6月16~17日に開催されるル・マン24時間を控え、本戦2週間前となる6月3日、フランスのサルト・サーキットでは“テストデー”と呼ばれる事前テストが行われる。これに先立ち、FIA国際自動車連盟は5月19日付けでLMP1クラスの技術の均衡を図るEoT(イクイバレンス・オブ・テクノロジー=技術の均衡)を発表した。
EoTはハイブリッド技術を用いるトヨタと、ノンハイブリッド車で戦うレベリオン・レーシングやSMPレーシングなどのプライベーターが同じテーブル上で戦うことができるよう、使用できるエネルギー量や車両重量、搭載燃料の質量などに基づいてLMP1マシンの性能差を調整するシステムだ。
FIAとACOフランス西部自動車によって設定されるこのシステムは、すでにシーズン開幕前の4月上旬に行われたプロローグテストから第1戦スパ・フランコルシャン6時間までの間に一度修正が入っており、これによってプライベーター勢が1周の中で使用できるエネルギー量、最大燃料搭載量が削減されている。
今回発表されたテストデー用のEoTでもトヨタの数値は据え置かれ、ノンハイブリッド車のテーブルにのみ変化が見られた。このなかで興味深いのは、開幕戦スパでトヨタに2周遅れにされたにも関わらずプライベーターの最大燃料流量が110.0kg/hから108.0kg/hに減らされている点だ。
ACOフランス西部自動車クラブのスポーツディレクターを務めるビンセント・ボーメニルはこの件について、「スパとル・マンでは1周の距離が大きく異なるだけでなく特徴的なロングストレートによって、ハイブリッド車とノンハイブリッド車のバランスに違いが出てくる。ル・マンでは(エンジンのみで駆動する距離が伸びる分)ハイブリッド車が相対的に不利になるんだ」と語った。
2014年から導入されているEoTはこのバランスをとるため、サルト以外のサーキットでは1kmあたり55%の“ハイブリッド係数”が乗算されており、全長7kmに達するスパ・フランコルシャンにおいても適用されているという。
また、今回のEoTでノンハイブリッド車の1周あたりのエネルギー量が未設定となった点では、「(非常に細かな)燃料消費の管理をドライバーに任せるというのはとても難しいものだ。ワークスチームはフューエルカットを自動的に行うソフトウェアを開発しているが、プライベーターに同じことをさせるのは無意味なコストが掛かってしまう」とボーメニル。