Kazushi Nakano / autosport web

「ほんと、それで記事一本書いて欲しいくらいです。セブリング、イカれてますよ。冗談抜きでヤバいです」

 IMSAウェザーテックスポーツカー選手権のセブリングテスト(2月11〜13日)にLMP2のEraモータースポーツから出走したことについて、スーパーフォーミュラ鈴鹿テストの現場で太田格之進に話を向けると、かなりの“衝撃体験”だったようで声のテンションが一段、上がった。

「この歳で、これだけレースやってきてね、初めて走ったサーキットでこんなに衝撃を受けるとは思わなかった。『こんなコースが世の中にあるんだ!』っていう、その衝撃ですね。もう、おかしいですよ」

■四輪ジャンプ後、“着地”で曲げる

 今季、世界への挑戦を開始した太田は、デイトナ24時間を含む3レースにGTPクラスのアキュラARX-06をドライブして出場。そして当初発表されていたこのプログラムに加え、セブリング12時間を含む2レースにも、LMP2クラスから追加出場することが決まった。最高峰のGTPクラスではなくとも、耐久レースとアメリカのコースに慣れるには絶好の機会が増えた形だ。

 1月のデイトナ24時間レースでIMSAデビューを果たした太田は、3月の第2戦セブリングに備えるため、セブリング・インターナショナル・レースウェイでの公式テストに再渡米。LMP2のマシン自体は12月にデイトナでもテストしていたため問題はなかったが、初走行となるセブリングというコースに衝撃を受けたというわけだ。

 いったい何がそこまで「おかしい」というのか。まず太田が挙げたのは、セブリングの代名詞ともなっている、極めてバンピーな路面だ。フロリダ州中部の空港跡地に作られたアスファルトとコンクリート路面が混在する1周約6kmのコースは、路面上のバンプ(凹凸)が激しいことで知られ、サーキット内には『Respect the Bumps』のタグラインも掲げられる。

多くのドライバーが「バンピー」と口をそろえるセブリングの路面。レーシングライン上にこの規模のひび割れが多数……。多くのドライバーが「バンピー」と口をそろえるセブリングの路面。レーシングライン上にこの規模のひび割れが多数……。
多くのドライバーが「バンピー」と口をそろえるセブリングの路面。レーシングライン上にこの規模のひび割れが多数……。(※画像は2019年)

「とにかく跳ねる。もうおかしいくらい、ずーっと跳ねてる。縁石乗ってないのに、やばいくらい跳ねてるし、1コーナーなんてめちゃくちゃ高速コーナーなのにそこで跳ねるから、急にリヤが抜けたりする。もちろん、跳ねるところはだいたい分かってくるんですけど、タイヤ1本分ラインが変わっただけで跳ね方が変わるし……」

「最初のセッションはマジで意味が分からなさすぎて、僕ずっと笑ってましたもん(笑)。最終コーナーのバンプなんて、クルマが四輪ともジャンプしてるんちゃうかってくらい真下をドカーンと打って、思いっきりジャンプしたあとに着地して曲げる、みたいな感じなので……意味分からないですね、正直」

 加えて、とくに3〜4コーナーにかけてのS字区間などは「カートコースかと思うくらい狭い」と、オールドコースのレイアウトも攻略を難しくさせる。

2023年WEC第1戦が行われるセブリング・インターナショナル・レースウェイの3月10日付けコースマップ。この後、ピットレーン入口のレイアウトは変更となる予定だ
セブリング・インターナショナル・レースウェイで2023年WEC第1戦が開催された際のコースマップ

■縁石が見えない!

 もうひとつ厄介なのが、夜間の視界だ。セブリング12時間はナイトフィニッシュとなるため、公式テストでもナイトセッションが設けられていた。富士とデイトナの24時間レースで夜間走行を経験済みの太田だが、セブリングの夜はそれらとは比較にならないレベルで暗いのだという。

「暗すぎて、マジで何も見えないです。縁石がどこにあるかも分からないので、ステアリングを切り込むポイントが分からないんですよ。パッと切り込んで、縁石の内側を走りそうになって(ステアリングを)戻す、っていうのを何回もやりました。立ち上がりの縁石も見えないところがあるから、もう“予知能力”で走るくらいの感じで、大げさでなく暗いんですよ」

 そしてIMSAの容赦ないトラフィックも、太田を襲うことになる。

「(セブリングはLMP2クラスでの出走なので)抜くだけではなくて、GTPには抜かれるわけじゃないですか。ミラーなんてライトで眩しすぎて何も見えないし、セブリングはマジで過酷だと思います。冗談抜きでクレイジーなコースですね」

 視界、トラフィックといった部分だけでなく、セブリングのコースではセットアップ作業も困難を極める。LMP2でも空力は重要視されるため、なるべく車高は低くして、サスペンションも硬めにはしたい。だが、バンプのあるセブリングではボトミングが発生しやすくなったり、跳ねがよりひどくなったりしてしまう。「マシンで(ポテンシャルを)取りにいくのか、ドライバーがどれくらい我慢して硬くしていくのか、その塩梅はとても難しいと思います」と太田は言う。

 このように難条件がいくつも重なるなか、3月の本番では予選アタックの担当も予定されている。そして、レースでは“勝負どころ”となるラスト2時間、つまりナイトコンディションで太田が起用されることも濃厚な状況だ。

「今回、自分はショートランができませんでしたが、かなり走ったタイヤでも高速セクターはずっとトップか2番手といったタイムだったので、ニュータイヤを履けばトップを狙える感触はある」とテストでの手応え自体は良好だったようだ。

 昨年の秋から、忙しく日米の往復を続けている太田。温暖なフロリダでは暑さも課題になりそうだというが、今季“最難関”とも言えるイベントにどう立ち向かっていくのか、注目したい。IMSA第2戦セブリング12時間レースは、3月15日に決勝が行われる。

太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
2月17日、スーパーフォーミュラ公式テスト前日のメディアデーに登場した太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)

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