いよいよ日本に帰ってくる、ラリージャパン。WRC世界ラリー選手権『フォーラムエイト・ラリージャパン2022』が、11月10~13日にシーズン最終戦として愛知県と岐阜県を舞台に開催される。北海道での開催以来、実に12年ぶりのカムバックとなる日本での世界選手権を楽しみ尽くすべく、ここではエントリーリストに名を連ねる有力参戦ドライバーや、今季より導入の最高峰“ラリー1”クラスの最新ハイブリッド車両の成り立ちや個性を紹介する。その第5回は、次世代を担う若手のホープとして期待を集め、WRC昇格後にはヒョンデ・シェル・モビスWRTのエースとして毎年タイトル候補の一角に名を連ねる【ティエリー・ヌービル】にスポットを当てる。
難易度の高い舗装イベントを数多く開催する国内選手権の特徴もあり、かねてよりWRCの舞台に“ターマック・マイスター”を数多く輩出してきたベルギーだが、往時のブルーノ・ティリー、フレディ・ロイクスといった同国出身ラリーストの系譜に連なる次世代スター候補として、華々しく表舞台に登場したのがヌービルだった。
グループPSAの育成ドライバーとして、2010年には2輪駆動のシトロエンC2スーパー1600でJWRCにも参戦したが、その名を轟かせたのは当時の若手登竜門として機能していたIRCインターコンチネンタル・ラリー・チャレンジの方だった。
欧州域内を中心に、モンテカルロやサンレモ、ツール・ド・コルスにサファリ・ラリーなど、当時のWRCカレンダーから外れていた人気イベントを網羅した同シリーズでは、フォルクスワーゲン系のサポートを受けシュコダ・ファビアS2000で戦うアンドレアス・ミケルセンらとともに、その速さやルックスでも注目を浴びた。
当時からカラフルなフレームを好んだ“メガネの貴公子”は、プジョー207 S2000でタイトル争いを繰り広げ、ユホ・ハンニネンやブライアン・ブフィエ、ヤン・コペツキーらを相手に、そのコルシカとサンレモを制覇して年間2勝をマーク。ガイ・ウィルクスやパトリック・サンデル、トニ・ガルデマイスターといったWRC経験者らも差し置き、同郷の先輩ロイクスに次ぐランキング5位に入った(王者はミケルセン)。
翌年もIRCを連覇した好敵手ミケルセンとは対照的に、一足早くWRCへの昇格を果たしたヌービルは、セバスチャン・ローブが9連覇を決めた2012年にシトロエンのジュニアチームから最高峰カテゴリーにデビュー。『シトロエンDS3 WRC』をドライブして、アルザスでは自己最高の4位を記録する。