4月17日から19日にかけて、イタリアのイモラ・サーキットでWEC世界耐久選手権の2026年シーズン開幕戦が行われる。本稿ではシリーズの概要や特徴などを、今季から見始める人にも分かりやすく解説するとともに、年間スケジュール、レースの視聴方法の紹介、さらには2026年の注目ポイントなどを挙げていく。富士スピードウェイでの日本ラウンドもカレンダー入りしている同選手権の観戦に際し、少しでも役立てば幸いだ。

■シーズンハイライトは伝統のル・マン24時間レース

 FIA WEC、正式名称『World Endurance Championship』は、ル・マン24時間レースの主催者でもあるACOフランス西部自動車クラブが主催するFIA国際自動車連盟公認の“世界最高峰の耐久レースシリーズ”だ。同じく世界選手権のF1が『純粋な速さの頂点』を競うのに対し、WECは『速さと強さ(耐久性)』の両立を極限まで追求する場と言えるだろう。

 このシリーズの最大の特長は、シーズンスケジュールの中に、F1のモナコGPとNTTインディカー・シリーズのインディアナポリス500マイルレースと並び“世界三大レース”のひとつに数えられる、ル・マン24時間レースが組み込まれている点だ。

 昨年のル・マン第93回大会は観客数が33万2000人に達し、2024年の32万9000人、そして2023年の100周年記念大会の32万5000人を上回り過去最多を記録している。

 シリーズの年間レース数は7~8戦で、開催地はヨーロッパをはじめ北米、南米、アジア、中東と世界各地を転戦する。24時間で競われるル・マンを除くシリーズ戦は6時間レースが基本。一方で8時間~10時間のレースも設定されている。例年、秋に行われる富士での日本ラウンドは6時間レースだ。

ル・マン24時間レースには例年20万人以上の観客が詰めかける
RoundDateRaceCircuitCountry
TEST4月14日(火)プロローグイモラ・サーキットイタリア
Rd.14月19日(日)イモラ6時間レースイモラ・サーキットイタリア
Rd.25月9日(土)スパ・フランコルシャン6時間レーススパ・フランコルシャン・サーキットベルギー
Rd.36月13日(土)
~14日(日)
ル・マン24時間レースサルト・サーキットフランス
Rd.47月12日(日)サンパウロ6時間レースインテルラゴス・サーキットブラジル
Rd.59月6日(日)ローン・スター・ル・マンサーキット・オブ・ジ・アメリカズアメリカ
Rd.69月27日(日)富士6時間レース富士スピードウェイ日本
Rd.710月24日(土)カタール1812kmレースルサイル・インターナショナル・サーキットカタール
Rd.811月7日(土)バーレーン8時間レースバーレーン・インターナショナル・サーキットバーレーン

■ふたつのクラスに計14ブランドがエントリー

 2011年にスタートした現行シリーズは、以前は4つのクラス(=カテゴリー)が設けられていたが、2024年以降は『ハイパーカー』と『LMGT3』というふたつのクラスに集約されている。

 ハイパーカークラスはWECの最高峰カテゴリーであり、自動車メーカーが最新技術を注ぎ込んだプロトタイプマシンを投入し、“ワールドチャンピオンの称号”と“ル・マンの総合優勝”を目標にしのぎを削る。

 参戦ブランドは、トヨタ、プジョー、フェラーリ、キャデラック、アルピーヌ、BMW、アストンマーティン、そして2026年に“新顔”として加わるヒョンデ傘下の高級車ブランド、ジェネシスの計8つ。出場台数は17台に上る。なお2027年には、ここにフォードとマクラーレンも加わる予定であり、近年のWECは“黄金時代”と言える盛況を誇っている。

2025年限りでポルシェがハイパーカーから撤退。2026年末にアルピーヌも去るが、今季はジェネシス、2027年にはフォードとマクラーレンが新規参入予定だ

 一方のLMGT3クラスは、市販のスポーツカーやスーパーカーをベースに開発されたFIA GT3規定のレーシングカーで争われるハコ車カテゴリーだ。ただし、このクラスの車両は世界各地のGTレースで使われているGT3カーとは一部仕様が異なり、WEC専用の順位表示パネルやトルクセンサーといったパーツが装着される。また、特別なエアロパッケージとなっている車両もある。

 ハイパーカークラスに参戦するドライバーのほとんどが、メーカーワークスに所属するプロフェッショナルドライバーであるのに対し、LMGT3クラスはプロドライバーとアマチュアドライバーがチームを組んで戦うのが特徴だ。またLMGT3クラスがワークスチームの参戦を禁じている点も、ハイパーカークラスとは異なる。

 2026年シーズンに向けて同クラスにエントリーしているのは、ポルシェ、フェラーリ、アストンマーティン、レクサス、シボレー、フォード、マクラーレン、メルセデスAMGの計8ブランドだ。いずれも2台体制で18台が覇を競いあう。

 なお、シリーズ戦は上記2クラスの混走となるが、ル・マン24時間に限ってはかつてWECでも走っていたLMP2クラスの車両が加わり、都合3クラスの混走となる。

GTカテゴリーは2024年のLMGT3導入後、車種のバラエティーが倍増した

■耐久レースならではの醍醐味

 WECの魅力は、単なるスピード競争に留まらない深い戦略性にある。一台のマシンを2~3名のドライバーが交代しながら走らせるため、個人の速さだけでなく、チーム全体の連携や総合力が問われるのだ。

 緻密な燃費計算やタイヤマネジメント、レース中の気温の変化や降雨といった環境変化への対応力、そして何よりチェッカーフラッグまでマシンを壊さずに走らせる信頼性。これらすべての要素が噛み合った瞬間に生まれる、人間とマシンのドラマこそがWECの真髄であると言えるだろう。

 そんなWECの2026年シーズンは今週末、イタリアで行われる『イモラ6時間レース』で開幕する。当初は3月26~28日に予定されていた『カタール1812km』が今季のオープニング・ラウンドとなるはずだったが、中東情勢の混乱の影響で10月に延期されたためイモラが開幕戦に置き換えられた。

 このイモラ戦から始まる今シーズンの全8レースは、日本ではスポーツ専門チャンネル『J SPORTS』の中継で楽しむことができる。テレビのBSまたCS放送では各ラウンドの決勝レースの模様を、ストリーミング配信サービスの『J SPORTSオンデマンド』では決勝に加えて予選の模様もライブ配信される予定だ。

 このほかWEC公式ストリーミング・プラットフォーム『FIA WEC+』も用意されており、こちらは週末のライブ配信はもちろん、レース中のオンボード、フルリプレイ、より詳細なライブタイミング、さらに専用コンテンツなどが提供される。

●J SPORTS:https://www.jsports.co.jp/motor/wec/
●FIA WEC+:https://plus.fiawec.com/en

レース中に幾度もピット作業を行う耐久レースでは、スプリントレース以上にチームワークが重要になる
マシン側方のLEDパネルには、当該車の順位やピットストップ時間、エネルギー量などが表示される

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