第64回マカオグランプリは11月19日(日)、ギア・サーキットでFIA GTワールドカップの決勝レースが行われた。このレースがホンダブランドとしての、そしてアジアでのデビュー戦となったホンダNSX GT3は、レース中のアクシデントに巻き込まれリタイアとなったが、非常に印象的な活躍をみせた。
2017年に、アメリカのIMSAスポーツカー・チャンピオンシップやピレリ・ワールドチャレンジで“アキュラ”ブランドでひと足先に実戦デビューしていたNSX GT3は、今季ヨーロッパのGT3レース最高峰であるスパ24時間の会場で『ホンダNSX GT3』として初めてお披露目された後、今回マカオグランプリのなかで行われた“GT3世界一決定戦”FIA GTワールドカップに参戦し、ホンダブランドとして、そしてアジアでのデビュー戦を戦っていた。
ホンダのワークスカラーに彩られ、1995年のル・マン24時間GT2クラスを制したチーム国光のNSXと同じゼッケン『84』をつけたNSX GT3は、パドック側に設けられたGTワールドカップのガレージのなかでも、ひときわ目を引く存在だった。当然、他メーカー/チームのスタッフもしばしば偵察に訪れるほどで、その雰囲気は満点。走行初日の11月16日(木)には、マカオのハーバービュー・ホテルのロビーを借り、アジア向けにお披露目会も行った。
■活きたバン・デル・ザンデの経験
そんな走行初日、ランガー・バン・デル・ザンデがドライブしたNSX GT3は、マカオの特殊な路面のなかでやや跳ねが目立っているように感じられた。当然タイムも伸びず、4秒遅れの19番手。ただ、ホンダNSX GT3にとって、実戦も初めてな上にマカオも初。データなどない状態からのスタートだったのだ。
「今年1年アメリカで、HPD(ホンダ・パフォーマンス・デベロップメント)がレースをやってきましたが、当然市街地コースはアメリカにもあります」というのは、ホンダの嶋村馨グローバルGT3プログラムマネージャー。
「ただやはり、マカオは路面もうねりも、コース幅も最小のコーナー半径も違う、スペシャルなサーキットなんです。初日もシェイクダウンレベルの走行だけしかできず、実質予選までに走らせられたのは30分くらいです」
しかし、ここからはドライバーであるバン・デル・ザンデの経験が活きた。マカオではF3、GTともに豊富な経験をもつドライバーだが、エンジニアとセッティングを大幅に振り直し、フリープラクティス2ではトップとのタイム差は縮まり、予選では1.7秒差ほどまで縮め、12番手グリッドを得たのだ。
「セッティングもどんどん進めていきましたが、すべてがいい方向にいきましたね」と嶋村マネージャーは言う。
また今回、現地でバン・デル・ザンデの走りを見たホンダの山本雅史モータースポーツ部長は「初日のプラクティスからなかなか厳しい状況だとは思いましたが、ドライバーの開発能力が素晴らしかった。走るごとにセットアップも良くなりましたからね。非常にいいドライバーにNSX GT3に乗ってもらったと思っています」とバン・デル・ザンデを賞賛した。