4月14日、イタリアのイモラ・サーキットでWEC世界耐久選手権の2026年プレシーズンテスト『プロローグ』が実施され、地元凱旋のフェラーリ勢が速さを見せた。ここでは週末の開幕戦『イモラ6時間レース』に先駆けたイベントの現場から、最新の各種トピックをお届けする。
■デビュー戦に臨むジェネシスが計356周を記録
WEC世界耐久選手権に参戦する各チームは4月14日、雨のイモラ・サーキットで、このカテゴリーの凝縮された1日限りのプロローグ・プレシーズンテストを完了した。地元での走行となったフェラーリ499Pがトップ3位を独占し、これをリードした。
ハート・オブ・レーシングは、マルコ・ソーレンセンがドライブする009号車アストンマーティン・ヴァルキリーの激しいクラッシュにより波乱含みの1日となったが、マティア・ドルディが駆る27号車アストンマーティン・バンテージGT3エボがLMGT3クラスのトップに立った。
トヨタは、新型TR010ハイブリッドでタイムシートの上位には顔を出さなかったかもしれないが、周回数ランキングはトップだった。(サテライトのAFコルセ83号車フェラーリ499Pの走行距離を除いた)ハイパーカー・マニュファクチャラー8チームの中で、トヨタはイモラ・サーキットを456周走行し、次点のプジョー9X8より10周多かった。
対照的に、当然のことながらアストンマーティンはこのテーマで最下位となった。009号車ヴァルキリーはソーレンセンの午前中のクラッシュを受けてシャシー交換が必要となり、午後のセッションに出走できなかったためだ。アストンマーティンのこの日の周回数は185周に留まった。次に少なかったのはWRTのBMW MハイブリッドV8で343周だった。
ジェネシス・マグマ・レーシングにとって、初めてのWEC公式イベントは非常に堅実なものとなった。新型GMR-001ハイパーカーは合計356周を記録した。
アンドレ・ロッテラーは次のように語った。「悪くない結果だった。あちこちでいくつか問題はあったが、重大なものはなく、いくつかのテスト項目をこなすことができた。世界選手権での初日にしては、それほど悪くないように見えた」
火曜日のテストでは、プロローグ限定でハイパーカー・カテゴリーのウエットタイヤに溝を切り直す(リグルーブ)ことを許可してほしいというミシュランの要請がWEC委員会によって承認された。ウエット宣言の下で開始されたテスト期間中、チームが使用できるタイヤは1セットのみであった。この溝を切り直したタイヤは、今週末の公式セッションでは使用できない。
■年間スケジュール発表は例年どおり
路面がウエットだったため、1月のデイトナ24時間レースでデビューし、今週末のWECでレース初登場となるミシュランの新しい『パイロット・スポーツ・エンデュランス』スリックタイヤの使用は制限された。ハイパーカー・チームは今週末、ソフトとミディアムのコンパウンドから使用するタイヤを選択可能だが、最終予選のハイパーポールではソフトタイヤの使用が義務付けられている。
ハイパーカー・チームは、フリー走行で3セット、ハイパーポールで1セット、予選と各6時間レースの週末に4.5セットのタイヤを使用できる。シーズン終盤のカタールとバーレーンで予定されている長距離レースでは、レース用の割り当てが8セットに増加する。昨年と同様にコンパウンドの違いはサイドウォールの色で識別可能だ。色分けは次のとおり。ソフト=白、ミディアム=黄、ハード=赤、ウエット=青。
今年のWECカレンダーの後半部分は夏以降まで正式に確定しない見込みだが、ACOのピエール・フィヨン会長はSportscar365に対し、近年恒例となっているとおり、2027年のスケジュールが今年のル・マン24時間レースで発表されることを認めた。来シーズンに9つめのレースが開催されるかどうかは依然として不明だが、拡大の可能性のある会場としてはイギリスのシルバーストンがもっとも多く報じられている。
Sportscar365が入手した情報によると、今週末のイベントの前売りチケット販売数は、2024年に記録されたイモラのWEC客動員記録である7万3600人(3日間)を上回る勢いだという。昨年のイベントは復活祭(イースター)の日曜日に開催され、観客動員数は6万5500人にとどまった。
アストンマーティンは火曜日、ドルディがハート・オブ・レーシングのヴァルキリー・プログラムの公式リザーブドライバーに任命されたと発表した。これは即時発効し、WECとIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の両キャンペーンに適用される。昨年のWECルーキーテストで初めてヴァルキリーをドライブした27歳のイタリア人は、今年もLMGT3クラスの27号車バンテージGT3エボでフルシーズンを戦っている。
■ピット内のカメラで監視
