていくとしつつ、それにも限界があると述べた。
「今後より暑くなっていくと思うのでドライバーとしてはとにかくトレーニングを続けて、暑さ対策なりをしっかりやっていくしかないのですけど、やっぱり人間には限界があると思うので(笑)」
「今回、僕と僕のコドライバー(アーロン・ジョンストン)は大丈夫でしたが、他のチームで熱中症の症状が出ているコドライバーが何人かいたりだとか、レーシングシューズが溶けてしまっていたりとか、そういったドライバー/コドライバーもたくさんいたようです」
「ポルトガルは気温が30度に届くか届かないかというところでしたけど、35度とかになってしまったときにはもっと大きな問題になると思うので今後、何かしら話し合っていくのではないかなと感じています。その場合はドライバーがプッシュするというよりは、チームとFIA国際自動車連盟の間でやると思いますが」