6月11日、フランスのル・マン市に位置するサルト・サーキットで、2025年WEC世界耐久選手権第4戦『第93回ル・マン24時間レース』が開幕した。レースウイーク初日の走行が行われたこの日、トヨタ・ガズー・レーシング(TGR)の『トヨタGR010ハイブリッド』2台は、予選とその前後に実施されたフリープラクティスに臨んだ。
8日(日)に行われたテストデーでトップタイムをマークした後、TGRは、トヨタが初めてル・マンに参戦してから40周年を迎える今大会で、通算6度目となる総合優勝を目指す挑戦をスタートさせた。
14時に始まったフリープラクティス1回目(FP1)は、テストデーよりも気温が上がり、30度近くまで上昇。チームはこの3時間のセッションで、予選や決勝で予想される条件下でのクルマのバランスをチェックし、異なるメカニカルセットアップや制御系のセッティングを比較した。2度の短い赤旗中断があった同セッションでは、セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮のトリオがドライブする8号車が終盤にスローパンクチャーに見舞われたものの、姉妹車の7号車とともに44周を走り、まずまずのスタートを切った。
続いて19時30分にスタートしたハイパーカークラスの予選では、8号車はハートレーが、マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ニック・デ・フリース組の7号車はデ・フリースがタイムアタックを担当。それぞれがハイパーポール1(H1)に進出できる上位15台の枠に入ることを目指してコースインしていく。
デ・フリースとハートレーは最初のアタックで着実なタイムをマークしたが、コース上の他のライバル勢もタイムを伸ばしており、さらなるタイムアップが必要となった。2台のGR010ハイブリッド一度ピットに戻りニュータイヤを装着して再アタックへ。すると、ハートレーは最後のアタックで暫定5番手となるタイムをマーク。最終的に10番手となりH1進出を決めた。
一方、7号車を駆るデ・フリースもタイムアップが期待できるアタックを見せていたものの、他の車両のアクシデントによりイエローフラッグが出された影響でアタックラップを途中で諦めざるを得なくなってしまった。その後、デ・フリースはセッションの最後までタイム更新を目指してアタックを続けたが、タイヤのピークが過ぎていたこともありタイム更新は叶わず。16番手に終わり、決勝レースは8列目からのスタートが決まった。
予選後に行われたFP2は、今週初めての夜間走行に。出場する全ドライバーは、このナイトセッションで5周以上走行することが義務づけられており、TGRの6名のドライバー全員がこの条件をクリアするとともに、涼しい夜のコンディションに合わせた車両セットアップや、ソフトとミディアムタイヤの比較を行った。
なお、このセッションでは終盤にアクシデントが発生。平川がドライブする8号車がLMGT3クラスの車両を追い抜こうとした際、車両の右側に接触され、タイヤホイールと車体に軽いダメージを負っている。
明日12日(木)は予選の二日目だ。まずは14時45分(日本時間21時45分)からFP3が行われ、その後21時05分(日本時間13日4時05分)から1回目のハイパーポール(H1)が実施される。H1で上位10台に絞られたマシンがポールポジション以下上位トップ10グリッドを争うH2は、21時40分(日本時間13日4時40分)から行われる予定だ。
ハイパーポール後は2度目のナイトセッションとなるFP4が設定されており、これは23時(日本時間13日6時)から1時間のセッションとなる。13日金曜は休息日。24時間の決勝レースは14日土曜の16時(日本時間23時)にスタートが切られる。
■トヨタGRドライバーの予選一日目コメント
●小林可夢偉(チーム代表兼7号車ドライバー)
「総合的に見て、パフォーマンス面では満足のいく結果ではありませんでした。我々の7号車は期待していた速さを発揮できず、残念ながら明日のハイパーポールには進出できませんでした。土曜日の決勝に向けて、レースペースの向上に全力で取り組み、より多くのクルマのポテンシャルを引き出すために最善を尽くします」
●マイク・コンウェイ(7号車ドライバー)
「予選の結果を振り返ると、理想的な一日とは言えない。ハイパーポールに進出できなかったのは少し残念だ。これからは決勝に向けて集中するだけだ。実際、次の公式練習走行では我々のタスクが少し楽になる。まだラップタイムの改善の余地があり、決勝で速いクルマにしていくために努力を続けていく。ナイトセッションでクルマは少し良くなりましたし、まだやれることはあると思うよ」
●ニック・デ・フリース(7号車ドライバー)
「もっとタイムを上げられるポテンシャルがあったので、予選でトップ15に入れなかったことはとても残念だ。僕のベストラップは黄旗によって遮られ、とても不運なタイミングとなってしまった。あのアタックラップは、最後まで走り切れていればハイパーポールに進出できる充分なペースだったと思う。翌周もアタックを続けたが、残念ながらタイヤの性能のピークを過ぎてしまい、タイムを更新するのは難しい状況だった。おそらく、あのラップをクリーンに走り切れていれば、トップ15に入るチャンスがあったと思うが、最終シケインで他の車両に引っかかってしまい、それで終わってしまった」
●セバスチャン・ブエミ(8号車ドライバー)
「我々にとって最高の一日にはならなかった。8号車がハイパーポールに進出できたのは良かったものの、予選ではもう少し上位に行けると思っていたので、期待どおりではなかった。ただ、それだけが最優先事項ではないことも理解している。決勝に向けた準備ができる練習走行セッションは、あと2回残っている。もちろん、ハイパーポールでもできるだけ上位グリッドを目指すが、それが簡単な挑戦ではないことは分かっている」
●ブレンドン・ハートレー(8号車ドライバー)
「我々8号車にとっては、うまくいったセッションだった。最初にクリーンにアタックラップをこなし、2度目の連続アタックも悪くなかったが、タイムを更新することはできなかった。ペース面では、上位勢には及ばなかったものの、トップ15に入れたことは嬉しい。ただ、コースコンディションが大幅に変わらない限り、ポールポジション争いは難しいだろう。ポジティブな点として、公式練習1回目でのロングランのペースがとても良かったから、それを優先して活かしていきたいと思う」
●平川亮(8号車ドライバー)
「今日は我々にとって厳しい一日でした。8号車はハイパーポールに進出できましたが、7号車はわずかにハイパーポール進出を逃してしまいました。競争は非常に接戦なので、決勝に向けてすべてを最適化する必要があります。まだ練習走行が2回残っているので、改善点を見つけて良い戦略を立てるために最善を尽くします。引き続き努力を続け、次はもっと良い一日になることを期待しています」