同じくバーレーンでのルーキーテストでハイパーカー・デビューを果たしたケルビン・ファン・デル・リンデは、2月にセブリング・インターナショナル・レースウェイで行われたBMW MハイブリッドV8のテストに参加し2度目のドライブを経験した。なおBMW Mモータースポーツ代表のアンドレアス・ルースによると、BMW MチームWRTが今週末のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権ロングビーチ戦との衝突により各車2名体制を採用しているにもかかわらず、今年この南アフリカ人ドライバーをレースに出走させる具体的な計画はないという。
ルースはケルビンの最近の2回目のテストについてSportscar365に次のように語った。「それは我々が行っている通常のプロセスだ。ダン・ハーパー、マックス・ヘッセ、シャルル・ウィーツ、そしてバレンティーノ・ロッシも、全員すでにこのマシンをドライブしており、ケルビンも同様だ。これは、他のドライバーにチャンスを与え、将来に備えてドライバーを育成するための、我々の通常の『準備』の一環なんだ。結局のところ、彼らが加わることは良いことだ。ケルビンは我々のためにシミュレーター作業も多くこなしている。彼が実車を知り、適切なフィードバックをくれることは重要だ」
ともにドライバー2名体制をとっているBMWとキャデラックの両チームは今週、現地にリザーブドライバーを派遣していない。イモラで2名体制をとるもうひとつチームは、ハート・オブ・レーシングが運営するアストンマーティンTHORチームだ。
今年からの変更点として、すべてのWECチームは監視目的で各ピットボックスにカメラを設置し、管理することが義務付けられた。公示によれば、カメラはピット内の車両に向けられ、水平面から25度の角度で設置されなければならない。映像はアルカメル・システムズを通じてスチュワード(審査委員)が利用できるようにしなければならない。
チームはまた、各チームトラックの間にあるパドックの仕切りに取り付けられたディスプレイに、ガレージのライブ映像を配信することも義務付けられた。
レース終了15分前以内に宣告されたペナルティについて、レース中に消化されなかった場合は、タイムペナルティまたは周回ペナルティに換算される。これまでの基準は各レースの残り5周であった。また、セーフティカーによるパスアラウンド(追い越し)の手順にも軽微な修正が加えられた。
■テストのルールが一部緩和
今年のスポーティング・レギュレーションのその他の変更点として、ハイパーカー・マニュファクチャラーの2台エントリーは「エントラント・ライセンスに記載されているものと同じ名称」で行われなければならないとされており、事実上、マニュファクチャラーの2台のエントリー枠をふたつの異なるチームで埋めることが禁止された。
一方、同じカラーリングで同じチームからエントリーされた2台の車両は、視覚的な識別を助けるために、互いに異なる色のサイドミラーを使用することが義務付けられた。
ドライバーのレーシングスーツは、ハイパーカーとLMGT3でそれぞれタイヤサプライヤーであるミシュランとグッドイヤーのロゴの視認性に関する規定の対象となった。同様の規則は以前までマシンのカラーリングにのみ適用されていた。
通常、大会開催前の特定の会場でのテストは30日前から禁止されているが、イモラとスパについてはこのルールが緩和され、イベント開始の14日前までのテストが許可された。フェラーリはこの制度を利用し3月31日にイモラでテストを実施している。
GTワールドチャレンジ・ヨーロッパのスプリント・カップで2度のチャンピオンに輝いたヴァンサン・アブリルは先週、プロレースから一線を退くことを発表した。2019年から2022年にかけてル・マン24時間レースに3回出場した元AFコルセ契約ドライバーは、以前はベントレーのファクトリードライバーを務めていた。
アブリルはソーシャルメディアに次のように綴った。「ここ数年は並行してさまざまな機会に恵まれ、将来の人生の目標に向けて楽しみながら視野を広げることができた。新たな挑戦に胸を踊らせ、とても興奮している。プロのレースは僕の人生のすべてであり、この11~12年間、この上なく素晴らしい仕事のひとつで生計を立ててきた。これまでの道のりで出会った人々、良い人も悪い人も、ライバルも、そして情熱的なファンの皆に心から感謝している」
この31歳のモナコ人ドライバーは、今後も「友人たちと一部のプロ・アマイベントには参加し続ける予定だ」と付け加えた。
プロローグが終了し、水曜日と木曜日はチームにとって休息と再整備の時間となるが、ドライバーやチーム幹部向けに多くのメディア関連セッションが開催される。イモラでのトラックアクションは、金曜日の10時15分(日本時間17時15分)から再開される予定だ。



