今年から来年にかけて、2回のル・マン24時間を含む『スーパーシーズン』を迎えているWEC(FIA世界耐久選手権)。いよいよ6月16日にレーススタートを迎えるが、LMPクラスとともに注目したいのが、自動車メーカーが多数参加しているGTEクラス。ポルシェ911 RSRがランキングトップに立つが、GTEマシンの911 RSRとGT3マシン、911 GT3 Rはどのように違うマシンなのか。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
世界最大のスポーツカーメーカーであるポルシェは、市販レーシングカーのラインナップでも世界最大規模を誇る。しかも、その多くは半世紀以上にわたって連綿と作り続けられてきた911をベースとしている点に、レーシングカー作りに対するポルシェのフィロソフィーと情熱が表れているようだ。
現在、ポルシェが生産している市販レーシングカーはLM GTE規則に準拠した911 RSR、GT3規則に準拠した911 GT3 R、ワンメイクレースのカレラカップに用いられる911 GT3 カップ、そしてGT4規則に準拠したケイマンGT4クラブスポーツの4モデルである。
LM GTEとはル・マン24時間に代表される世界耐久選手権(WEC)に設定されたクラスのことで、WEC以外ではアメリカのスポーツカーレースシリーズ“IMSA”にも採用されている。これに対してGT3はヨーロッパを中心とするブランパンGTシリーズがもっとも有名だが、我が国のスーパーGTを始めとしてGT3規定を採用するレースシリーズは世界中で数多く運営されている。
では、LM GTEとGT3ではレギュレーションにどのような違いがあるのか?
もともと各自動車メーカーが独自に開催するワンメイクレースシリーズをひとつにまとめることをコンセプトとしたGT3と、ル・マン24時間を主催するACOが中心となって耐久GTレース用に策定されたLM GTEとではレギュレーションの成り立ちが根本的に異なる。
単純な比較は難しいが、ふたつの規則を元に開発された911 RSRと911 GT3 Rを比較すると、LM GTE規定に準拠した911 RSRのほうがGT3の911 GT3 Rよりもパフォーマンスは高そうだ。
たとえば全幅は911 RSRのほうが911 GT3 Rより50〜70mmほど広く、メカニカルグリップの点でもエアロダイナミクスの点でも有利に思える。実際、2台を写真で見比べると、911 RSRのフロントスポイラーは一体感の強い洗練された形状に仕上げられているほか、リヤウイングのサポートにもいわゆるスワンネック式が採用されており、ステーがウイングを下側から支えるコンベンショナルな911 GT3 Rの方式よりも高度な空力設計が施されていることがわかる。