6月16日に決勝レーススタートを迎える第86回ル・マン24時間耐久レース。これまで数々のドラマを生んできたビッグレース、その2018年大会は日本のモータースポーツ史に残るイベントとなるかもしれない。
第86回ル・マン24時間における最大の焦点は、TOYOTA GAZOO Racingが悲願の初優勝を遂げられるかということ。ル・マン24時間をシリーズの1戦に組み込むWEC世界耐久選手権には、これまでポルシェやアウディがワークス参戦してきたが、両メーカーは相次いでシリーズでの活動を終了。
そのため、2018/19年のWEC“スーパーシーズン”でワークスチームとしてLMP1にハイブリッドシステム搭載車を投入しているのはトヨタのみになっている。
しかし、このままでは最高峰クラスはトヨタの一人相撲になってしまうため、トヨタとシリーズを運営するACOフランス西部自動車クラブやFIAは協議の末、トヨタの車両開発を制限しながら、ハイブリッド非搭載のLMP1マシンの戦闘力を引き上げることに合意。これによりレベリオン・レーシングやSMPレーシング、バイコレスといった強豪プライベーターがLMP1クラスに参戦してきた。
しかし、開発が制限されているとはいえ、これまでの参戦経験を元に作り上げられたトヨタTS050ハイブリッドと、限られた時間のなかで作られたノンハイブリッドマシンではパフォーマンス差は歴然。
トヨタには中嶋一貴や小林可夢偉、セバスチャン・ブエミといったF1経験ドライバーに加え、今年は現役F1トップドライバーのフェルナンド・アロンソも顔を揃えていることもあり、WEC第1戦スパ・フランコルシャンではライバルに2周の大差をつけての総合優勝を飾っている。
マシンのパフォーマンス、ドライバー層の厚さを考えれば、ル・マン24時間での総合優勝にもっとも近いのはトヨタと断言できる。しかし、2016年大会でトヨタに起きた悲劇のように、24時間という長丁場の争いではさまざまなアクシデントやトラブル、試練がチームやマシン、ドライバーに襲いかかる。
さらにマシンパフォーマンスでは差をつけられているノンハイブリッド勢もレベリオンの1号車R13・ギブソンにはアンドレ・ロッテラーとニール・ジャニというル・マン総合優勝経験者が名を連ねているほか、SMPレーシングの11号車BRエンジニアリングBR1・AERにはジェンソン・バトン、17号車にはステファン・サラザンなど、強豪ドライバーが起用されており油断は禁物だ。
また、仮にプライベーター勢がトヨタのパフォーマンスに遠く及ばなかった場合、トヨタの7号車、8号車による陣営内バトルがぼっ発する可能性も充分にある。ライバルとなるワークスチームが不在とはいえ、簡単に栄光を掴めないのがル・マン24時間というレースの難しさだ。