Midori Ikenouchi

 6月、波乱の展開となったル・マン24時間耐久レースを制した2号車ポルシェ919ハイブリッド。その歓喜の瞬間から、約1ヶ月が過ぎた。優勝後、イベントやインタビューで多忙な毎日を過ごしていた3人のドライバーのひとり、ティモ・ベルンハルトに、ホームレースでもあるWEC世界耐久選手権ニュルブルクリンク戦で、激動のル・マンや父と立ち上げた「チーム75ベルンハルト」について話を聞いた。

■260人のスタッフ、そして“ポルシェ”の名を負うこと

──今年のル・マンでは家族全員が応援しに来ていていたそうですね。幼い息子さんがパパの感動的な表彰式の様子を、自宅で何度も見せてくれているとか?
ティモ・ベルンハルト(以下TB):次男はまだ小さすぎて、おもちゃのクルマで遊びはじめたばかりなんだが、『2』と書いてあるクルマに『パパが乗っている』ということは認識できているようだよ(笑)。長男はル・マンでの私をよく見ていてくれたようで、自宅でも表彰式ごっこをして何度も見せてくれるのはとても微笑ましいよね。本当に嬉しい限りだ。

──今年のル・マン24時間を迎えるまではどんな心掛けをしていたのでしょうか?
TB:特にル・マンで総合優勝をするという最大の目的を果たすために、毎日のフィットネスやメンタルトレーニング、食事管理等も含めて、日々のプライベートな生活に渡るまで、細心の注意をしてル・マン24時間レースを迎えていた。レーシングドライバーの仕事は移動してレースを戦うだけではなく、日頃からの積み重ねだと考えているからね。

──ポルシェ、トヨタの両陣営の5台のうち、最初に2号車にトラブルが起こり、ピットインしてしまったときは正直どう思いましたか?
TB:『これで終わりだ。俺の責任だ』と、まるで心臓から血が噴き出すような、自責の念でいっぱいだった。ル・マンの現場で働いてくれているクルーはもちろんのこと、バイザッハも含めてこのポルシェ919ハイブリッドの裏側には、ざっと260人もの人たちがいて、必死でル・マンのために準備をしてくれていた。彼らや“ポルシェ”という名を背負ってプロレーシングドライバーとしてステアリングを握り、責任を負うということは、言葉に表し尽くせないほどに重いんだ。

──その後2号車はふたたびコースインを果たすのですが、その時にモチベーションを戻すのは難しくはありませんでしたか?
TB:メカニックやエンジニアのレベルが非常に高く、ドライブしていてとても好感触を受けたので、気持ちをすぐに切り替えて、優勝はダメでも、ひとつでも上のポジションを、ひとつでも多くポイントを獲れるように努力をしよう……と考えた。このトラブルを機に、またチーム全体のモチベーションや結束もさらに強まったと感じたからね。ただ、フルにアクセルを踏むことは常にリスクとの隣り合わせでもあった。

バンバー、ハートレーとともにガッツポーズをみせるベルンハルト。ル・マンを制し、コクピットで涙をみせた。
ル・マン24時間でピットに戻される2号車ポルシェ919ハイブリッド

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