今年から2019年にかけて、2回のル・マン24時間を含む『スーパーシーズン』を迎えているWEC(FIA世界耐久選手権)。いよいよ6月16日にレーススタートを迎えるが、LMPクラスとともに注目したいのが、自動車メーカーが多数参加しているGTEクラス。ポルシェ911 RSRがランキングトップに立つが、スーパーGT300クラスにD’station Porscheで参戦中のポルシェワークスドライバー、スヴェン・ミューラーにポルシェのドライバー育成について聞いた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
WEC世界耐久選手権をはじめ、IMSAウェザーテック・スポーツカー・チャンピオンシップなどさまざまなスポーツカーレースで活躍するポルシェ。2018年の現在は、WEC、IMSAがLM-GTE規定に沿って作られたポルシェ911 RSRで参戦。その他には、ヨーロッパのGT3レース最高峰であるブランパンGTシリーズに参戦するマンタイ・レーシングをはじめ、ポルシェ911 GT3 Rで参戦する世界中のカスタマーレーシングチームを支えている。
そして勝利の栄冠をつかむために、ポルシェは高いポテンシャルをもつ911シリーズのレーシングカーだけでなく、『ポルシェ ワークスドライバー』と呼ばれるトップドライバーたちを揃えている。彼らはワークスマシンをドライブするだけでなく、世界各国で開催されるGT3用レーシングカーである911 GT3 Rに乗り込み、チームを勝利に導く役目をもつ。
そんなワークスドライバーのなかで、いま最も注目すべき若手として躍進しているのがスヴェン・ミューラーだ。2017年から日本のスーパーGTにも参戦し印象的な速さをみせているだけでなく、2018年のニュルブルクリンク24時間レースでは予選2番手を獲得。また、ル・マン24時間レースではポルシェGTチームのドライバーとして起用された。
■ポルシェのブランドとともに戦うチャンス
スヴェン・ミューラーは2009年までレーシングカートを戦い、2010年にドイツのジュニアフォーミュラであるADACフォルメル・マスターズに参戦。2012〜13年はヨーロピアンF3を戦った。「もちろんその頃の僕の目標は、F1ドライバーになることだったんだ」とスヴェンは当時を振り返る。
しかし、現代のF1においてその世界にたどり着くためには、資金力と政治的なコネクションが必要だ。それでもF1の世界に入ることができるのはほんのひと握り。そんなとき、スヴェンはサーキットで声をかけられた。
「ポルシェのジュニアプログラムのマネージメントをしていた人が、僕に『トライアウトを受けてみないか』と声をかけてくれたんだ。GTドライバーとしてプロフェッショナルな仕事を受けられるチャンスだったし、ポルシェというブランドとともに仕事ができる。それに将来に向けて安定した役割を得ることは、何より大事だと思ったんだ」
一流のレーシングドライバーにとって、今はF1に行くだけがすべてではない。自動車メーカーとのコネクションを作り、プロとしてきちんと収入を得ることも大切だ。スヴェンはこの誘いに乗り、ジュニアプログラムの一員となった。